99話 中立の町で活動するには
「ミリー……仕留めれるか?」
「もちろんです!」
俺達は世界が落ち着く一年間はサキカワの町で暮らしたのだが、相変わらずコモマンの支配力が変わらないため俺達は町を捨てることにした。
「ジムフローが三体、シオンの方に向かってるぞ!」
叫ぶように教えると、シオンは二丁の拳銃でジムフローを射撃する。
止めの一撃はアズロットが持っていき、シオンは頬を膨らませた。
「詰めが甘いのよ……やるときはミリーのようにしっかりとやりなさい」
シオンに説教するようにアズロットが言う。一年でかなり言葉が上手くなったのと、世間を覚えるには良い時間だったのかも知れない。
「ご苦労さん。三人共……」
死骸を袋に詰め、俺達は先を急ぐことにする。
キングストンの町は半年前に魔物の襲撃により滅び、今は魔物の巣となっている。そこを通るのを止め違う道を通ることにして俺達はバキハハダの町を目指していた。
この町は唯一コモマンに支配されていない新しい町という話だったからだ。基本は為替が収めていることには変わりはないのだが、どこの国にも属していない、いわば中立の町となっており、人々が集まって来ているとの話を聞いたのであった。
「タイチ様、魔物の種類が異なってきましたね……」
ミリーが冷たい目で周りを見渡す。先程のジムフローはかなりの強者として扱われており、通常、四人で倒すなんて考えられない強さなのだ。
「そうだね。だけど、俺にはミリーやシオン、アズロットがいるから大丈夫さ。そういえば……噂によると、町が独立をし始めているという話がある。もうちょっとだけ世界が動くんじゃないか? 特にギルド……アビリスト達がね」
「どういう事ですか?」
「国に縛られたくないということだろう。国の管理から離れ、自分達の事は自分達でなんとかする……そういう事だ」
一年も経てばコモマン達は理解する。ガーディアンがアビリストたちから守ってくれる事に。それを利用した犯罪が増え始めたことにより、ガーディアンシステムはなくなったのだった。嫌でもコモマンはアビリストと共存する世界を選ばないといけなくなったのだった。
「タイチ様、あれがバキハハダの町じゃないですかね?」
遠くから見える活気付いた町。今まで見た町よりも楽しそうだった。
「そうかもな。どんな町か楽しみだな」
そう言って歩いていると、ガサゴソと茂みから数十人の人が現れる。
「お前ら……バキハハダへ行くつもりか?」
リーダーっぽい男が問いかける。
「そうだけど……何か?」
「通行料を払ってくれよ……1万ガルボで構わないぜ」
MMOだったらPKと言うやつだろう。プレイヤー狩りをして身ぐるみ剥いで最低な集団。
「お断りしますと言ったら?」
そう言うと、男達は剣やロッド、ワンドを構え攻撃態勢に移りかかる。
ミリー達も剣を抜き、身構えるのだが数が多いのと、この場所で戦えるということは、それだけの実力者であるという事……シオンやアズロットは緊張した目で睨みつける。
「言っておくが……ガルボや道具を置いていくなら今のうちだぜ?」
「言っておくが、念仏を唱えて命乞いをするなら今のうちだぜ? 正直、俺はコモマンやアビリストじゃないんだからな……」
その言葉を聞いて、眉間にシワを寄せる追い剥ぎ集団。
「な、何を意味不明な事を言ってやがるんだ!」
「死ぬ覚悟は出来てるのかと聞いているんだよ、おバカさん」
睨みつける俺に対し、追い剥ぎ集団は後退りをして距離を取る。
「お前らみたいな奴は……とりあえず死んじゃえよ……。どうせ俺を殺したらこの子達は乱暴するつもりなんだろ?」
「上玉の女だからな……」
そこまで聞けば生かして置く必要は無い。死んでもらおう……面倒だから
俺は右手を伸ばし、指を差すような仕草を見せる。
「な、なんだよ……」
俺はニヤッと笑うと、手のひらに拳銃が現れる。相手からは見た事のない武器であり、どんなことに使われるのかも、どうやって出したかもわからない道具。
「こいつらは俺の女だからお前らなんかにやらねーよ……お前ら死んじゃえよ……」
そう言ってトリガーを連続して引きまくる。弾切れは起こさない……何故なら、俺が想像した武器は弾切れなんか無いのだから!!
次々に撃ちのめされていく追い剥ぎ集団。一分もかからずに数十人は死体となるのだった。
呆気に取られるミリーとシオン。アズロットは俺のやる事だから多分そうするのだろうと思ったらしく。死体を蹴っ飛ばし、ガルボが無いかを確認していた。
「た、タイチ様……」
「ああいった連中に情けや容赦は見せるな。殺せ……」
俺が言うと、二人は大きく返事をしてシャキッと立つのだった。暫く歩いて行くと、町の入り口が見えてくる。検問がある訳では無いし、堂々と入って行く。俺達は町をうろつくと本当に自由な街に見える。かなり色々な人が色々な商売をしており、楽しそうにしている。
「楽しそうですね……」
「そうだな。ここの町で暮らそうかな……」
「本当ですか! ご主人様!」
「取り敢えず為替に向かうことにするか……」
ミリーは嬉しそうに俺の腕に抱き付き、ぶら下がるようにして甘えている。
「ミリー! タイチ様に迷惑をかけちゃ駄目よ!」
シオンは俺からミリーを引き剥がし、頭を下げさせる。気にすることはないのにね。
「大丈夫だよ。ミリーやシオン、アズロットの三人なら俺一人でなんとかしてやるさ」
笑いながら言うと、アズロットが俺に飛びついてくる。
「なら私を離さないようにしてくださいね? タイチ」
「もちろんだよ、アズロット。ほら、二人もおいで」
そう言って俺は二人の肩を抱き寄せ、為替へと向かうのであった。しかし、為替につくと俺達は予想のしない現実に行きつくことになった。
「こりゃ……凄いな……」
為替の中は華やかに豪華だった。そして、新しいシステムなのか、色々な物を購入できるようになっていた。
「あ、あのぉ……家が欲しいんですけど……」
「家ですか? それなら……これが街の見取り図になりますよ。どんな場所をお求めになりますか?」
為替の女性店員は楽しそうに地図を広げる。
「わるい、三人は情報収集をしてくれるか? 俺は家の場所を決めるから」
かしこまりましたと二人は言ってどこかへと向かう。アズロットは不貞腐れた顔してその場を離れて行った。
「この場所はどのくらいの値段なの?」
「この場所はですね……建物が新しいので……」
色々な話をしていくうちに、全体的にガルボが高いと言う事が分かる。理由はこの町は中立の町……いろいろな仕事が舞い込んでくる。しかも初心者冒険者にも優しいエリアが有ったりして随分と沢山の人が集まる街のようで、ガルボの出入りが激しい町だったのだ。
「この土地だったら……いくらですか?」
「ち、土地ですか? 土地でしたら……安いですけど……大丈夫ですか?」
「自分で建てた方が早い」
「じ、自分で建てる……ですか……大工のスキルでも持っているんですか?」
「持ってないよ。適当に自分でやるから良いよ」
「そしたらこの木は如何ですか?」
「木?」
「はい、この木の中は空洞なんですよ。ですから自分で家を作るのなら面白いのが出来るかも知れませんよ? 普通の人だったら出来上がったものを買いますが……お客さんはちょっと違うようですしね。これだったら木を買い取りになりますから……大体30万ガルボで売る事が出来ます。お客さんが求めている金額がその位なので丁度良いのではないでしょうか?」
「改造しまくるけど……大丈夫?」
「あ、申請書を出してくれれば何をしても問題ありません。申請書というのは分かりますか?」
俺は日本人だぞ……その程度の事は知っている。
「例えばどんな申請書が必要なの?」
「下水などのですかね……簡単にいうなれば……。それに、自治体が有りますので一度は挨拶に行った方が良いかもしれませんよ?」
「自治体?」
「はい、この町は独立した町です。今はバキハハダという名前を名乗っていますが、近々名前を変える予定になっているとか……。それに自治体にはコモマンとアビリストが作られた町なのです。ですので、コモマンとアビリストの二つのグループが管理しているんです。私どものはガルボの管理と土地の管理だけしかやってませんから……」
「ふ~ん。コモマンとか、アビリストって呼びにくいですね……」
「まぁ……それは上が決める事ですから……」
店員は苦笑いをして頬を掻くのであった。




