3話、扉の先
3話
原点に突如として現れた扉は、木材でできたシックなものだった。たった一枚だけポツンとそこに存在し表からも裏からも触れることができた。国民的マンガに出てくるどこにでも行けるドアを彷彿とさせるたたずまいである。そして、そのドア同様にこの扉も座標転移できる可能性は非常に高いだろうと俺は考えている。そして、この扉の先はこの空間から出れる可能性が高いと思う。空間内では座標転移できたが空間外への転移はできなかったことも挙げられる。まぁそのあたりは俺が楽しかったのでいいとしよう。
というわけで俺がこの扉を開けることに戸惑いがある理由がないのです。
俺はドアノブをつかむとすぐにひねり扉を押し開けた。
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扉を開けるとそこには白い神官服を着たおじいさんが質のいい机に向かって座りこちらを見ていた。俺の日常の最後の記憶のうちにある。孫のためにレポートを作るおじいさんが、である。
「おじいさんは僕がここにきた原因、またはここに連れてきた人物でしょうか?」
警戒しながらも敬語で問いかける。
「うむ、わしはここにお主がきた原因ではないが、わしがここに連れてきたといえるじゃろう」
やはりそうか、このおじいさんはここに来てから何か異様だ。俺を不思議な空間に連れてくるだけの力があるようなオーラのようなものが感じるからだ。今まで20年間生きてきてここまでコイツはできると確信のもてたことがなかったため比較対象はいないが目の前の人物から確かに感じる。しかし、俺は図書館であったときこのおじいさんから今のような力を感じなかった。巧妙に隠されていたのだろうか。
「あぁ、この姿はおぬしがここに来る前に最後に言葉を交わした、おぬし個人を詳しく知らぬもの、おぬしの情報がわかりにくいものという条件のもとに選ばれた姿かたちをとっておるから。おぬしの記憶の中の爺とは中身が違う。」
なるほど、そういえば家族や友達が思い出せないのに、ここに来る直前の記憶にあるおじいさんのことは普通に思い出せたのはそういった条件に引っかからなかったからなのか。おじいさんとは課題に役立ちそうな話とテニスのルールしか話してないといえるしな。それについてはわかったがまだ疑問はつきない。
「そうですか、ではお聞きしますがなぜ僕はこんなことに?」
そう一番の謎でありこの出来事の理由それがわからない。
「ふむ、まずおぬしは自分が死んだことについては覚えていないじゃろう?」
・・・今信じがたいことを言われたぞ?俺がもう死んでいるだと・・・俺の今の体には異常がないので余計に信じられない。
「死因はブレーキが壊れた自動車が君が通っていた急な坂を暴走しておぬしを引いたことで即死だ。全身の骨がほとんど折れてその骨が内臓に刺さるなどもしておるが頭を強く打ったときに即死だから関係がないじゃろう」
あの長く急な斜面をブレーキなしで駆け下りたのか・・・その巨大なエネルギーを俺は受けたのかそれは死ぬな。いやっそうではなくてなぜこの目の前の存在はそんなことを知っている?もしかしてこの人は神だとかそういう存在なのではないか?
「そしておぬしを引いたあとその先にある大通りにて大事故を引き起こした」
俺以外にも多くの人が被害にあっているようだ。本当に他人を巻き込んで迷惑な自動車である。
「そこで29名ほど死んで君を合わせると30名が死んだことになる。ここまでがおぬしがここに来る原因じゃの」
一度の事故にしてはかなりが被害にあったといえるのか?
「そしてここからが本題なのじゃがこの30人の魂は輪廻から一度隔離特殊な空間にしばらく置いて前世の個人的な情報をある程度消去したあと異世界に送ることになったのじゃよ。事故の少し前に異世界の管理者からこちらの質のいい魂を器として異世界に少なくなった魔力を回復させるようじゃ。」
やはり神的な存在世界の管理者なのか目の前の存在は。そして特殊な空間というのが俺が放り込まれていた完全な白の空間のことだろう。なぜ異世界には魔力があり、それが少なくなったのかは知らないがそれが異世界では必要な要素の一つなのだろう。
「異世界の魔力が減少したのは異世界の理とは違った魔力を喰らう者が現れて魔力や異世界の理を荒らしたからなのじゃ。その化け物は異世界の管理者等が直々に出向いて討伐したそうじゃ」
まじか目の前のような存在が動くような存在がでる世界に転生させられるのか・・・。大丈夫なのか?
「まぁおぬしは特に気にするような問題もない。おぬしは特殊な空間での処理に時間がかかったから一番最後30人目の転生者じゃから問題の解決もだいぶ進んでいるはずじゃ。」
それはよかった。いちいち質問せずに目の前の存在から疑問となることは質問するまえに解決したから聞くこともないだろう。
「では、転生後の異世界についてさらに詳しいことはあちらの管理人に聞くといい」
えっまだ転生しないの?