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17

お久しぶりです。

生きてます。


朝目が覚めて、近くの机の上の時計とカレンダーを確かめる。

今は、朝の七時――たぶん10分頃。

二十四時間の文字盤では、細かい分が分からない。

何故十二時間にしなかったのか。

今日は新緑月の七日。

まだこのお城に来て五日目なのに、だいぶ慣れたみたい。

ベッドから起き上がり、軽く伸びをする。

クローゼットからタオルを出し、洗面所へ向かう。

カーテンを少し開けて出ると、珍しくまだシリウスさんは寝ていた。

お疲れなのね。

あたしはなるべく音を立てないように動いた。

洗面所で顔を洗い、櫛で髪をすく。

軽く口を漱ぎ、鏡に映る美少女に視線を逸らす。

相変わらず、見慣れねーな。

どうにも杏莉だった時の顔の記憶が強くて、今のこのアンフィの容姿に馴染めない。

ま、いっか。

洗面所を出て静に歩くと、シリウスさんに会った。

おおう。もう起きたのですか。


「お早うございます」

「お早う」


シリウスさんはあたしと入れ違うように洗面所に入った。

済みません、あたしが先に使って。

自分のスペースに戻り、カーテンを引くと、クローゼットから服を出して着る。

昨夜、エレクトラさんが届けてくれた服。

薄い水色のワンピースは半袖だけど、上に同色の七分袖の上着を着る。上着の首元には紺色の小さいリボン。

ワンピースは腰の辺りで少し細くなり、膝の辺りまでふわりと自然に広がる形。スカートの裾には白いレース。

足首までの白い靴下。

靴は紺色のローファーの様なもの。

相変わらず可愛い服だ。

しかも、色はあたし好み。

あたしは赤やピンクより、青や緑が好き。

可愛い物は好きだけど、見ているだけで良かったのだ。

身に着けようとは思わなかったし、欲しいとも思わなかった。

ま、今は用意してもらっている身なので、着るけどね。

カーテンを端まで開けると、シリウスさんも身支度を済ませていた。

早いですね。







食堂へ行くので、借りていた蓋付きのお皿を持って行く。

朝の食堂は昼の食堂よりは空いていて、夜の食堂よりは忙しい。

食事の配膳を待つ列にシリウスさんと並ぶと、何故か周りの人達が微笑んで挨拶してくる。

ん?突然どうした?オバサン困っちゃうな。

取り敢えず挨拶を返すと、シリウスさんがあたしを壁の方へ移した。

何故?

シリウスさんを見上げると、シリウスさんは困った様な顔で眉を寄せていた。

シリウスさんと一緒だし、挨拶くらいはいいよね?

あれ?駄目だったっけ?

カウンターに近づくと、三つ編みの双子のお姉さんの一人が居た。

向こうもあたしに気づき、笑顔になる。


「アンフィちゃん、お早うっ」

「お早うございます。あの、これお借りしていたので、お返しします。ありがとうございました」


あたしはギリギリ顔が乗る高さのカウンターに、お皿を乗せる。


「あら、わざわざありがとう」


お姉さんはにっこり笑ってお皿を受け取った。

その間に食事を用意してくれていて――相変わらず手早い――あたしとシリウスさんはトレーを受け取る。

空いている席に座り、食事を始める。

今日の朝食はちらし寿司だ。

それと、オムレツにベーコン、オレンジジュース。

これ、ちらし寿司じやなくトーストだったら、完璧なイングリッシュブレックファストだったのに。

取り敢えずうまうまと食べて、「ごちそうさまでした」と手を合わせ、椅子を下りる。

自分が使ったトレーを片づける為に手に取ると、頭上から声が降る。


「アンフィ!」


そして抱き締められる。

びっくりしたけど、知ってる人なのでそのまま挨拶をした。


「シェアトさん、お早うございます」

「お早う、アンフィ」


にっこり笑った後、シェアトさんはあたしの体を見回す。


「怪我はしてないわよね?」

「え?」

「だって昨日…………」


言いかけて、シェアトさんは口を閉ざす。


「まあ、いいわ。シリウス、今日の予定は?」

「新人の馬術訓練ですが」

「貴方のじゃないわよ。アンフィの予定よ」

「アンフィも連れて行きます」

「そ。ならいいわ」


シェアトさんはあたしの頭を撫でる。


「今日の様子を見てアンフィが大丈夫なようなら、明日からお勉強再開するわ。いい?アンフィ」

「はい」


頷いて了承の意を示す。

シェアトさんと別れて、食堂を出た。






シリウスさんについて歩いて行くと、獣舎の方へ向かっていることに気づいた。

馬術訓練だって言ってたしね。

獣舎の前には、広く柵で区切られた場所に色々な動物がいた。

シリウスさんは馬がいる柵の方へ近づいて行く。

柵の外側には新人さん達とアルドラさんと、リギルさんが居た。


「やぁ、シリウス、アンフィ。お早う」

「リギル殿、お早うございます」

「お早うございます」

「今日は馬術訓練だというので、大人しくて従順な子達を入れておいたよ」

「ありがとうございます」


アルドラさんがタイミングを見て声を掛けてくる。


「シリウス省長、お早うございます。新人省員二十名、全員揃ってます」

「わかった。アルドラ、アンフィを頼む」

「はい」


シリウスさんは新人さん達の方へ行ってしまった。

近づいて来たアルドラさんに挨拶をする。


「お早うございます、アルドラさん」

「お早う、アンフィちゃん。今日はどうする?」

「お馬さんに触りたいですっ」


ビシッと手をあげて言うと、アルドラさんは笑って頷いた。


「あっちに子馬の柵があるから、行こうか」

「はい」


うふふー。念願のお馬さん。

アルドラさんに連れられて行った先に、子馬が沢山居た。

黒から茶色から白まで、色々な色の子馬達。


「入って大丈夫ですかね?」

「リギル省長の許可は取ってあるけど、馬を驚かせないように静にね」

「はい」


あたしはゆっくり柵をくぐって中に入った。

子馬さんの何頭かがあたしに気づき、顔を向けたりしてくる。

一番近くに居た栗色の毛の子馬に近づいてみた。

子馬は警戒しないで、あたしを近寄らせてくれる。

そっと手を伸ばしたら、子馬の方から顔を寄せてきた。

嬉しくなって子馬の顔を抱きしめる。

えへへー。お馬さんに触れたわ。

にまにま笑っていたら、突然子馬達が顔を伏せた。

急にあたしの頭の上で鼻息がした。

見上げると、白い大きな馬の顔があった。


「あれ?」


こんな大きな馬、この柵の中にいたっけ?

つーかよく見たら、額の辺りから角っぽい物が一本、生えてますよ?

これは、ファンタジーでよく登場するユニコーンですか?!

あたしが大好きな某ゲームの小説版では、エロ角馬とか呼ばれてましたけどね。

だって、伝説上だと処女しか触れられない生物らしいし。


「ユニコーン?」

「ユニコーン‼?」


あたしの声とアルドラさんの声が重なった。

ユニコーンがあたしの顔に鼻先を当ててくる。

なんと‼あたしに触れと言ってるの?!


「ユニちゃん」

「アンフィちゃん!こっちおいで!」

「えー?」

「そのユニコーンは近衛省副長の騎獣だから!」


んん?デネボラさんの騎獣なの?


〈――娘、お前から主の匂いがする〉

「ほえ?」


今、頭の中に声が響いた。

誰?

もしかして、目の前のユニコーン?


「きみが、話してるの?」

〈そうだ〉

「ユニちゃん?」

〈我が名はヴァイスだ〉

「ほー」

「アンフィちゃん!」

〈あの男はうるさいな〉

「ごめんなさい」

〈娘を責めてはいない。ふむ。あの男を突き殺せば良いか〉


―――………今、さらっと怖い事を言いましたよ‼幻獣が‼


「駄目」

〈駄目?〉

「駄目」


あたしは大きく頷いた。


〈ふむ。娘が言うのなら、止めておこう〉


あたしはユニコーンを撫でてから、アルドラさんの近くへ戻った。


「アルドラさん、うるさいって。ユニちゃんが」

「なっ………」


アルドラさん絶句しちゃった。

しかし、思ったより素早い動きであたしを抱き上げると、走ってリギルさんの近くへ行った。

アルドラさん、足速いですね。


「おや?アルドラ、どうしたんだい?」


リギルさんがのんびり訊いてくる。


「ユニコーンが獣舎から出ちゃってますよ!」

「おやおや。困ったねえ」


そう言ってリギルさんは歩いて行った。

そこへシリウスさんが近づいて来て、アルドラさんの腕からあたしを抱き取る。


「何があった?」

「ユニちゃんに会いましたっ。可愛かったです」

「……………アルドラ?」

「ひー!俺のせいじゃないですよっ!」


あれ?

普通に報告しただけなのに、どうしてシリウスさんはアルドラさんを睨んでるの?


「ユニコーンといえば、デネボラの騎獣か」

「そうだと思います」

「というより、ユニコーンを騎獣にする酔狂な奴はデネボラくらいだ」


まぁ、確かに。

ユニコーンに乗ってるって「わたしは処女です」って言って歩く様なものだものね。

シリウスさんが降ろしてくれたので、新人さん達の方を見ると、皆さん大体落馬していた。

大丈夫かな?

馬に乗れなかったら、まずいんじゃない?

シリウスさんも振り向き、溜め息をつく。


「午後は体力だな」


わぉ。あの恐怖の体力作りですか。

頑張ってください、皆さん。

あたしは遠くから生温かく見守らせて頂きます。


「アンフィ、昼飯にするか」

「はーい」

「アルドラ、後の指示は任せる。飯を食ったら、午後は体力作りだから、訓練場に集合だと伝えておけ」

「はい」


シリウスさんが歩き出したので、あたしはアルドラさんに手を振って、シリウスさんについて行った。


読んで頂き、ありがとうございました。


動くピクピクニンジンに夢中です。


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