チートでよろしく
「ママ~っ!虫がいっぱいいる~!虫が追いかけて来るよ~っ!?」
遊んでいたはずのライ君の後ろには、群がる虫・虫・虫・・・うげぇスゴイ数。
「追いかけて来るの~っ!ママどうしようっ!」
「いつもみたいに『ぺんっ!』しなさい『ぺんっ!』」
「うん。わかった!」
剣を手にしたライ君は、後ろに迫り来る虫どもに向き直ると、剣を高く掲げヒーローごっこのポーズをきめた。
「ウイニング・ウィングソード!!炸裂っ走破微塵剣!とおっ!」
ライ君、中二病炸裂である。肉体年齢は今いくつなんだろうな…?
とか余計な事を考えつつ、私も転がっていた杖を素早く手に取り、振り返るとライ君は、虫どもの微塵切りの死骸を見て唖然としていた。
おびただしい虫どもの死骸の山。しかも、お食事中の方々には、決して見せられない素敵映像である。うわぁエグいしグロい・・・
一瞬の事である。
「ヤバイ異世界ぱないの。チート来たの…」
頭髪が白くなりそうだ。
「カッコイイー!すっごーい!スゴイよ!ねぇねぇ、ママ見て見て!虫居なくなったよ!!」
興奮して、キラキラの瞳、紅色ほっぺ・・・くうっ!デカイくせにカワイスギル!
「うん、うん、うん、そうだね。ライ君、最強だね。良くやったね!(なでなで)」
親ばか丸出しであるが、それが何故か誇らしい。
何故か冷蔵庫から、胸を張っているような、誇らしいような空気が漂って来るが…ありえんから、絶対無視!
その時頭の中に、レベルアップのファンファーレが鳴り響いた。
しかも、無駄にハデ。うわぁテンプレですか。テンプレですね。
『恵は以心伝心を覚えた』
『来人は走破微塵剣を覚えた』
『冷蔵庫はレイモンドにレベルアップした』
「ぜんっぜんまったく意味わからんしっ!!!!!レイモンドってなんだよっ!」
『わしゃあ、レイモンドと申す。よしなにのぅ。』
「うおわっ!頭ん中から声がするっ!?いや、ありえん!見えない聞こえない言わない知らないっ!!!」
『今しがた以心伝心を覚えたであろう…。我が子孫ともあろうものが、何ゆえこうも頭が堅いのか…。まったくもって嘆かわしい』
「はい・・・?」
聞き捨てならない事を言われたような…?
耳…じゃなく、頭おかしくなったかな?冷蔵庫の子孫言われた気がしたわ。
人間捨てたつもりは無かったが、機械の子孫ってありえませんね。見事な嘘ありがとうございます。
『嘘など吐くわけなかろうがっ!わしゃあ、カナタ・レイモンドと申す。お主のひいひい祖父さんにあたるかのぅ。死後、子孫を見守っていたのだが今回ソナタ達の危険を回避させようと力を奮っての…。
いやはやまさか、空間が歪んで冷蔵庫に憑依するなぞ思ってもみんかったがのぅ……聞いておるのか?』
まさかの御先祖様で。まさか異世界入りした原因で。まさかまさかの命の恩人でした。本当にありがとうございます。お腹いっぱいです。頭はち切れソウデスネ。情報を処理しきれません。エラーが発生したので、初期化したいと思います。私のスイッチはどこでせうか・・・?
寝ればいいのか?
私は草の上にバスタオルを敷いて、ゴロンと横になった。
「ママお昼寝?僕も一緒にする~♪えいっ!スリスリ~っ!ママいい匂い~」
ライ君、君ってば大人の体になっちゃってるんだから、添い寝は絵面的にちょっとエッチぃの(大汗)
ダメだって意味…まだ、わかんないよねぇ。
まあ、うん、いいや。おやすみ。ライ君。
『お~い。こんなところで寝ると、虫に喰われるぞ。』
「なんでだろうね。まったく字のニュアンスが違う気がする…」
『実際、虫に骨も残さずバリバリ喰われるって意味じゃしな』
「ぷちん。うふ、うふふふ♪親子のイチャイチャ…もとい、団らんを邪魔するものは断じて許すまじ!故に成敗いたすっ!」
私は手に杖を持ち、勢いよく立ち上がった。
「来たれ炎!来たれ風よ!我敵に怒りの鉄槌を与えよ!炎獄翔風波っ!」
『ば、馬鹿者っ!落ち着けっ!』
慌てる冷蔵庫の制止を振り切り、杖を振り上げると
次の瞬間、激しく吹き荒れる風が暗黒色の炎を煽り、草原一面を舐め尽くす。
そして、辺り一面黒い灰塵と変わった。




