突然の来客2
「さて坊っちゃん、お着替えを致しましょう。レディを長らくお待たせするのは失礼にあたりますからね。」
カーソンはベットの上でまだ布団を抱えているウィリアムに向かって言った。
ウィリアムはじっとりとした目でカーソンを睨む。
「いつから僕の寝室は万人の出入りが自由になったんだ?
カーソン、お前の屋敷の警備が甘いんじゃないのか?」
カーソンは小さくため息をつく。
「その様子で怒られても怖くないんですけどねぇ……。」
「なんだと!?」
カーソンはウィリアムの傍らに膝をついて座った。
「だって、あなたの手は震えているじゃないですか。」
ウィリアムの布団を握りしめたままの手は小刻みに震えていた。よく見ると手だけではなく体全体が小さく震えている。
「違うんだ……。これは……」
震えているウィリアムの顔をカーソンの両手が優しく包み込む。
「坊っちゃん、私の顔を見て下さい。」
ウィリアムは言われるがままにカーソンの顔を見た。カーソンの濡れた様な真っ黒の瞳がウィリアムを見つめていた。
「さあ坊っちゃん、しっかりしなさい!」
「ぎゃん!?」
カーソンの両手がウィリアムの頬を強く叩いた。皮膚の炎症反応のせいでウィリアムの顔が真っ赤になる。
「何をするんだカーソン!!」
「目が覚めたでしょう?」
カーソンはウィリアムに向かって微笑んだ。
「弱気な坊っちゃんは嫌いではないですが、坊っちゃんにはウィリアム伯爵としてのお役目を全うして頂かねばなりませんからね。」
ウィリアムは、はっと声を出して笑った。
「僕がいつ弱気になった?勘違いするのもほどほどにしろ。今朝は少し肌寒かったから筋肉が収縮していただけだ。」
ウィリアムは布団から出てカーソンに命令する。
「早く服を持ってこい。主人の体を長らく冷気にさらすつもりか?」
カーソンは口の端で笑った。
「かしこまりました。只今、洋服を持ってきます。」
カーソンは深く礼をしてクローゼットから服を探す。
ウィリアムは叩かれた頬を撫でながら思った。
ああやっていつも師匠は僕を甘やかす。厳しいふりして。だから僕はいつまでも師匠に頼ってしまう。いつか失うときが来ることを恐怖に感じてしまうほどに。
そして今はシュガーが来ている。あいつが来たときは大抵ろくな事がない。
ウィリアムは自分の髪を撫でた。師匠が好きな黒髪ではなく、日の光に映える金髪だった。
それが何だか不安を増長させた。