太陽の神殿6
どうぞ!
―大地を揺るがす大音響。震える大気。
防御魔法の光の壁に、当たかり弾かれる石礫。
舞う砂埃に、景色は見えなくなり、光の壁の中は、さながら夜の如き闇に、包まれた。
どれだけの時間が過ぎた…?
皆、固唾を飲んで、見守るしか出来なかった。
声すら出ず、息をする事すら忘れて、苦しさに、慌てて息をする。
そんな時だった。
海の方から、ゴウゴウと音がする。
―ドン!!―と、防御魔法の壁に、衝撃が走る。
ぶつかるのは、大量の海水。
そして、大波が、光の壁の遥か上を過ぎ去ると、大量の砂埃は洗われ、濁流と化した海水が、凄烈にドウドウと、流れて行く。
ピシリピシリと音がする。
理解したくない音が、結界内に響く。
「―ジジイ…。壁に亀裂…。あと少しもつ??」
声が、掠れ、震える…。
『レイちゃんと、呼べいっ!
―もってあと五分じゃ…。』
来人が…。来人が…。波が…。どうか、どうか無事でいて…!!
息が苦しさを増す。
胸も苦しさを増す。
動悸が、ドンドン、速くなる。
握りしめる手は、すでに感覚が無い。
足はガクガクと震え、全身から、汗が吹き出し流れる。
汗が流れ行く背筋は、ざわざわと粟立って、首から尾てい骨まで、寒気が走り抜けて行く。
どうしよう?ドウシタライイ?
私の子が、来人が…もし、死ん…で…しまったら…??
頭がガンガンして、吐き気がした。
さっきから『達観』スキルが、発動しっぱなしで、でも、全然役に立た無い。
『落ち着けいっ!来人は大丈夫じゃ!ワシには、何故か、手に取るように分かる。来人は無事じゃ。来人は無事じゃ。』
不思議と、本当だと、分かる。
ジジイと来人が…。なにかの繋がりが、あるからだろうか?
ジジイと私が、以心伝心で繋がりが在るように。
固まった身体から、力が抜けて行く。
「―まだ、倒れてはいけません。
メグちゃん、恵、奥さん、しっかりして下さい…。
あなたは、来人の母でしょう?
母は、強くて強くて、強いんです!」
ふと見ると、隣に章人が立っていて、支えられていた。
そう言う章人も、顔色が悪い。
来人が、心配で心配で仕方ない、と言う悲痛な顔をしている…。
そうだ…。倒れているわけにはいかない。
まだ、やらなきゃならない事が、いっぱいある…。
防御魔法の壁の中に、ゴーレムの壁を作り出す。
無いよりは、マシだろう。
ヒビの入った壁を見て、ドキドキして居るより、よほど良いはずだ。
出来る限りの事をしょう。
クソーッ!元凶の糞坊主めッ!
出来る限りズタボロに、してくれるわーッ!
『そっちかよーーっ!?』
「だって、いきなりこんな事って、悔しいじゃない!!
だから、ジジイ!
きちんと、メンテナンスしておいてよねっ!
錆びたら困るからねっ!
錆びたら、来人が…、来人が泣いて暴れるよ?」
『!!!』
「そうですよ。レイちゃんは、来人の大事な、大事な遊び相手で友達で爺ちゃんなんですからっ!
その大切なボディーを、壊されては困ります!!」
『お主等…。ワシ頑張るッ!猛然と頑張るッ!
―数多の精霊よ、我にもっと力を貸したまえ、多光の壁ッ!グオーーッ!』
ビリビリと、外から音がする。
おそらく外の光の壁が、崩壊したのだろう。
加えて、ジジイが放つ魔法の威力で、大気中が振動している。
「ジジイ!老体で無茶すんなッ!ただでさえ古い冷蔵庫なんだッ!壊れるぞッ!!」
「レイちゃんっ!身体にヒビがっ!!やめて下さいっ!それ以上加えて魔法を使うと、ボディーに負担がデカ過ぎますっ!」
見る間に、ジジイの体に、細かいヒビが走って行く。
「ぎゃーっ!錆びる前に、壊れてどうすんのッ!!章人ッ!どうしよう!?ヒビがッ!ジジイが死んじゃうよッ!!」
『ワシは、もうすでに一度死んどるッ!
大丈夫じゃあ!!何故か、体中から力が湧いて来るんじゃっ!
寧ろ、こうせねばならん気がするんじゃ~っ!おおおおおーーっ!!』
一際大きく身体を振るわせると、ジジイの白いボディーが、ビシビシと音をたてて、大きくひび割れて行く。
「ああ、ああ、ああ、章人どうしよう!?ジジイ、ジジイ、レイちゃーん!!死んじゃダメーーっ!!」
「ああ、レイちゃーん!!!」
続く




