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胡散臭さ爆発

「ママしっかりして!ママ?起きて!」

耳に優しいキレイな良い声がする…誰?

「・・・んん?」

目を開けると、そこには覗き込む心細そうな顔。と、キレイな青い空。

ああ…どこか私に似た平凡な日本人顔。鼻は高すぎず低過ぎず。唇は少しふっくらしている。どちらかと言うと童顔の部類だろうか?

目元は旦那に似て少しタレ目、明るいキレイな琥珀色の瞳は光に当たると金色に見える。クッキリとした二重瞼。

ああ…先祖代々遺伝のこの瞳の色。間違い無い。息子である。可愛くて、毎日飽きること無く見てたもんなぁ…。

かわいいかわいい盛りの息子がいきなりでっかい男になったというショックで、気を失なってしまったようだ。我ながらそっちかよ!とツッコミを入れたくなるが仕方あるまい。母の愛は深いのだ。うん。


「はぁ…」思わずため息が出る。

地面に寝転がっているため、顔にかかる草が鬱陶しい。青臭い草の匂いに、冷たい地面の土臭さ。ゴツゴツした小石で背中が痛い。

ああ…死んでなかった。痛いし、まさにコレは現実のようだ。心臓がドキドキと速く脈をうつ。

「しっかりしなければなるまい。しっかりしなければなるまい。しっかりしなければなるまい……」

念仏のようにブツブツと自分に言い聞かせる。

回りの事など失念していたが、怪しさてんこ盛りである。

「ママ?大丈夫?」いきなり念仏のようにブツブツと唱えだした私に心配になったようだ…『ホントしっかりしなければなるまい』

と、苦笑しながらゆっくりと上半身を起こす。

「うん。うん。全然大丈夫だよ。いきなり大きくなっても、相変わらずライ君はいい子だねぇ。ヨシヨシ」


思わず頭を撫でた息子の名前は秋津来人『あきつらいと』

私の名前は秋津恵『あきつめぐみ』旧姓彼方恵『かなためぐみ』である。

なんでも先祖が、はるか彼方から来たよ~ってつけた名前らしい。ホントかよ!って胡散臭い家系図で調べたら、ひいひい祖父さんが外国人だったらしい。ホントマジで胡散臭い。ともかく、現実的に回りの事など把握して、対策を練る事にしようと、ドッコラショっと立ち上がると…あら体が軽い??

ふと見ると、脂肪のついていたはずの腹回りがキュッとしてヘソが見えていた。


「へ?あれ?ヘソ?」

一般で言うと、折り返し地点に差しかかった妙齢(笑)の女性である私は、少々太ってしまいダイエット中だった。

いきなり痩せるなんてありえねぇ!ラッキーとか思いつつ…ちょっと混乱。腹をツマンで叩いて擦って確かめる。

ヨッシャー!脂肪無し。うやったっあ!嬉しいな~

とか思いつつ、震える手には汗。ビンビンに感じる違和感に、体を確かめる。

はて…?

節くれてゴツゴツしていたはずの手には皺も無く、シミや傷が無くなり、割れていたはずの爪は艶を放ちピカピカしている。

肘まて着けていた段ボールの特製籠手は、金属製の籠手に変わっていた。衝撃を逃がすためか、私にはわからない謎の素材が巻いてあるように見える…。

息子と遊んで焼けてた肌は、何故かキレイな白に戻り、ハリが戻っていた。

胸には何故か丈夫そうな茶色い皮の胸当てを付け、加齢で下がりだしていたはずの胸肉は、キュッと上を向いて、ボンボンとした山になっている。 着ていたはずの服は無く、ヘソがまるっとでていた。

履いていたはずの洗い晒しのジーンズは、渋茶色のホットパンツらしき物へ変わり、合成皮のブーツはしっかりした造りの茶色の編み上げブーツに変わり…


訳わかんね~誰?誰の趣味なん?思わず頭を抱えると、サラサラとした黒い長い髪に手が触れた。


「ひいいっ!髪の毛伸びてるぅー!?うわキモッ!」


思わず叫んでしまった私は悪くないと思う。

なんか昔読んだ異世界物みたいだなぁ~とか、今更ながら思ったり………うん。

まさに今更ながら感が半端ない。

マジですか?勘弁してください。

四十にもなって…異世界ってお断りしたいです。

平凡な日常が一番です。か、帰れるかな?帰れるよね?

「ふ…ふふふふふ…だ、大丈夫大丈夫」

自分に言い聞かせ、震える足にカツをいれ

体に付いた泥をぱっぱっと払い、更に回りを確認すると野原にあるのが、とてつもなく不自然な

白く大きな冷蔵庫。

間違い無い。家の冷蔵庫…だ。息子が扉にシールをベタベタ貼ったのが、まんまある。


なぜあるし


驚く事ばかりで、頭が全く働かない。現実逃避したい。


「ママ、喉渇いた。なんか飲みたい!」「へ?」

突然の息子の言葉に、我にかえる。


確かに夏の暑い日にガンガン遊んでいたから、喉渇いてカラカラだ。このままだと餓死の前に干からびる。ゾッとする。

まず、落ち着いて水の確保だな。


けど、回りは見渡す限り、高原のような草原。起伏はあれど、川も湖も沼さえ見え無い。水たまりすら無い。


どうしたらいいの? どっちに行けば、川がある?

見える範囲に、人が居るようには見えず、村や町すら無いように見える。全く土地勘ないし、方向すら全くわからない。


「は~。どうしたもんか…」

「ジュース飲んでいい?」

「うん。…へ?」

思考の海に沈んでいたら、ライ君の問いかけに無意識に返事をしていた。

「バタン。がこん。プシュッ。ごくごく。プハ~うまいっ!ママもどうぞ。はい!」

「へ?あ、ありがとうね…って冷蔵庫中身入ってるんだねぇ。ママビックリしちゃったよ。ハハハ……」


平然と冷蔵庫から冷たいジュースを取り出す息子に、力が抜けて、脱力感半端ない。


ってか、息子が流暢に言葉喋ってる。

可愛くカタコトしか話さなかった、あの昼下がりに

猛烈に帰りたくなった……。

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