携帯食を作ろう
遅くなりました~。
筋肉神官達と一緒に、筋肉神殿で寝泊まりしながら、自分達も一緒に訓練する手筈になっていた…らしい。
「いーやーだーーーっ!!!」
逃げようとした私は、魔王章人の腕の中で、ジタバタしていた。
もがいても、身動き出来なくする、拘束技で関節を決められている。
その技を最初に教えたのは、何を隠そう小学生だった私である。
悔やんでも悔やみキレない。
何故、実践で教えた!過去の私よっ!倍返しどころか、10倍返しだよーーっ!?
完璧過ぎで、指先すら動かない。
教えたのは、私なのにーーっ!!
クソー!何故外れないっ!?
「ムダな足掻きはやめて下さい。やるときにやる事がきちんと出来る女は、カッコイイですよ?」
耳元で言われ、その素敵な声に、背筋から下半身までゾクゾクする。ああ力が抜ける。
この声の魅力には、絶対に勝てない。
「―うん!じゃあ、頑張るッ!」
『チョロチョロのチョロインじゃな…。』
「ママ、パパにメロメロなんだね?」
『メロメロじゃのう…?』
いつも思うのだが、旦那にメロメロで、どこが悪いんだ!
他の男にメロメロなら大問題だが、旦那なら無問題である。
なのに皆さん、こぞって呆れたようにおっしゃる言葉が『メロメロだねぇ?』であるのは、非常に納得いかん。
愛する息子にまで言われるんだもんな…。
理解されないって、ちょっぴりつらいかもしれない…。
『だって、段々変態的になって来ておるからのう?
顔面総崩れじゃし…。皆持っていた、お主のイメージが、根底から崩れるんじゃよ~。』
確かに今も、関節キメられてるのに、旦那の体臭を『くんかくんか』したり、頬擦りしたりして、思わずウットリしたけどさ…。
『ほれ、それじゃよそれ??』
「……」
『それって言葉にすると、周りから見てどう言うんじゃ?』
「…へ、変態?」
『正解っ!?』
「まあ、今に始まった事では無いでしょう?次、いきますよ?」
「うん。章人~現場まで、抱っこして~?関節キメられて、体痛い痛いの~!」
「仕方ないですね?ほら、お姫様。よいしょっ!」
「ワーイ♪」
『ああ、幼児退行現象かのう?肉体よりも、頭脳が退行しとるんじゃなぁ~!』
「ママ、デレデレのダラダラだねぇ?
パパは、男らしくてカッコイイねー!」
なんとでも言うがよい。
一旦離れて、章人が私にとって、かなり大事な人だと理解したのだ。
意地でも離れてたまるかっ!甘えて甘えて甘えまくるっ!
それが私の野望で理想っ!!邪魔するやつは、葬ってくれるわーッ!
『ろくでなしじゃーーっ!!ろくでなしがおるっ!!』
「ママ、きちんとして??カッコ悪くて恥ずかしい…。」
「ガーン!」
来人が…。来人がぁ…。
「章人ぉっ!来人がぁ…。」
「メグちゃん、ライちゃんに、恥ずかしい思いをさせない親を目指して、お互い頑張りましょう??」
「うん。頑張るッ!章人ッ!大好きーーっ!!」
*~*~*~*~*
そんな馬鹿なやり取りは、さておき…。
訓練は腹が減る。
コレ、常識である。
特に筋肉神官達は、より美しい筋肉をつけるために、食事にも気を使うらしい。
オマエラヤッパリ…ヘンテコだよっ!
使える筋肉にしろよっ!
美しさ競って見せあうなっ!胸筋見せるために、上着脱ぐなっ!筋肉ピクピクさせるなっ!ポージングすんなっ!神官同士でオイル塗りっこすんなーーっ!!ウットリすんなっ!がっちり抱き合うなっ!?えっ!?なんで男同士??
危ない世界の人達なの??
えっ!?ただの相撲?なーんだ…。つまらんなっ!!ちっ!
「―と言う訳で、携帯食を作って下さい。お願いします。」
ボーっと、筋肉神官達の修行風景を見ていると、いきなりそんな事を言われた。
「―えっ!?」
「―ですから、携帯食を、調理スキル持ちの方に、作り出していただきたいのです。」
「なんで??」
いきなり過ぎで、何も考えずに、返事を返してしまった。―が、言ってから気が付いた。
仕事依頼されてる最中だったんだ。
話し長すぎで、退屈だったから、窓の外に目を向けたら、筋肉神官達が修行中だったんだっけ。
「え゛?説明したじゃないですか?」
「いや、聞いて無かったから。」
「……。もう一度かいつまんで説明いたしますね?要するに、健康によい食材で、筋肉つきそうな、携帯食を作って下さい。―と言う訳なんですよっ!?お分かり頂けましたか??」
「やだ。」
引き攣る笑いの神官達と、絶賛にらみ合い中である。
同じ空気吸うのも嫌な集団と、一緒に寝起きするのも嫌なのに、更に訓練まで一緒に致して、もう目一杯腹一杯ですから。
ぐったりした私を呼んで、何かと思ったら、今度は携帯食を作れ?
冗談じゃないッ!!
私達は便利アイテムでは無いんだからな。
緊迫感ビリビリのそこへ、何故かジジイが章人を連れてやって来た。
「ふ~ん?良いじゃないですか?私達の分も、沢山作ってインベントリに入れておけば。ライちゃんと、私の携帯食にもなりますし。
メグちゃん、美味しいの作って下さいね?」
「はい!わかった!美味しいの作って来るね。期待して待っててね♪」
「はい。待ってますからね?ふふふ。」
*~*~*~*~*
『バッチリ解決したんじゃよ~。報酬は弾んでくれるんじゃよね~?』
「はい。倍額お支払い致します。ありがとうございます。
流石元勇者のレイモンド様!我が同胞一同感謝致しますッ!」
裏で動く金は、全てレイモンドのインベントリに収納されて、有効活用されたそうな……。
続く




