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昼食を摂るために、食堂に行きました。

相変わらずいろんな人が居る。


「あら、アンフィ」


声に振り向くと、シェアトさんが素敵なナイスバディを見せつけながら近づいて来た。


「シェアトさん。えと、時計とか、ありがとうございます」

「気に入った?一応子供っぽい物じゃない物にしたんだけど」


確かに。あの小物類は普通に大人っぽい物だった。


「ああ、そうそう。シリウス、アンフィの教育の話は聞いたかしら?」

「今朝、アルビレオ殿から」

「そ。うちは、わたくしがアンフィに魔法を教えるわ」


シェアトさんがそう言うと、周囲の人達が目を丸くしてざわつく。

何故?

シリウスさんも微妙な表情だ。


「そう……ですか」

「あら、わたくしで良かったでしょ?うちは、ほら、他がねぇ」


他って、魔術省の人達は何か問題が?

忙しいんですかね?


カウンターに行くと、厨房の中から三つ編みのお姉さんが気づいて出て来た。


「シェアト省長、シリウス省長、お疲れ様です。アンフィちゃん、ちょっと待っててね」


お姉さんは厨房の中に戻って、子供椅子を持って出て来た。

あれ、リボンは赤ですよ?

朝のお姉さんとは違う方ですね。


「省長っ。持って来てくださいよっ」


厨房の中からサダクビアさんがトレーを持って出て来た。


「はいはい。お、アンフィ。沢山食べて大きくなれよ」


お姉さんが冷めた目でサダクビアさんを見る。


「オジサンくさい」

「ひどい」


空いてる席まで行って、お姉さんが椅子を入れ替えてくれたので、そこによじ登る。

サダクビアさんがトレーをあたしの前に置いてくれる。

シリウスさんとシェアトさんは、あたしを挟むように座る。


「いただきます」


昼食は、おこわと白身魚のムニエルとスープ。

おこわは山菜が入っていて、少し醤油っぽい味がした。

ムニエルは鱈のような魚で、パプリカが細かく刻んでソースに入っていて、甘くて美味しい。

スープは玉葱とセロリが入った野菜スープ。

どれも美味しいです。


「ごちそうさまでした」


手を合わせたら、シェアトさんがクスクス笑う。

顔を上げると、シェアトさんはあたしの頭を撫でた。


「ほんと、美味しそうに食べるわね」

「美味しいです」


あたしが頷くと、トレーを回収しに来たサダクビアさんが嬉しそうに笑う。


「よし。もっと美味いもん食わせてやるからな。早く大きくなれよ」

「それがオジサンくさいって言われるのよ」


シェアトさんが溜め息をつく。

シリウスさんは黙ったままサダクビアさんを見つめていた。


「な、なんだ?シリウスも俺がオジサンだと言いたいのか?」

「いえ……」


そこへアルドラさんがやって来た。


「シリウス省長。午後は剣術訓練ですよね?」

「そうだ」

「じゃあ、木剣を用意しないと」

「……アルドラ」

「はい?」

「俺は用事があるから、アンフィを連れて先に行っててくれ」

「あ、はい。わかりました」


シリウスさんは立ち上がると行ってしまった。

くっ。また心のオアシスが去ってしまった。

ハッと周りを見ると、シェアトさん達がにやにや笑っていた。


「なんでシリウスなんかになついちまったんだ?」

「ほんとね。あの男のどこがいいのかしら?」


いやー。あたしの好みドストライクなイケメンですから。


アルドラさんも微妙な表情であたしを見ていたけど、突然ハッと目を丸くした。


「あっ!!」

「何?」

「どうした?」

「いえ……あの、午前中に…その……」


アルドラさんは言い難そうにもごもごしてる。


「まさか、シリウス省長は、復し…じゃなく、闇う…いや」

「何なのよ?」

「いえ。その、リギル省長が、アンフィちゃんをぶん投げたので、その事かなぁ?と」


アルドラさんの言葉に、シェアトさんの笑顔が凍りついた。

そして辺りが急に寒くなる。


「リギルが、なんですって?」

「いえ!なんでもないです!」


アルドラさんは直立不動になった。

サダクビアさんが苦笑いになる。


「すごいな、あいつは。ま、そうしなきゃならん事でもあったんだろ?」

「はい。あの、シリウス省長の騎獣が……」

「は?!」

「アンフィ、獣舎に行ったの?!」


シェアトさんとサダクビアさんが目を丸くする。

何か問題が?

リギルさんも「またおいで」って言ってくれたけど?


「ケルちゃん、可愛かったです」

「ケルちゃんって、あの、ケルベロス?」

「?はい」


あたしが頷くと、シェアトさん達は信じられないと言う様に目を丸くしている。


「ん?それで、どうしてアンフィを投げる事になった?」

「ケルベロスが近づいて来たので。噛まれたりしたら、まずいじゃないですか」

「そりゃそうだな」


サダクビアさんは笑って頷く。


「リギルは慌て過ぎたって事だな」

「そうね。あの人がアンフィを投げるなんて余程の事よね」


シェアトさんは頷いて同意するが、持っているグラスがパキパキと音を立てて凍る。


「でも、それとこれは別。後でリギルに言っておくわ」

「……程々にな」


あたしはシェアトさんの手の中で凍るグラスに釘付けですよ。

手、冷たくないのかな?


「おっと。アンフィちゃん、食べ終わった?行こうか?」

「はい。あ、サダクビアさん、ありがとうございました。ごちそうさまです」


あたしがお礼を言うと、頭を撫でてくれた。

アルドラさんがあたしを抱き上げて歩き出す。

シェアトさんに手を振ると、シェアトさんはにっこり笑って振り返してくれた。

うふふ。ナイスバディ、目の保養です。

アルドラさんは何故か震えていますけどね。



午前中に行った訓練場に行くと、新人さん達はお弁当を食べていた。

アルドラさんとあたしに気づき、軽く目を丸くしている。

あ、そうだった。

子供は珍しいんでしたね。

つい忘れそうになる。

アルドラさんはあたしを下ろすと、道具類が置いてある隅の方へ行く。

あたしが視線を戻すと、いつの間にか新人さん達に囲まれていた。


「え?」

「午前中にいた子だよな?」

「名前は?」

「シリウス省長と、どんな関係なの?」

「可愛いなぁ」

「おい、お前……」


質問攻めにされて、あたしは首を傾げた。

すると周りの人達は変な顔になる。


「えっと、アンフィといいます」

「アンフィちゃんっ」

「名前も可愛いっ」


アルドラさんが遠くで気づいて声を上げる。


「あ!お前達っ……!」

「えっと、シリウスさんは……」

「俺が、どうした?」


突然降ってきた声に、周囲の人垣がサァーっとなくなった。

振り向くと、シリウスさんが立っていた。


「シリウスさん」


見ると、アルドラさんが天を仰いでいた。

シリウスさんは新人さん達の方へ近づいて行く。

アルドラさんが走って来て、あたしを抱き上げると、少し距離をおいてあたしを下ろす。


「アルドラ、木剣を用意しろ」

「はいっ。用意出来てますっ」


アルドラさんは慌てた様に箱を持って行く。

箱には木剣が入っていた。


「午後は剣術の訓練だ。一人一本、剣を取れ」


新人さん達はササッと木剣を手にする。


「まずは二人一組で打ち合いの練習。その後、力量を知るためにトーナメント式で軽く試合」


シリウスさんが説明を始めると、アルドラさんがかいてもいない額の汗を拭いながらやって来る。


「マジ、ヤバかった」


気づくと、新人さん達は打ち合いを始めていた。

普通ですけど、何がヤバかったの?


「アンフィちゃん。無闇に愛想振り撒いちゃ駄目だよ」

「あいそう?」

「あー…。知らない人に話し掛けられても、返事しちゃ駄目って言うか」

「んー?このお城の人達は、ほとんど知らない人ですよ?」

「ああ、うん、そうなんだけど」

「アンフィ」


シリウスさんがいつの間にか近くにいた。

アルドラさんは固まっちゃってます。


「省長の誰かが一緒ではない所で、名乗ったりするな」

「そう、それ!」


何故駄目なのかがよく解らないけど、シリウスさんはあたしの保護者だしね。

保護者の言う事は聞かないと。


「はい。わかりました」


あたしが頷くと、アルドラさんは大きく息を吐く。

シリウスさんはまた新人さん達の方へ行った。


「省長さんと一緒なら、いいんですかね?」

「ああ、うん。まあ、省長達は変な奴等をアンフィちゃんに近づけさせる程馬鹿じゃないしな」

「――じゃあ、お前は馬鹿なんだな?」


聞き覚えのある声に、アルドラさんの後ろを見ると、ムルジムさんが立っていた。


「ムルジムさん」

「ムルジム副長?!」


アルドラさんが再び固まってしまう。


「副長、今日は城外警備では?」

「終わったから戻って来たんだが」

「そうですか」


そういえば、ムルジムさんが腰に提げてる剣は、シリウスさんの剣と形が違うな。

三日月形になっている。

ファルシオンとか、そういう剣かしら?


「シリウス省長。只今戻りました」

「……ムルジム」


ムルジムさんはシリウスさんに近づきながら、笑っていた。


「省長。何があったのか大体の想像は出来ますけど、その覇気を収めてください。新人達は慣れてないんですから」

「報告は?」

「特に。今日も平穏でしたよ」

「そうか」


シリウスさんは軽く息をついて、あたしの方へ歩いて来た。


「アンフィ。この後医務室に行く」


医務室?シリウスさん、具合が悪いとか?


「アンフィを健診すると、サビク殿が言ってきたからな。早い方が良いだろう」


おおう。健康診断ですね。


「ムルジム、訓練の方は頼む」

「はい」


シリウスさんがあたしを抱き上げると、ムルジムさんはまた笑った。

アルドラさんは、あからさまにホッとしている。

あたしはシリウスさんの首にしがみついた。


「どうした?」

「いえ、なんでもないです」


なんだか、シリウスさんって、損してるんじゃないかなぁ、とか思った。

口下手だし、無表情に近いし。

優しい人だと、あたしは思うんだけどね。


「大丈夫だ。健診と言っても、ちょっと身長や体重を測るくらいだ」


ポンポンとあたしの背中を叩いてシリウスさんは言う。

いえね。健康診断が怖い訳じゃないですよ?

ホントですよ?

体重とか他人に知られるのが嫌なだけですよ?


読んで頂き、ありがとうございました。


急に寒くなったので、余計に夜中に書くことが厳しくなりました。

でも、夜中しか書く時間がないので、頑張ります。


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