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私の可愛い奴隷人形  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 油断と敗走 ――幻想都市ファンタジアシティ――
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第7話 スレイヴ・ドール計画

 かつての指揮官などは忘れ、新たな指揮官に従え――


 それならまだよかったのかも知れない。


 ファンタジアの大敗北を喫した3人。


 それによりバラバラになった3人。



 2人は政府首都グリードシティへと撤退した。


 だが、そこに待ち受けるのは更に厳しき運命だった――


 また、1人となったかつての指揮官は死すら許されぬ運命を定められる。


 それは“新たな指揮官への強制服従”だった――



 3人は世界によって過酷すぎる運命を定められる。


 彼らが再び結ばれる希望は、もうどこにもないのだろうか――……?












































 【ファンタジアシティ ファンタジア防衛師団本部 最高司令室】


 大勢の連合軍幹部が忙しそうに歩き回る最高司令室。そこに数体のバトル=アルファによって1人の女性が連れて来られる。トワイラル達のかつての指揮官ピューリタンだった。最高司令室の中央、コンピューターに囲まれたイスに座るのは連合軍の将軍クラスタ。ファンタジアの侵略者だった。


「よぉ、ピューリタン。独房の暮らしはどうだ? よく“我が軍の男性兵士がお前に会いに行っている”そうだが……」

「…………」


 ピューリタンの体は僅かに震えていた。頬には涙の痕。そして、彼女の纏っている服はボロボロだった。

 捕まった彼女は連合軍幹部や兵士に毎晩犯され続けていた。望まぬ性行為を強要され、奴隷のように扱われていた。


「政府のメス犬でも役に立つとは、な。意外だよ」


 どす黒い感情のこもった瞳を投げかける。心にある闇。国際政府、特に特殊軍に対する憎悪と怨念。それらの矛先が今はピューリタンに向けられていた。

 本当なら殺したかった。クラスタ自身の手で殴り殺したかった。だが、彼女の頭はよかった。その頭が考えたした事、それは彼女を死よりも苦しい目に合わせよう、という考えだった。


「もう……殺せっ」

「殺しはしないさ。それよりも面白い計画があるんだ」

「面白い計画……?」

「そう、“スレイヴ・ドール”計画だ」


 スレイヴ・ドール計画…… ピューリタンには聞き覚えない計画名だった。だが、その計画が自分に取って利にならない事だけは何となく分かった。

 クラスタは立ち上り、最高司令室をゆっくりと歩きながらどこか楽しそうに、また得意げに話し始めた。その手には先端が細長い銀色の杖が握られていた。


「スレイヴ・ドール。奴隷人形の事だ。これは人間ベースの新型生物兵器」

「……“スウィーパー”の類似品でも作るのか? ハンターAやハンターCのように」


 ハンターA型、C型。それの発展バージョンであるスウィーパー。共通するのは人間ベースの生物兵器で人型をした怪物である事だった。どれも人間ではありえない身長と筋力をし、連合軍の主力となっていた。

 これらの生物兵器の素体は全てフィルド=ネストという人間をオリジナルとしたクローンだった。フィルドのクローンを量産し、次々と生物兵器に変えていたのだ。


「死んだ連合軍将軍デスピアの作り出したヤツか。あんな危ない怪物、私は作らん。私には怪物を開発する趣味はないのでな」


 “それ”は未完成の生物兵器だった。かつて作られたスウィーパーは異常な速度で変異と進化を繰り返し、最後には暴走した。その暴走は開発責任者であった連合軍将軍デスピアを、間接的に、ではあったが殺害したのだ。

 ピューリタンはトワイラル、ミュートと共にその現場にいた。狂気の怪物。それを作り出した狂気の将軍。全く予期しなかった彼らの死。現場にいただけに詳しく知っていた。


「ああ、こんな話は聞きたくないだろうがスウィーパー計画は今も進行中だ。デスピアを失ったせいで、計画はなかなか進まないそうだがな」

「それはよかった。吉報ありがとう。クラスタ将軍」


 皮肉を込めて言った。内心、怒らせて自分を殺させるつもりだった。毎晩繰り返される地獄から解き放たれるならもう死んでもいいとさえ思っていた。

 だが、つい感情的になって捕えた敵将を殺すほどクラスタはバカじゃない。彼女は全く動じず、今までと同じ足取りで歩きながら話を続ける。


「さて、本題に戻ろうか」

「ああ、そうしてくれ。スレイヴとかいう下らない計画を早く説明しろ。そろそろ疲れて来たぞ」

「そうだな。毎晩犯されてりゃ下半身はヘトヘトだろう」


 ピューリタンの意図が分かっているだけにニヤニヤ笑いながら返答するクラスタ。それを見たピューリタンは彼女を怒らせて自分を殺させるのは不可能だと悟った。


「スレイヴ・ドール計画は人間を人間のまま生物兵器とする計画だ」

「…………?」

「知性、感情、自我、意思…… それら全てを残し、肉体的自由だけを奪う」

「強制服従させるのか?」

「そう。簡単にいえば魂ある人形さ。それがスレイヴ・ドール」


 人間ベースのスレイヴ・ドール計画。奪うのは肉体的自由。その他は何も奪われない。これまでの人間型生物兵器のように姿や精神が奪われることはない。

 だが、それは生き地獄だった。自殺さえも許されず、死ぬまで奴隷とされる。自由はない。しかし、感情や意志はある。それを心に秘めたまま、生かされるのだ。


「私は力だけで知能なき生物兵器は創りたくないんだ。感情も意思も知性もあるアカデミックな生物兵器を創りたい」

「あ、そう。で、その素体は?」

「……バカだな。何のためにこの計画をお前に話したと思っているんだ?」


 そう言いながらクラスタはピューリタンに近づく。手に持った銀色の杖でピューリタンの顔を無理やり正面、自分の方に向けさせる。


「素体はお前さ。ピューリタン」

「…………!?」


 ピューリタンはあまりの事実に驚き、目を見開く。そして、その体が僅かに後ろに下がった。慌てて周囲のバトル=アルファ達が彼女の身体にアサルトライフルの銃口を向ける。


「お前は私の専属奴隷となる。肉体的自由を奪い、意識を残したまま奴隷とする」

「イ、イヤに決まってんだろ!」

「スレイヴ・ドール計画、もう一度話してやろうか? 計画立案・責任者のこの私が」

「ふ、ふざけるな! お前の奴隷なんてごめんだ!」

「安心しろ。一生大切に養ってやるよ」

「黙れ!」


 そう叫ぶとピューリタンは周りのバトル=アルファに殴りかかり、逃げようとする。だがそれよりも前にクラスタの杖が彼女の首筋を殴ったのが先だった。

 もうろうとし、消えゆく意識。最後に見たのは残酷な表情を浮かべたクラスタだった。それを最後に彼女の体は崩れるようにして倒れる。


「連れていけ。自殺させるなよ。あと今日からその女にヤる事を禁止しろ」

[イエッサー]


 数体のバトル=アルファに引きずられ、彼女は独房に連れて行かれる。後に残ったクラスタはその姿を見ながら不気味に笑い、言った。


「お前の新たなる指揮官はこの私だ……」

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