表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/111

冷蔵庫と私と息子のチン道中

初投稿です。不定期更新です。ヨロシクお願いします。

◇プロローグ◇


ある暑い夏の日の午後

いつもの様に息子が遊んで欲しいとせがむので、虫除け日焼け止めに帽子など、完全防備で息子の相手をするべく、腕に段ボールで作った小手に、伐採した柏ノ木の杖のような枝、溶接用保護ゴーグル、緑のバスタオルをマントがわりにし、ジーンズに皮ブーツと

『なりきりごっこグッズ』に身を包み、ヒーロー戦隊擬きのノリノリの息子に対峙した。

「いっくぞぉ~覚悟しろっ!」

「おおーぅ!」


この時私は、いつもの様に追いかけっことチャンバラで汗だくになりながら

いつもの様に息子が息を切らしてへばるまで

いつもの様にただただ愛する息子と遊ぶ、一人の母に過ぎなかった…


夫の家は田舎の山と田んぼに囲まれた、元機屋で工場跡地が住居兼物置になっていて、コンクリートの床に棚や各種工具、冷蔵庫と生活用品と、雑多なものがところ狭しと置かれていた。格好の遊び場である。

今日も2歳になったばかりの息子は大きな鉄ヤスリを剣に、ごみバケツの蓋を盾に、風呂敷をマントに、長靴をブーツに見立て

何故か麦わら帽子をかぶって、ぬいぐるみを背中に背負うという微笑ましい姿で私を追いかけ回している。

癒されるなぁ~などと思いつつ、真剣に相手をする。

侮るなかれ。相手は2歳児、手加減を知らない。まして40センチほどの鉄ヤスリを装備していて、危ない事この上無い。

息子のお気に入りの年期が入った鉄ヤスリが唸りながら側をかすめる。マジで危ないと内心ビビりながら「うわ~やられた~」などとクサイ演技をすると息子が笑いころげた。ハシャギながらあらゆる扉を開けてまわって突っ走り、持っている鉄ヤスリを脇の下に挟み大きな木槌を手に取った。

『げげっ!そりゃ重くてムリっしょ?』

と思った私は、次の瞬間信じられない光景を目の当たりにした。

なんと軽々と木槌を振り上げる幼子の姿を・・・え?ありえねぇ!ムリっしょ?私の力でも持ち上げるのがやっとの大きな木槌を持ち上げやがった。どんなチートだよ!とか混乱しつつ思った時

木槌を勢いよく振り上げ突っ込んで来る息子が見えた。


避けようとした私の足元には台車。

蹴躓き、慌てて態勢を立て直そうとした時、右足は台車の上。踏ん張りが効かず、滑車は意に反してその場から滑り出した。


バランスを崩して後ろに倒れて行く

やけにゆっくり感じる光景は

開いたドアから裏庭の砂利と植木と、空に大きな入道雲

横目で見えた倒れる先には、開けっ放しの冷蔵庫のガラスの仕切り板

『あれ?なんで開けっ放し?あ~コレは人生終了のお知らせかも』

ってくらい倒れる位置が悪いと、やけに冷静に思った時には、頭から冷蔵庫に突っ込んでいた


前には息子の木槌

後ろには冷蔵庫のガラス板

来るべき衝撃に、本能的に身を縮こまらせ目をつぶる


『痛く無いといいな。私が居なくなったら息子大丈夫かな?旦那泣くかな?死んだあとこの格好見られたらメチャクチャ恥ずかしい!警察官や近所の人が笑うなこりゃ。ニュースになっちゃうかもしれないな~嫌だわ~(泣)』

などとぐちゃぐちゃ考えていたけれど、いつまでたっても衝撃は来ない。

もしかしたらすでに痛みを感じる暇も無く、死んだのかもしれない・・・?

私は意を決してゆっくりと目を開けた。

草原だ

一面の濃い緑

遠くには山々が連なり晴れた空には入道雲

高原のような爽やかな風が吹いて髪を揺らす

微かに潮の匂い

遠くに海でもあるんだろうか?

ありゃりゃ?

死後の世界は、三途の川に花畑を想像していたが・・・

回りをぐるっと見渡すと背後に冷蔵庫と背のでっかい男の人

うえ!?だ、誰?御先祖様…にしては奇抜な格好の人である。

頭に茶褐色の兜を被り、背には赤く長いマント、焦げ茶色の肩当てに手甲に胸当て、下には白のシャツ、ベージュのズボンに赤茶のベルト、黒いブーツ、左手には剥き出しの長剣。右手には大槌。


まるでコスプレ?戦時中に死んだ御先祖様かしら?

どこか見たことのあるような郷愁を感じる顔に首を捻る。まあこの状況を見るに、私が死んだのは間違い無いと判断するべきだ~どうしよう(泣)


と、ガックリと座り込み半泣きで考えていた時

突っ立ったままだった、でっかい男の人がこちらへ話しかけて来た。

「ママ、ここどこ・・・?」と


「ねぇママ?どうしたの?ここどこ?お家は?」

何故か、猛烈な寒気が私の全身を支配した。

その人の言葉の本当の意味を理解した時、私の意識は暗闇に翔んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ