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私の可愛い奴隷人形  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 油断と敗走 ――幻想都市ファンタジアシティ――
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第2話 幻想都市ファンタジアシティ

 【連合軍/U-3支部 会議室】


 暗い会議室。円卓を囲んで座るのは連合軍の将校・幹部達であった。ほんどの人間が黒い服を着て、その背中部分には連合軍のマークがあった。

 彼らはこのマークの下に集まり、世界をまとめてきた巨大国家・国際政府への反乱を行っていた。国際政府を倒し、世界を変えようとする者達が彼らであった。


「被害数と敵に関する情報を報告しろ」

「はい、前の戦闘で3万6千の被害が出ました。また生物兵器ハンターC型も戦死」


 生物兵器ハンターC型を使い、大量の機械兵士を使用しているのが連合軍。ピューリタンやトワイラル、ミュートは国際政府側であった。


「敵の指揮官も判明しました。現在“ファンタジアシティ”の守備・周辺連合軍の討伐を行っているのはピューリタンという女性の将軍です」

「……アッチ“も”指揮官は女か」


 最初に声を上げた1人の若い女性が呟く。彼女は黒色の多い服に滑り止めの白いゴム製の手袋をし、剣とハンドガンを腰に装備していた。その容姿は黄色の髪の毛に蒼い目をした女性。幹部と違うのは黒いマントがあるところだった。


「草原の広がる南部は厳重な警備体制がしかれています。南部からの侵攻は不可能かと」

「では、北部はどうだ?」

「……前の戦いで警備が手薄になっています。しかし、2日もすればすぐに警備体制は戻るでしょう。また、北部から侵攻しても南部警備の軍勢がすぐに戻ってきます。恐らく市街戦になるかと……」


 幹部の1人がそこまで言うと、女性指揮官が立ち上り、透き通るような大きな声で言い放った。


「今すぐにU-3支部の軍勢を集め、北部からファンタジアシティに侵攻する!」


 それに驚いたような顔をする幹部や将校。お互いが顔を見合わせる。今から…… 今は夜の6時。負けたのは今日の夕方。これから侵攻するなんて考えられなかった。


「“クラスタ”将軍、それは無茶かと……!」

「まだ我が軍は負けたばかりですぞ!」


 そんな幹部や将校達の異論を無視し、指揮官のクラスタは会議室を去る。常識にとらわれない作戦で攻める。議論している場合はない。それが彼女のやり方だった。



 【U-3支部 飛行場】


[各部隊はただちに輸送艦に乗り込み、ファンタジアシティ攻撃の準備に取り掛かれ!]


 鋼色の大型輸送機に乗り込んでいく大量の機械兵士。その中には大型の機械兵士、ハンターC型のような生物兵器・ハンターA型も多くいた。


[指揮はこの部隊の指令長官クラスタが行う!]


 支部内を慌ただしく走る連合軍兵士や将校。中にはコートを羽織りながら走っている者までいた。ほとんどの兵士や将校らはまさかこんな負けた日の夜に出撃するとは思っていなかったのだ。


[今、北部の警備は手薄となっている。このチャンスを逃せば大都市ファンタジアシティを取らずに撤退する事となるだろう]


 ファンタジアシティは大きな都市であった。この地は豊富なクリスタルに恵まれ、クリスタルから造り出された美しい水色をした六角形のビルが多く立ち並んでいたのだ。


[全部隊、これよりファンタジアシティに向かう! 今度こそ、必ず手に入れるのだ! 腐敗した国際政府の手からファンタジアシティを奪い取れ!!]


 機械兵士や軍用兵器・生物兵器を搭乗させた大型輸送艦が空中に浮かび上がる。それも1機ではなく何十機という数の大型輸送機が。そして、最も大きな飛空艇にはこの軍の指揮官クラスタの姿が……


[全軍、出撃!]



 【幻想都市ファンタジアシティ 防衛師団本部】


 ファンタジアシティ。昼間の戦いを終え、疲れ果てた兵士・将校らが休んでいた。それはピューリタンやトワイラル、ミュートも同じだった。


「トワイラル♪ お疲れサマ!」

「わわっ! ミュート、いきなり抱き付くなよっ!」


 ファンタジアシティの警備軍であるファンタジア防衛師団本部。その施設の個人部屋にトワイラルとミュート、政府特殊軍の指揮官ピューリタンはいた。


「ハンターC型を破壊したのはさすがだな、トワイラル」

「そ、そうか? 戦闘ヘリがあれば誰でも出来るぞ」

「普通の人だったらどっかーん、って撃ち落とされてるよ。ロケットランチャーでね」

「ははは…… それよりも警備は大丈夫なのか?」

「警備? 北部の事を言っているのか? まぁ、まさか負けた日には攻め込んで来んだろ。明日にでも警備体制は戻すさ」


 ピューリタンは軽く答える。それが大きな間違いだとは思わずに…… 彼女はつい最近までは中将で、別の将軍の部下だった。軍を指揮した事は今回が初めてだったのだ。

 そして、今日、初めての戦いで勝利した。それが油断に拍車をかけてしまっていた。これが経験豊富な指揮官だったらそんな事はしなかっただろう。


「まぁ、大丈夫、か……」

「トワイラル、心配し過ぎだよ」

「そうだ、リラックスしろ、リラックス。ハハハ!」


 笑いながらトワイラルを見るピューリタン。トワイラルは慎重な青年だった。何事にも慎重だったのだ。もし、彼が指揮官だったら北部警備に手を抜かなかっただろう。


「連合軍なんて“バトル=アルファ”使ってるぐらいだからな。人材が足りないんだろな。そんな人材不足の中で頭のいい奴なんていないさ」


 バトル=アルファとは連合軍の主力兵器だった。広間の戦闘にも使用されていた機械兵士の事だ。戦闘用のアンドロイド兵器。それを使い連合軍は戦いを繰り広げていた。


「さぁて、っと」


 ピューリタンは机の上に置いてあったワインを瓶を手に取る。赤いワインがグラスの中に注ぎ込まれていく。彼女は嬉しかった。初めての戦いで勝てた事が。それは彼女を満たしていく。自信と誇りを満たしていく。


「この調子で連合軍を叩き潰すぞ!」

「イエッサー♪」

「オイオイ……」


 ピューリタンがグラスになみなみと注がれたワインを口に流し込もうとした時だった。外で大きな爆音が鳴り響いたのは!



[全軍、ファンタジアシティを占領せよ!]

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