真田達也
俺の名前は真田達也。
18歳の高校3年生。
山の中にある道場に、1人で暮らしている。
道場と言っても、ここに武術を習いに来る人はいない。
そもそも、こんなところに道場があるなんてほとんど知られていないのでは無いだろうか。
高校へは、鍛錬も兼ねて走って行っている。
行きはおよそ1時間、帰りは登りなのでもう少しかかる。
距離を測ったことは無いが、幼馴染みが1度この道場まで来た時、「この距離を毎日走って来てるなんて信じられない・・・・・・」と言っていたので、それなりにあるのだろう。
俺がこの道場に来たのは5歳の頃。
とある事件で、家族を失くし1人だけになった俺を父方の祖父に引き取られた。
鍛錬はそのころから始めた。
元々それなりに裕福な家庭だったこともあり、両親の遺産で学費は賄えた。
道場での生活は、ほとんど自給自足で、生きていく術を多く身につけた。
寡黙な祖父はその性格からか、教えてくれることは正直少なかった。
生活に関することは、主に掃除・洗濯・料理。
これらは、祖父の見よう見まねである程度までやり方を覚えると、後は回数をこなすうちに慣れていった。
問題は武術であった。
6歳になると、突然祖父に木刀を手渡され、素振りの仕方だけ教えられた。
当時の俺が木刀を満足に扱えるわけもなく、持ち上げることもままならなかった。
それでも強くなりたかった俺は、ひたすら木刀を振り回した。
木刀が十分に扱えるようになると、今度は刀を渡され、山の猪や熊を狩るように言われた。
この時も、ほとんど助言は無く、真剣など握ったことのない素人の振るう剣は危なっかしく、自分を傷つけたことや、死にかけたことは何度もあった。
それでも、幼い頃に家族を亡くした俺にとって、祖父は大切な存在であり、祖父からも愛されていることは何となく感じていた。
祖父は愛情表現が苦手で、最初は俺との接し方に悩んでいたようだったし、俺が成長してからも会話は少なかった。
もともとそういう性格の人なのだろう。
それでも、俺は祖父の不器用な優しさが好きだったし、道場での暮らしにも不満は無かった。
そんな祖父も、俺が中学3年生の時に亡くなった。
寿命ではない。
俺がこの手で殺した。