7話、何が起こったんだ?
7話
俺は父上が帰還した時から少し経ち俺が生まれてからすでに一年が経過している。
ちなみに二人兄が両親のことを「父上」「母上」と呼んでいたので採用することにした。
あれから俺は父上に「おかえり」をプレゼントしたことでもっと言葉を覚えるんじゃないかとネリアさんが屋敷を連れ回っていろんなところを見せてくれるようになった。「おかえり」は誰からも教わっておらず俺が自分で身に着けた言葉だから部屋の外に出ればまた新しい言葉を自分で覚えるんじゃないかと両親の指令で俺に周囲を学ぶ環境を作ってくれた。
だから俺は屋敷の概要を知ることができた。
本館には俺たち一家の個人部屋に子供たちそれぞれの寝室と両親の寝室、大広間、客室、資料室、父上の執務室、台所、湯浴み場、そのほかは空き部屋だがその数は少なく貴族の屋敷にしては質素なのだそうだ。
父上は執務室で貴族として仕事をしているらしい。母上も自分の部屋で過ごしたり、バルコニーでお茶をしたりして優雅に過ごしているらしい。
二人の兄上、特にアルバート兄さんはほとんどの時間を教養を学ぶことに費やしているらしい。
貴族の
俺の前世の家は確実にここまで大きくなかったはずだが異世界の富裕層という差に加え俺の記憶はおぼろげなので比較にはならないだろう。
そして本館の外には屋敷の大きさにちょうどいいサイズの庭と裏手に使用人が住む館がある。
使用人の館には貴族で雇い主である俺が入るとなると使用人たちも気を使うだろうし、ネリアさんも入れてはくれなかった。
屋敷の庭ではレオンにいさんがよく木剣を振っている。彼は父の武勇に憧れて時間ができると鍛錬をしているのだ。たまにアルバート兄さんも一緒になって木剣を振っているらしい。俺も大きくなったらここで運動しよう。
もちろんネリアさんが俺のことを連れまわしてくれている目的である言葉の習得も順調だが、あまり一気に話してしまうと赤ん坊といして怪しいこともあるのか、管理者からの便宜である言語能力の付与がストッパーになっており意味のある言葉を羅列して文章を作ろうとは思えない。
おそらく変に気味悪がられないラインを俺の言語能力が見極めているのではないかと思う。
それだと言葉の習得を自分で率先してやらなくてもいいのではとも考えたが俺は貴族の経験は消えた前世の記憶にもない。
(さすがに日本人であることぐらいは覚えている。おそらく消しても残った記憶から日本人であることは推理できてしまうからだろうな)
だからこちらでもある程度知識を蓄積しておく必要があると考えたからだ。
そしてそんなことを考えながらいつものようにネリアさんに俺が前世ではめにしたことのない現象に遭遇した。
それは俺がネリアさんにいつもどうり
「ねりあ」
というだけで俺が屋敷を見て回りたいのを理解しネリアさんが俺を連れだして庭に出た時だ。
カンッカンッと乾いた音が庭に響いていた。
どうやらアルバート兄さんとレオン兄さんが木剣で試合をしているらしい。
「やあぁ!」
と高い声の掛け声に乗せレオン兄さんは少しの助走から木剣を右上から左下にふるう。
それをいつもより真剣みを帯びた表情のアルバート兄さんが横に避けて
「ハッ!」とレオン兄さんより短い気迫で木剣を繰り出す。
これをレオン兄さんは木剣で受けながらも体重移動のし易いほうに下がる。
そういったアルバート兄さんが終始優勢に防御からカウンターを狙う形をとり、レオン兄さんは果敢に攻めるといった構図の試合は続く、まぁ二人の間に5年ほどの年の差があるからアルバート兄さんが負けることはないだろう。
だが急にこれまで攻め続けたレオン兄さんは動きを止め剣を構えたまま深呼吸を始める。アルバート兄さんも息を整えて集中力を増してく、ややあってレオン兄さんがまたアルバート兄さんに向かって動き出したがその速さがさっきよりも早く赤ん坊の俺の動体視力では視界から視界から時々外れてしまうほどだ。
そしてアルバート兄さんは一瞬ぶれた後少し体をずらした位置で木剣を取り落としたレオン兄さんに剣を突き付けていた。
まさか赤ん坊の動体視力の低さで自分がヤ〇チャ視点を経験するとは思わなかったぜ・・・。
そんなことよりも
「ねりあ」
「ジーク様、あれは魔力を使った身体強化という技術ですよ。体内の魔力を循環させることで身体の早さや強さを上げる技です」
ネリアさんは俺がアルバート兄さんたちの動きについて知りたいと悟って子供にもわかりやすいよう、できるだけ簡単な言葉で説明してくれた。
この身体強化で上がったスピードで許容値を超えて俺は目で追えなくなったのか。
すごいなこの身体強化これを覚えればひとりで長い時間歩くことができるんじゃないか?
俺は身体強化を身に着けることに決めた。