さあ、旅立ちだっ!2
「ママ、おはようー!朝だよ。起きてーお・き・てっ!」
「がうっ、がうがうー!くおーん?」
「う…ん?ふあっつ!?」
一瞬で目が覚めた。
目の前に、息子の顔とドでかい元ヌイグルミが、ドアップだった。
マジで心臓に悪い。
そういえば、いきなり大人になったんだっけな。
大人に…というわりにちょっと女顔な童顔が、母性本能をくすぐる。
いい!実にいい!アリだ!ふふふ♪ニヤニヤしてしまう。
『こやつダメ女じゃろ?早く起きんかいっ!』
「うるさいわジジイ!冷蔵庫に言われたく無いし。ムカつくわ!」
「ママ、お腹すいた!美味しいゴハン作って?」
「は~い♪」
愛しい息子のために、とびきり美味い飯作ってやるわっ!
『・・・なんじゃこの親子。上目遣いのニコポ息子と、親ばか過ぎる腹黒母。誰得?』
「うらジジイ!とっとと食材出さんかいっ!」
『マジでこの女ヒドイんじゃが……くすん』
とりあえずその前に、洗面器と水出してもらって、顔を洗う。タオルで顔をフキつつ、メニューを考える。
今朝はパンがいいかな?息子の好きなシュガー・トーストと、スクランブルエッグ、カリカリベーコン、ポテトサラダにフルーツ各種、牛乳。こんなもんかな?
うん、異世界感全く無いメニューだな。とっとと作るか…。
「がうっ!がうっ!がうっ!」
「ん?何?シルも食べたいの?」
「がうっ♪」
「ママ~っ!シルもゴハン食べるって♪」
「え゛っ!?な、何?食べられるん?元ヌイグルミの食べられるもんってなんだ?ねぇ、ジジイ…何食べるんだろかね?コイツ」
『ワシにも分かるワケがなかろう?とりあえず、お主の以心伝心でなんとかなるじゃろ?以心伝心は血縁関係あるなら、意識しなくても使えるが…友好関係になれば、触れば大丈夫なはずじゃよ?うむ』
「冷蔵庫と血縁関係…ヌイグルミと友好関係ってすげ~妖しいし、オタク臭いね…まあとりあえずタッチで」
『シル』こと元ヌイグルミにタッチした。
「うおう♪手触りすんげ~モッフモッフぅ~っ!!た、たまらんのたまらんのっ!くううっ!!なでなでなでなでー!でへへへげへげへジュルリ♪」
「ま、ママ?」
「がう?クオ~ン…(ビクビク)」
『こりゃ無いのう…ドン引きじゃよ?ドン引きじゃよ?』
「はっ!い、いかん…くっ!さすが元高級ヌイグルミ。侮れん手触りだ!モッフモッフに油断したわ~ハアハア」
汗とヨダレをタオルで拭って、弛んだ顔を引き締め、仕切り直す。
くっ!みんなの視線が痛い。
友好関係大丈夫だろうか?かなりひかれてるし。
「コホン。まあとりあえず…シルお前ってば、何食べられる?」
『がうっ!?ぼ、僕のご主人様のお母さん?あ、妖しい人なの??僕の事食べない?(ビクビク)』
「あ~さっきは正直済まんかった。シルがあまりにも手触り良いから…。絶対にシルは食べないよ。大丈夫。ライ君の大切にしている友熊は、私にとっても大切な友熊だ!」
『がうっ!わ…わかったっ!コレからヨロシクね!じゃあねじゃあね、ぼ、僕ね、お肉食べたいっ!』
「あ~、うんわかった。肉ね…生かい?わかった」
確認して手を離す。
見た目に反して草食とか…ありかと思ったら、無しだったよ。肉ね…。
「あ~何か、生肉が食べたいんだってさ。ジジイ生肉の塊ある?」
『生肉かの?有るにはあるが・・・超デカイぞ?良いか?』
「食べる分だけ切るから大丈夫だろ。シートの上に出してくれる?あと切れる刃物ね。」
『あいわかった!』
「ドッスーンッ!!」
と、地響きをたてて出てきた塊は、想定外に超巨大な猪みたいな奴だった。丸々太っていて、足は短い。
全長5~6メートルはある。胴回りは4メートル越えているように見える。
もしや定番のモンスターってヤツかしら?
『ただの猪じゃよ?』
「うわマジか?」
『マジでじゃよ?ただ、世界一デカイ種類でなぁ。大人になると、10メートルは越えるかのぅ』
「まるで恐竜?異世界半端ないなっ!!」
『脂がのっていて美味いのじゃが、デカイから捌くの面倒での~。そのままインベントリに入れておったのじゃ。』
「ジジイ面倒くさがりかよっ!血抜きくらいしろよ!」
『まあ、お主なら大丈夫じゃろ?毛皮も売れば、良い金になるぞ?』
「よし、やるぞ~♪」
『お主、ちょろいのう…』
まず、血抜きして、腹から開いて、内臓を取り出す。中をキレイにしたら、毛皮を剥ぐ筈だけど、スッゴい大変だよね。私がすっぽり入れてしまう大きさのなんて、捌くの初めてだしな。たしかに面倒だな。魔法でなんとかなるか?
『なるぞ♪魔法はイメージじゃよ?詠唱はイメージにしやすいから、皆唱えるがの。要はきちんとイメージすれば、詠唱は必要ないのじゃ!』
「ジジイ!ソレ早く言えよ!」
ソレなら刃物必要ないんじゃね?
んじゃいっちょガンガンやるべし!
イメージイメージ
「・・・出来ちゃった。こんな簡単で良いんか!?納得いかん!」
結果、なんと3分くらいで捌けた。
血抜きも流れる様をイメージしたら《念動力》覚えた。
血でそこらへん汚れるの嫌だから、氷イメージして血を凍らせたら《氷の覇者》を
皮剥ぐのは、皮と肉の間に、空間意識して薄い膜を作ってみたら、あっと言う間に《空間の覇者》手に入れたんだよね。
血と内臓は、土魔法で埋めたら《土の覇者》手に入れたし。
風の魔法で肉捌いていっちょ上がり!スッゴい切れるな風の刃。魔法は全て、ゲームエフェクトイメージしたらチョロかった。ゲームすげ~。
はあ。チートドン引きだょ。あっけなさ過ぎで嫌だ!
「ライ君、シル連れて来て~。お肉と、朝食用意出来たよ。猪ステーキも作ってあるから、みんなで試食しよ~♪」
「やった!お腹ペコペコ!」
正直かなりの絶品でした。肉は柔らかいし、脂はとろけて甘いし、臭みが無く、旨味が強い。
ライ君大絶賛でした。ああ、マジうまかった!
シルは生肉のが旨いらしいけど、ドチラも大量に食べてた。ポテトサラダも食べてたから、雑食かもしれない?
インベントリ=ジジイに、肉を焼いて皿に並べて大量に投入。
入れた時のまま、時間経たない腐らない温かいって、超便利だよなあ~インベントリ。ジジイ冷蔵庫なのに、不思議だ(笑)
焼きたてアッチッチなステーキが、旅先でいつでも食べられるもん♪
だから、かなり多く作り置きしとく。水や保存食は、はぐれた時や万が一を考え、各自リュックに持つ。
いよいよ装備を着けて、出発だ!
「そういえば!私が着けてるこの装備、絶っ対にジジイの趣味だろ?」
『いや、連れ合いのじゃ。お主の、ひいひい婆さんじゃよ?』
「げふっ!?え?婆さんもこっち側の世界の人??エロい装備だから、ジジイの趣味かと思ったら…まさか逆だとは?」
『ワシエロちゃうよ??グレてやるんじゃよ…』
まるっと無視して
「いざ出発~っ!」
「お~!」
あの猪といい、魔法といい。ライ君といい。
どんな世界か、歳も忘れて(嘘)スッゴい楽しみになって来た!
こうなったら帰るまて、とことん楽しんでやるわ!ヤってやる。
ウフフ♪
『ヤってやるが違う意味じゃよ?「殺ってやる」って、伝わって来るんじゃが?ガクブルガクブル・・・な、なんて怖い子孫じゃ!!逃げて良いかのぅ??逃げて良いかのぅ?』
「ダメに決まってんでしょ?」
器用に震える冷蔵庫を引きずって、出発だ!!