二十七話・ぐうの音
「ぐぅ~……」
俺らは再び宿屋に戻ってきていた。目的はもちろん作戦の立て直しである。
前回は、決闘システムを利用して相手の敵対状態を解除し、そのスキに荷物を掻っ攫う。
という作戦で失敗した。ぐうの音も出ないとはまさにこのことである。……いや、出てるが。
「なぁなぁ、ところでさ、どうやってあの荷物を守ったんだ?」
岡村が疑問たっぷりの声で聞いてくる。
「荷物を守る?何のことだ?」
「は?」
どうやらこいつは痛みの余り記憶が混乱しているらしい。岡村のために最初からしっかり説明すると、
「だから、今回の作戦は荷物が無事なうちに決闘フィールドを展開、そして出てきたモンスターの
敵対状態を解除するために俺と岡村がフィールドを出ると同時にテレポート、
あいつの索敵範囲から消える。
そして、あとはあいつが去った後、フィールドが展開される前の状態に戻った荷物を回収、納品する。
というものだったろ?」
「あー、そうかそうか、そういうことか……って納得できるか!」
そんなノリツッコミをされても対応に困るのだが。
「なんでフィールドから出たらフィールドが展開される前の状態に戻るんだよ!」
俺はそう撒き散らす岡村を見て思う。こいつ絶対記憶喪失だろ!と。
「お前も戦闘中に言ってたろ?絶対介入不可地域って。
決闘が終わった後、その場のフィールドが元に戻って敵対状態が外れるなんていうのは
このゲームの“仕様”だろ?ほら説明書にもこう書いてあるじゃないか。」
そういって俺は一つのウィンドウを岡村の前にもっていく。そこには
「決闘システム
『勝負』というキーワードに対して指定されたプレイヤーが『どうぞ』と答えると決闘が始まります。
尚、決闘中に起こったダメージ、状態異常などは決闘終了後、全て回復されます。」
と書かれていた。
「いや、普通じゃないか!ダメージや状態異常が回復することとそれがどう関係あるんだよ!って……
まさか、状態異常っていうのは敵対状態やフィールドの状態まで含まれるのか?」
「半分正解、半分愚問。」
「いや、そこは不正解じゃないのか?」
「じゃあ半分不正解、半分愚問?」
「いやいやいや!愚問を消せ愚問を!」
「一般的なゲームで部位欠損や、オブジェクトの破壊はどういう風に計算されていると思う?」
「話題を逸らした……だと!?」
「正解は、オブジェクトや部位ごとにHPが設定されているんだ。それがゼロになった時
破壊されるような挙動を組み込んで。」
「無視?無視か!」
「だから、ダメージが回復されるっていうことはフィールドが元に戻るのと同じことなんだよ。
って、お前聞いてるのか?」
俺は何故だか知らないが死んだ毒怪鳥のような顔をしている岡村に尋ねた。
「そうか、そうかお前らの知能では我が邪悪なる思考には付いてこれないのだな。」
だめだ、これは完全に聞いていない。
「まあ、とりあえず岡村は放っておいて、このクエストどうクリアする?」
俺がそう口にするとマイルは少しバツの悪そうな顔をして、
「あのさ、あの箱が決闘システムによって修復されたんだよね?
てことはあれってHPが設定されていてそれが何らかの原因で無くなって壊れているわけでしょ?
つまり、あの箱に回復魔法とか回復アイテムを使いながら行けば良いんじゃない?」
そう提案したのだった。




