12話 自分の人生は自分で決めなきゃ駄目じゃん?
その後、半日ほど魔物を狩り続ける俺達二人。気が付けば既に30匹程のアゴブリンを倒していた。普通では有り得ないスピードで魔物を倒している。
「これだけ倒したなら、最低でも3,000ガルボにはなるな……。今日はこれで終わりにして、町へ戻ろうか。そして、また明日頑張ろう」
「は、はい……。ですが、結局私は……何もできないまま……なんですよね……」
何も仕事をしていない自分が情けないのか、項垂れながらカベルネが言う。
「そんなこと無いよ。カベルネが見守っているから俺は魔物を倒し、確認が出来る。カベルネも魔物を探してくれたじゃん。これは二人でやったからできた事なんだよ。カベルネはもう少しだけ自信を持った方が良い。魔物を倒すだけが戦いの全てではないだろ?」
俺の言葉にカベルネは顔を上げ、悲しそうな顔して反論をしようとする。
「――で、でも、役に……」
「カベルネ、俺が攻撃を仕掛けるとする。そして、カベルネも攻撃を仕掛けたとする。そこで二人がやられたら、誰が俺達を回復させるのさ? カベルネがそこで、周りを確認するということは、俺達二人の安全を確認するという事なんだ。ただ、戦うことだけが全てじゃない。後ろで控えてくれる人がいるから前で戦う人が安心できるんだよ」
「……」
「お互いの役割はハッキリしてるだろ? 前衛で戦うのは俺で、カベルネは後方支援。守りを固めてもらうんだ。安全第一!」
「――わ、わかりました……ま、魔物を倒せなくても……」
「問題ない。俺が倒せないなら、逃げろ。と言うか、逃げよう! だって、俺の武器が効かないのなら、それは化け物クラスの魔物だ。俺一人で何十人分の攻撃が出来るのに倒せないなら逃げるべきだ。だって、まだ死にたくはないだろ?」
「――は、はい……」
とは言ってみたものの、彼女に自信をつけさせるには武器が必要である。
「まぁ……カベルネがこの状態に慣れてきたら、この武器を貸してあげるよ。それまでは後ろで控えて、周りを索敵するんだ。いざとなったら魔法で援護してくれよ。確認している時の俺は、周りを気にしている余裕が無いんだから……ね?」
余裕はあるが、こうでも言わないと信じてもらえない。俺は優しく微笑み、カベルネに言う。カベルネは頷き、顔をクシャクシャにして泣き出してしまう。こういった状況に慣れていないので、どうすれば良いのか分からず困ってしまう。取り敢えず、テレビや映画、漫画等でありがちな状況を想像して、俺はハンカチを召喚し、カベルネに渡す。すると、少し戸惑いつつも、ハンカチを受け取り、小さい声で「――ありがとうございます……」と言い、受け取ったハンカチで顔を覆い隠し、声を殺して泣く。暫くして、落ち着いてきたのか、涙を拭いて、今まで見たことの無い、嬉しそうな表情でお礼を言う。俺は小さい声で「気にするなよ」としか言えず、自分の経験不足を呪うのだった。
町に戻り、入り口の兵士にギルドパスを見せて町の中へと入っていく。その足でギルドハウスへ立ち寄り、換金を済ませる事にしようと、カベルネと話しながら店の中へ入ると、今朝、すれ違った冒険者達が、酒盛りのような事をやっており、その中にはリードの姿もあった。
「――リード……」
カベルネは小さく呟き、楽しそうにしているリードを見つめている。俺は、カベルネに言う。
「カベルネ、俺一人で換金してくるから、少しリードと話をしてきたら?」
「え? ……よ、良いのですか?」
「良いも何も……カベルネはリードが好きなんだろ?」
「そ、そんな、べ、別に好きって訳じゃ……」
顔を赤くし、慌てふためきながら両手で否定する。まぁ、幼馴染みだし、リードを追いかけて冒険者になったのだ。恋心の一つくらいはあるだろう。
「ふ~ん。まぁ、でも、話してきなよ。自分はこういうふうに生活をするんだって……。自分の思いを伝え、リードの気持ちを聞くのも……大事な事だと思うよ」
「――は、はい……」
カベルネはゆっくりとリードの方へ向かう。その間に俺はベガルタさんに換金をお願いすると、ベガルタさんは顔を引き攣らせていた。やはり、短時間で殺れる量ではないらしい。
「――こんな事を聞く事は普通しないのですが……」
顔を引き攣らせているベガルタさんが質問をしてくる。やはり、常識外だと目立ってしまうようだ。夕方くらいに来れば、問題なかったかも知れないが、昼を過ぎた辺りでこの数……。
「タイチさんは何か特殊な事をされているのですか? 昼過ぎにこんな沢山狩って来る人は見た事もないので……」
「あ~……今、二人で魔物を探しているんですよ。たまたまタイミングが良かったり、相手が群れていたりしていたので……運が良かったんだと思いますよ」
これで誤魔化すしかないと思い、ベガルタさんに答える。すると、なんとなく納得出来たらしく、数回頷いて換金を始めた。
アゴブリンのコアは300ガルボほどするらしく、9,000ガルボを手に入れることができた。やはり、東側で戦う方が儲かるのだと分かり、西側は初心者用なのだと思いながらガルボを受け取り、貰ったガルボを袋に入れて、カベルネの装備を考え、周りを見渡す。すると、カベルネを発見するのだが、傍にはリードがおり、俺を睨んでいる。表情からすると、何か言いたそうな顔をしており、なんだか面倒な話になりそうで疲れる気分だ。まぁ、どうせ、何故、田舎に帰してやらない! とか、そう言ったたぐいだろう。
殴られたりするのは嫌だと思い、ステータス画面を出して、スキルで身を守れる何か無いか調べると、格闘のスキルを発見。これもスキルポイントが10もする。格闘スキルをつけると、やはり格闘1ついた。1だと不安なため2にしようとすると、2はスキルポイントが更に15もしやがる。だけれど、殴られるのは嫌なので仕方無く2に上げる。
★――――――★
名前:鈴木太一
レベル:9
力:15
器用:18
体力:20
魔力:14
スキルポイント:51
【スキル】
アイテムクリエイト(物を生み出す力)
異世界言語
異世界文字
射撃:1
気配察知:1
剣技:1
魔法感知
回復魔法:レティオ(小)
浄化魔法:ウラア
飲料魔法:ウォータ
灯り魔法:ライト
着火魔法:テンカ
格闘:2
★――――――★
そして、睨んでいるリードの方へ行くと、やはり先ほど思った通りのことを言われる。
「タイチ! 何故、カベルネを田舎に帰さないんだ!」
「そりゃ、彼女が冒険者を選んだからだろ? 俺が無理に誘った訳じゃないよ。俺だってリードと同じ事を言ったさ」
すると、カベルネがフォローするかのようにいうが、挑発にしか聞こえない。
「そ、そうよ! 私がタイチさんにお願いしたの! タイチさんは悪くない」
「カベルネ、今からでも遅くない……村に帰るんだ」
「も、もう帰れないよ……だって私の雇い主はタイチさんだもん」
その言い方!
「な、なんだとぉ……ど、どういう事だ!」
あぁ、やっぱりこうなるのか……こりゃ……殴りかかって来そうだなやっぱり。
「わ、私が雇ってくれって言ったの……」
「カベルネ! お前はいったい何を考えてるんだ! た、タイチ! 彼女に何を吹き込んだ!」
「何もしてないよ。……本当に何もしてない。したとすれば飯を食わせてやり、魔法代を払わされ、因みに神殿の宿代やジュース代まで払ったくらいだな。総額5,500ガルボ程になる。お前が立て替えてくれるなら……別に構わないけどね」
6人程のパーティを組んでいる所を見ても、持っていて2~3,000ガルボってところだろう。
「クッ!!」
「それに、今後の将来はカベルネが決めることだ。カベルネはどうするの?」
「わ、私……ですか……」
「そりゃそうさ。お前の人生だもん。お前が決めろよ。リードと共に行くか?」
「うちのチームじゃ、お前は雇えないぜ。使えない魔法使いは必要ないからな」
後ろからリーダー的な男が言い放つ。言葉を選んで欲しいものだ。
「俺はカベルネがいてくれたら助かるよ。カベルネはこれから活躍してもらうんだから。ほら、今回の報酬。半分はカベルネの分だよ」
俺は報酬の半分である、4,500ガルボを皆が見えるように渡す。
「こ、これが……私の報酬?」
「そうだよ。あの時いった言葉を忘れたか? これは二人でやった事なんだ。これで分かったろ? お前が……カベルネが居てくれたおかげで俺はやれたんだって言うことが。あとは自分で選びなよ……これからの人生はお前の人生だ。この先もこれからもだよ」
「た、タイチ……さん」
「か、カベルネ……止めるんだ! 村に帰って幸せに成れ!」
「リ、リードが言う幸せって何?」
「え? そ、そりゃ……だ、誰かと結婚して幸せに……」
「た、タイチさんは私が必要ですか!」
「いてくれたら助かるよ。必要、必要じゃないとは今の時点では言えない」
「か、帰れとは……」
「言わない。だって、カベルネの人生だもん。カベルネはこれから凄い魔法使いに成れるかもしれないし、成れないかもしれない。それはカベルネ次第でなると思うよ」
「か、カベルネ! 騙されるな!」
「人聞きが悪いな……本当のことだろ? 俺ならカベルネが魔物を倒すことができるよ」
「う、嘘を言うな! 鈍くさいカベルネが……」
「私、タイチさんと一緒に冒険を続けます! リード……サヨナラ。もう、会うことはないかもしれないけど……元気でね」
「か、カベルネ!」
「行きましょう、タイチさん」
カベルネに手を引っ張られながら俺はギルドを出て逝く。そして暫く歩き、カベルネは物陰に俺を連れていき、声を上げて泣くのだった……。
2017/04/23 修正および文章を少し足しました。




