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気づいたら、多くの方に読んで頂いているようで、大変ありがとうございます。
今回は世界の説明の回になってます。
少し読み辛いかもしれません。
こんな感じの世界だというのがわかって頂ければな、と。
あたしのお勉強を見てくれる人が決まりました。
基礎知識は治部省長のアルビレオさんが。魔法知識は魔術省長のシェアトさんが。礼儀作法は整備省副長のマイアさんが、教えてくれる事になった。
初日の今日は、アルビレオさんから基礎知識を学ぶ日です。
お勉強はシリウスさんの部屋で行います。
あたしはやっと机を使う日がきたと、嬉しくて机を撫でちゃうよ。
朝食を済ませ、部屋でアルビレオさんを待ちます。
しばらくして、扉がノックされて開けられ、アルビレオさんが入って来た。
「お早うございます、シリウス省長、アンフィ」
「お早うございます」
「お早うございます、アルビレオさん。今日は、よろしくお願いします」
あたしが頭を下げると、アルビレオさんは微笑む。
「こちらこそ。さ、シリウス省長はどうぞ、勤めに向かってください」
シリウスさんは微妙な顔をしていたが、溜め息をつくと、行こうとした。
あたしは慌てて声を掛ける。
「シリウスさん、行ってらっしゃい」
「……ああ、行ってくる」
シリウスさんが笑って出て行った。
よし。これで心置きなく勉強が出来るぞ。
振り向くと、アルビレオさんが笑っていた。
何故?
「いやぁ、ほんとに、アンフィのお陰で、シリウス省長も変わりましたね」
シリウスさんが変わった?
あたしは、あたしと会う前のシリウスさんを知らないから、シリウスさんがどう変わったのか、わからない。
そう思うと、少し胸が痛かった。
なんでだろう?
「さて。アンフィには勉強のために、帳面とペンを持って来ました。これでお勉強しましょう」
「はい」
あたしは机の椅子に座る。
アルビレオさんは近くの椅子を持ってきて、机の横に座った。
机の上にはノートとペン。
ペンは万年筆だ。
「まずは、アンフィにはどれ位の事が出来るのか、知っているのか、ということを見極めましょう」
「はい」
「帳面に、五十音全て書いてみてください」
おおう。いきなりですか。
とりあえず、ノートを開いてペンを持つ。
五十音って………そういえば文字は読めたけど、書けるかな?
書こうと思ったら、ぎこちないけど手が文字を書き始めた。
わぉ。あたしのこの体が覚えてるのかな?
五十音書いて、あたしはアルビレオさんを見る。
アルビレオさんは頷いて、何か紙に書いた。
「次は数字を」
数字ですか。
見たことないけど、やっぱり書けちゃうのね。
またアルビレオさんは紙に書く。
「次は単語を。わたしが言った言葉を書いてください」
幾つかの単語をアルビレオさんが言うので、ノートに書いていく。
この世界の文字は、日本語のように五十音を表す文字があるけど、単語として使う時は、くっついた文字に変形する。
そして文章になると、それこそミミズが踊る様な文字になる。
日本語に慣れたあたしには、すごく使いづらい。
でも、何故か体は覚えてるのよねー。
アルビレオさんは頷いて、また紙に書く。
あれは、採点表のようなものかしら?
アルビレオさんは少し考える様に首を傾げる。
「アンフィは、どうやら読み書きは出来るようですね。……普通、アンフィくらいの年の子は、読み書きを始める頃なので、ここまで出来ないのですが……」
あ、そうだった。
あたしの外見は丁度小学生低学年くらいだから、五十音の書き取りから始めて、九九とか習う頃かしら?
「余程しっかりした教育を受けていた、ということですかね?」
さぁ?どうですかね?
あたしは、自分のこの体さえよくわからないのに。
どうして、福田杏莉がアンフィという女の子の中に存在しているのか。
あたしが首を傾げると、アルビレオさんが苦笑した。
「済みません。アンフィ自身が一番それを知りたいですよね?失った記憶なのですから」
アルビレオさんはあたしの頭を撫でた。
大丈夫ですよ。
あたしはそれほど焦ってたりはしません。
衣食住が安定していれば、それでいいので。
「さて、それではアンフィにはこの世界について学んでもらいましょう」
アルビレオさんは、大きな紙を机の上に広げた。
それは、地図だった。
「大陸は五つあります。大陸の周囲は海です。それぞれの大陸には、幾つもの国があります」
地図には東西南北中央と五つの大陸が描かれている。
「中央大陸シャンバラ。東方大陸ホウライ。南方大陸アルカディア。西方大陸ヘスペリス。北方大陸ティル・ナ・ノグ」
アルビレオさんが指差しながら言う。
「我々がいるのが、北方大陸ティル・ナ・ノグの、エトナ国です」
北にある大陸の、南端をアルビレオさんは指す。
エトナ国は南端にあって、海に面してるんですね。
そこでもう一枚紙を広げる。
「これは、エトナ国の地図です」
ほぅほぅ。
南は海、東は山脈、北と西は別の国があるのね。
「王都アルフ・ユニは、やや南寄りのここです。アンフィが保護されたツヴァイ村は、王都の東にあります」
あ、東に行くと山ですね。
そっか。あの森は、山麓の森だったのか。
つーか、村の方向に出られて良かった。
反対方向に行ってたら、山の中を彷徨うところだったのね。
アルビレオさんも考える様に地図を見る。
しかし、小さく首を振った。
「まあ、今自分が居る場所がわかれば、充分ですね」
そう言って地図を片付ける。
「では、暦についてお勉強しましょうか」
「はい」
あたしは、机の上のカレンダーを手に取る。
月別になっていて、ひと月毎にめくる、元の世界の卓上カレンダーと同じだ。
「今日は、新緑月の五日です」
アルビレオさんがそう言って、カレンダーを最初のページにする。
「ひと月は二十日で、一年は十八ヵ月です。年の初めは、芽吹月です。そこから、葉開月、新緑月、花咲月、色煌月、花散月、初暑月、陽照月、灼陽月、果生月、収穫月、紅葉月、落葉月、初寒月、雪舞月、雪積月、地温月、雪溶月。雪溶月が一年の最後です」
ふむふむ。大体、名が表すような季節ですね。
「今は春ですので、これから夏になっていくんですね」
しかし、あたしの目は果生月に釘付けです。
果物が生る月。うふふ。食べ放題ですね。
おっと、ヨダレが。
「アンフィ?」
「はい?」
「もしかして、お腹が空きましたか?」
アルビレオさんが笑ってる。
やばい。マジでヨダレが出そうだったか。
「いえ。大丈夫です」
「まあ、あと少しで正午ですし。食堂に行きましょうか」
アルビレオさんは地図や紙類を薄いファイルのようなものに入れる。
「わたしの授業は、今日は午前中だけですよ。午後はシェアト省長が魔法についての授業をしてくださいますので」
「はい。ありがとうございました」
あたしはお昼ご飯を食べに行くために、アルビレオさんに抱っこされました。
うん。
あたしの足は遅いしね。
マジ、早く大きくならないかなぁ。
読んで頂き、ありがとうございました。
大陸の名前は、いろいろな神話の楽園といわれる場所の名前からつけました。
次回は、魔法の説明と、ちょっと(?)事件(?)を起こします。