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召喚チート能力者の異世界ライフ  作者: マルチなロビー
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9話 そんなに都合よく行くことは無い。世の中全て金だね。

 町に到着して、ずぶれになった服の中から、ギルドパスを取り出すのは苦労すると思いながら、兵士にギルドパスを見せる。兵士も雨でずぶ()れになっているのだが、嫌な顔をせずに仕事をしている。こういう人は本当に偉いなと思う。自分も見習いたいものだ。俺なら多分、ふて腐れた顔をしているのかも知れない……。


 イノシシと山からの下山、そして、雨の影響で疲れはピークに達しているので、ギルドハウスには寄らず、そのまま宿屋へと向かうことにする。もう無理、早く風呂に入って身体を温め、乾いた服に着替えたい。だが、俺は気が付かなかった。というか、ここ数日、風呂など入っていなかったことを忘れており、しかもここの宿屋には風呂というものが無い。()()(おけ)があり、それに井戸水を()んで体を拭くというのが主なやり方なのだ。()れたままでいるのは嫌だったので、仕方無しに、(おけ)に水をためて全身を(くま)()く拭き、泥などを落として()れた服を壁に引っかけ、俺は布団に(くる)まり本日は就寝。風邪を引かないかが不安だが、()()えずは寝ることに集中しよう。


 翌朝になり、風邪を引いていない事を確認してから服を確認するのだが、まだ()れているし、泥だらけで、着ることはできない。なので、新しい服を召喚してそれに着替える。外を確認すると、昨日は一晩中、雨だったが、今日は晴れており、()()えずもう一泊して服を洗い、(よろい)を乾かす事にする。


 外に出たのは昼過ぎで、正直、今日はヤル()が起きない。いかに簡単に稼ぐかという方法を考えながらギルドハウスへ向かい、昨日、ずぶ()れになりながらも倒したイノシシを換金に出す。すると、その大きさは異常なほどだったらしく、周りからは「オォ!!」と声が上がるのだが、正直、それに反応する気にもなれない。このイノシシだけで2万ガルボになるのだが、ハッキリ言ってまだまだ安すぎる。本当に冒険者は(もう)かるのか……少し疑問に思えてくる今日この頃。


 ダレルさんに相談すると「そりゃコアの質が悪いからだよ」と、言葉が返ってくる。俺が出入りしている町の入り口は、ゴブリンやコボルト、それに動物しか(ほとん)ど現れないらしく、魔物のレベルが低いためコアの質が悪いことを初めて知る。そんな話、もっと前に教えてくれても良いではないのかとダレルさんを(にら)()けたかったが、聞かなかった俺にも責任があるし、殴られたら嫌なので苦笑いで()()()した。


 しかし、今日は他の場所へ行く気にはなれず、ギルドハウスでダラダラすることにして周りを見ていると、腕に紋章がある人をチラホラ見かける。その人達は椅子には座っておらず、付き人のように後ろに控えているようだった。


「ダレルさん、あの紋章は何ですか?」


 周りを見渡すと、大抵のベテラン冒険者には、そういった人が控えているので気になり、質問した。


「ん? どれの事を言っているんだ?」


 ダレルさんは周りを見渡し、どの話をしているのかと問いかける。


「あれッスよ。あの子とか……あの人とか……」


 相手に気が付かれないよう、ダレルさんに教えると、ダレルさんは(あき)れた顔して俺に言う。


「ありゃ、この間話した奴隷だよ」


「え? ど、奴隷?」


「そう、奴隷。奴隷になると、あの紋章が腕に現れるようになるんだ」


「へ、へ~……」


 あ、アレが奴隷なのか……。確かに()(わい)い子とかもいるし、(もの)(すご)く体格の良い人だっている。実に忠実に言うことを聞いているようだ……。


「あそこに座っている奴は奴隷じゃ無くなった奴なんだが……ほれ、肩を見てみろよ。奴隷契約は途中で止めることも出来るが、あの紋章は消えないらしいぞ」


「そ、そうなんですか……」


「刻印に近いものなんだろうな……」


「へ~……」


 ――刻印……腕には何と書かれているのか、それとも、何かの紋章なのかは分からなかった。ただ、それは(はかな)く切ないものだと感じる刻印だ。


 (しばら)くして食事を頼むのだが、代わり映えのしない食事がやって来る。正直、食べ飽きたと言っても良い。メニューを見ても大して書かれていない。もしかして、食事が無いのか!


「ダレルさん、ここってこれ以外に食べるものって……」


「あるはず無いだろ。大抵のものは食ったんじゃないのか?」


 あの料理で大抵のものと言われても困る。ハンバーグすらないのだ。と言うか、ハンバーガーくらいメニューに載っていても良いではないか……大抵、メニューに載っている食事はステーキ料理ばかりではないか。もっと違う料理があってもよいかと思うぞ。


「なんか……パンとかそういうもので挟んだりしたものは無いんですか? 他にも……」


「パン? 何だそりゃ……」


 そう言えばパンなど、見たこと無いのを思い出す。主食は全て肉系か野菜がメインだった気がする。だが、お菓子などがあるのでパンという名前ではなく、違う名前なのだろうと思う。だってケーキのスポンジを作る事は出来るようなのだから。あ、ケーキはベーキングパウダーか……。だが、(なま)クリームとか、そういった物を作ることはできそうだが、作り方を知らないのかも知れない。


 召喚能力を使って、食事が出るのか試したのだが、出るのは材料だけで、生肉やハム等は出て来ないことは理解している。出たらギルドハウスで売ってしまい、お金に換金してしまえる……ということだろう。(ちな)みに、水も召喚できない事も試し済み。なので牛乳は出てこないのだが、チーズは出てくる。意味がわからない。制限のかけ方がおかしいのでは無いだろうか。


 材料だけで……ん? 何か浮かびかけたが……。イメージが湧かない。


「タイチ、今日は狩りに行かないのか?」


 考え事をしていると、ダレルさんがつまらなそうに質問をしてくる。


「昨日の雨で身体がダルいんですよ。明日、新しい場所に行ってみようかと思います」


「と言うことは、ついにこの町を出ていくということか?」


 少し顔色を変え、聞いてくる。そうか、新しい土地に移動して稼ぐ方法もあるという訳か……。


「まぁ、稼ぐとなれば……新しい場所に行くことも考えないといけませんよね」


「そうか……寂しくなるな……」


 本当に寂しそうな顔して俺に言う。冒険者は自由だから、仲良くなってもその土地に(とど)まると言うことは無く、旅立ってしまうこともある。この人は何度もそういう人達と出会い、別れを繰り返したのだろう……


「まぁ、すぐに行くとは決めてませんが……行くときは必ず一言報告をしますよ」


「おう、分かった!」


 そう言い残してダレルさんは俺の席から離れていく。その後ろ姿は少し寂しそうに感じた。このような感じで冒険者は新たなる町へと移動していくことが多いのかもしれないのだと言うのが……何となく分かった気がする。


 ギルドハウスを出て、町をブラブラしていると色々な種族の人間がいる事に、この時初めて気が付く。今まで精神的に色々あったので、周りを気にする余裕が無く、徐々にこの町にと言うか、生活に慣れてきたのを実感する。


 この世界の人は、俺達のようなタイプの他に、獣耳があったり、尻尾が生えていたりしている人。そしてウサ耳の男も居れば女性もいたりしていた。


「色んな種族の人間が居るんだな……」


 そう(つぶや)き、俺は町を歩いていると、神殿らしき場所に辿(たど)()く。


「コレは……もしかして神殿か? ……と言うことは、何かしらの宗教があるということなのか……」


 神殿の入り口付近に立っていると、神職らしき人が、入り口から出てくる。俺は会釈をすると、その人は笑顔で会釈を返してくれた。どうやら悪い人では無さそうだが、人はいつ急変するか分からないので注意が必要。


「この神殿に何か御用ですかな? 冒険者殿」


「あ、い、いえ……特には……」


 俺が困った顔をしていると、再び入り口が開く。すると、知っている顔がした人が入り口から出てきて、俺に気が付いた。


「あ、あら? タ、タイチさん……?」


「か、カベルネ……どうして――ここに?」


「ここで魔法を教えてもらってるんですよ……」


 少し(おび)えた感じでカベルネが答える。あの時の事を(おび)えているのだろうか……だけれど、俺が始末しなけりゃ、君たちは全滅だったじゃん。そんな顔をしなくても良くないか? 本当に……。


「ま、魔法を教えてもらえるのか~。へぇ~……魔法か~……」


「ま、魔法と言っても回復魔法ですよ……タ、タイチさん程の高等魔術師が覚える必要は……」


「そんな事はないよ。回復魔法は必要なものだ……俺も教えてもらおうかなぁ」


「――なら、中で話を聞くかね?」


 隣に立っていた神職らしき人物が、優しく(ほほ)()みながら俺に言う。カベルネと話していた事で、この人の存在を忘れていた。


「あ……はぁ。お、お願いできますか」


 そう答えると、神職らしき人は快く中に入れてくれる。カベルネは帰ろうとしていたようだが、俺が中に入るのが気になるのか一緒についてきていた。


「あら、カベルネ……帰るんじゃなかったのかい?」


 年配女性の修道女に聞かれると、カベルネは(ほお)()きながら苦笑いをした。


「も、もう少し……練習をしようかなって……アハハ……」


 どう見ても(うそ)だと分かるのだが、ここにいる人達は人が良すぎるのか、優しく(ほほ)()んで納得をする。


 席に案内され魔法について説明を受けるのだが、この人達が言われている意味が理解できない。だって「内なる魔力の流れを良く見てくださいね」だから。分かるはずないじゃん。


 仕方ないのでステータス画面を開き、皆が分からないようスキル項目をイジリ、魔法感知能力があるのかを調べてみると、やはりありました!! しかもスキルポイントは10も消費すると言う(かな)しき定め。


 説明を受けていても理解するのに時間もかかるし、もしかしたら理解できないのかも知れないので、仕方なくポイントを消費して見ることに……そして、目を凝らしてみると――体内からエネルギーのようなものが、手の平から人に流れていくように見えるのだった。


★――――――★

名前:鈴木(すずき)太一(たいち)

レベル:6

力:10

器用:12

体力:15

魔力:9

スキルポイント:40

【スキル】

アイテムクリエイト(物を生み出す力)

異世界言語

異世界文字

射撃:1

気配察知:1

剣技:1

魔法感知

★――――――★


「えっと……な、流れとか言うのは分かりましたが……」


 そう答えると、神職らしき人は優しく(ほほ)()み、ゆっくりした声で俺に言う。


「ならば出来るはずです。同じ様にやってみて下さい……」


 無理無理……。カベルネは真剣な(まな)()しで俺を見ているが、そんな簡単に出来るはずがない。


 ()()えず、試しに言われたとおりのことをやって見る。すると、自分の体から何かが流れる感覚がする。だが、それが治癒能力かどうかは分からないが、異常に身体が疲れる。


「か、かなり……疲れますね」


「それは魔力が少ないからです。これをお飲み下さい」


 神職のような人は、何かお茶のようなものを出すので口をつけてみると、トクホの緑茶のような味がする。これはあの飲み物ではないのか?


「これは魔草を()(つぶ)し、お茶にしたものです。飲めば魔力が回復するはずです」


 確かに身体が楽になった気がする。


「魔法は使えば使う程に、魔力が上がっていくと言われております。繰り返して行っていけば、身体が要領を覚えてそんなに疲れたりすることは無くなり、楽になられるはずです」


 本当かよ……。そう言葉に出かけたのだが、グッと堪え我慢をする。そして、言われるがままに練習を繰り返していくが、上手にできているのか分からない。


「そろそろ実技をしてみても良いかも知れません。タイチ様は素質がお有りのようですからね……」


 神職は(ほほ)()みを崩さずナイフを手に持ち、突然ナイフを俺の手に突き刺しやがった。


 走る激痛と、あふれ出す血。まさかナイフで刺されるなんて聞いてもいなかったため、完全に油断していた。


「ぐ、ぐぁ……!! な、なんてことをするんだ……!」


 カベルネは別に何の驚きもせず、ずっと見つめており、助けようとはしてくれない。俺は痛みにもがき、涙目になる。


「自分の魔法で傷を治すんですよ……さぁ! 早く魔法を使って治すのです!!」


 神職のような人物は声を少し高くして言うのだが、いきなり言われても油断していたのもあるが、出来るはずがない。俺はぶち殺してやろうかと銃を召喚しようとすると、カベルネが回復魔法を唱え、ナイフが刺さっていた傷を治してくれる。


 俺は息を荒くして天井を見上げ、動揺をおさえようとする。治してくれなければ本当に殺して、スキルポイントを使用し、回復魔法を覚えるつもりでいた。


「あ、ありがとう……カベルネ……」


「い、いえ……ですが、神職様……あのやり方では、幾ら高等魔術師でも慌ててしまいます。できれば私のように、()ずは指先に傷をつけそれを治癒させる方が(よろ)しいかと……」


「ほーほっほっほっ……。そうですかな。タイチ様ならやってくれると思っていたのですが……」


 笑い事ではない。本当に痛かったのだ。そういうやり方があるなら先にそれでやるべきだと思う。


「では、指先に小さく傷を入れて、それを治すことにしましょう……」


 初めからそうしてくれれば良いし、その前に説明をしてくれ……。神職は俺の指にナイフを軽く刺し、血が浮き上がる。それなりに痛いので正直、集中とかそういったレベルではないのだが、カベルネはそれで覚えたというなら挑戦するしかないだろう。しかし、カベルネの顔を見ると、難しい顔をしている。本当はもっと傷を浅く付けるのでは無いのかと、一瞬だけ思ったのだが、もうそんな事は言っている暇は無い……早くこの傷を治さなければならない。


 俺は魔力を込めてみるのだが、全く治る気配はない。指から血はポタポタ流れ落ちるだけである。


「タイチさん、傷が治っていくイメージをしていくんです。そして、()()をしていなかった状態を……一度覚えてしまえばあとは……」


 カベルネの言葉を聞いて、傷が治っていくイメージをすると、ゆっくりと傷が治っていく。これは魔法が成功したのだと思い、俺はステータス画面を開き、自分の魔法欄を確認する。


★――――――★

名前:鈴木(すずき)太一(たいち)

レベル:6

力:10

器用:12

体力:15

魔力:9

スキルポイント:40

【スキル】

アイテムクリエイト(物を生み出す力)

異世界言語

異世界文字

射撃:1

気配察知:1

剣技:1

魔法感知

回復魔法:レティオ(小)

★――――――★


 小回復魔法を覚えているので成功と言えるだろう。これでポイントを使用せずに魔法を覚えることに成功し、ホッと一息する。神職がそっと右手を差し出してきたので俺は握手を交わそうとすると、神職は言う。


「お代は5,000ガルボになります」


 あ、そういう仕組みなのね……。


 仕方なく俺は言われたガルボを支払い、神殿を出て行くと、カベルネも一緒に出て行くのだった……。

2017/4/25 修正

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