ウィリアムの秘密3
夜も更けて、ウィリアムの住む屋敷も灯りがほとんど消えている。
ウィリアムも独り、寝室で小さな寝息をたてていた。寝室を照らすのはわずかな月明かりのみなのだが、その月明かりも雲に隠れてほとんど真っ暗闇である。
カーソンはウィリアムの寝室に静かに入った。左手に蝋燭を持ち部屋を照らし、右手には懐中時計を持っている。
「そろそろお時間なのですが、今日の坊っちゃんは本当にお寝坊ですねえ。」
カーソンは蝋燭を寝室の隅のテーブルに置き、ウィリアムの布団を剥いだ。
「ひぁん、何だ?何が起こった!?」
ウィリアムは暗がりの中混乱し、手探りで布団を探した。その様子をみてカーソンは眉間に皺を寄せる。
「何だじゃないでしょう。この時間は一人で起きて下さいと何度言えばわかるんですか?」
カーソンの声を聞いて、ウィリアムは冷静になった。
「何だ。カーソンか……。」
「何ですか?その口の聞き方は?」
カーソンはウィリアムの頬をぐいっと掴む。本来の主従関係では絶対にありえない行為だ。
そのとき、雲に隠れていた月が夜空を照らし、ウィリアムの寝室の中にも光が入り、辺りが見えるようになった。
ウィリアムの金髪と青い瞳は、黒く変色している。カーソンと同じ黒髪と黒い瞳だ。
ウィリアムのその変化を見て、カーソンは楽しそうに笑う。
「夜は私はあなたの執事ではありませんよ?あなたの命令など聞きませんし、あなたを守る義務もございません。」
ウィリアムはカタカタと小さく震えだした。
「ごめんなさい。許して下さい。」
「もっと他に言うことがあるでしょう?」
「他に……?」
「そう。私はあなたにとってどういう存在か、それをわきまえた上でもう一度謝りなさい。」
ウィリアムは目を閉じて深呼吸をした。そしてカーソンに向かって口を開いた。