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BOB VR  作者: 西君
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第二十一話・人間は考える葦である。

俺らは冒険者ギルドに入ると受付のNPCに話しかけた。

「冒険者ギルドです!今日もたくさんの依頼が届いていますよ!」

俺は表示されたウィンドウから“ミエールの手紙”というクエストを選択する。

「こちらの依頼で宜しいですか?」

迷わずはいを選択し、クエストを受注した。

このクエストの内容はミエールという騎士の書いた手紙を最初の街に居る彼の旧友に送り届けて

その返事を貰ってくる。というものだ。いわゆる納品系クエストである。

そんなこともあって俺は大した準備もせずに街を出た。

無論、初期のころから受けられるこのクエストに強いモンスターなどが存在するはずも無く、

俺らは無事に街へ到着する。

マップを開き旧友の位置を確認しながら俺らは歩を進めた。

そろそろこの辺りか。と思い始めたとき、

「お前ら何者なんだ!」

「へっ!雑魚が偉そうに!」

そんな声のあとに金属の衝突音が響き渡る。

急いでそちらに向かうとそこでは三人の鎧を身に着けたパーティーと、

一人の麻服を着た青年が争っていた。

「大丈夫か?」

意味が無いと分かりながらもそんな声を発しつつ麻服の青年こと旧友シスイを助太刀に向かう。

「なんだお前らやる気か!?」

鎧を身に着けた一人が言った。俺がその質問を無視していると

「やっちまえ!」

先程の鎧がそう声を上げると同時にエンカウント。

結果はまあ、言う必要もないだろう。それなりにレベリングをしている俺らが

序盤のクエストで死ぬはずも無かった。

「ありがとう!君たちは?」

「そうか!ミエールの・・・。」

彼は一度そこで言葉を詰まらせ、悪いと言ってから視線を落として手紙読み始めた。

「・・・うぐっ、そうかあいつも・・・。」

などと目元を拭う動作をしながら嗚咽する様子は見ていて切なかった。

「これを届けてくれてありがとう。

最後に、これをあいつに届けて欲しい。」

と彼はつぶやくとお前のすばやさはカンストしてるのか?と言いたくなるような

すばやい動きで目の前から消えた。

さっきまでの切ない気持ちを返して欲しい。切実に。

「ねぇ。さっきの手紙の内容気にならない?読んでみようよ!」

若干の苛立ちを覚えていた俺へ仲間の素早いとどめが降りかかる。

流石にBOBとはいえ、そこまで再現しては……と思いながらアイテム欄を開くと

「ミエールの手紙」

ミエールが親友に当てて書いた手紙。

その気になり過ぎる内容とは!

などという運営の善意を疑うアイテムが転がっているのだった。

半分諦め気味にそれを開く、それと同時に今まで感情は全て吹き飛んだ。

ミエールの旧友に馳せるもどかしい思い。彼らが引き裂かれた理由。

騎士団を抜け出して会いに行きたいという強い思い。それらが感情のこもった(・・・・・・・)

文章で便箋10枚に渡り書かれていた。

しかし、本当に俺の心が動いたのは最後の一文だ。

これは体験した人の八割が体を震わせると自信を持って言い切れる。それは

「お前は旧友だ!何があっても!どんな障害があろうとも絶対、絶対に会いに行く!

恋の(かたき)絶対に忘れん!何が何でも潰してやる!」

という『呆れに呆れを重ねて心を無にして流そうとしてもあとちょっとぎりぎりで流せず怒り狂う』

という絶妙なバランス調整のされた文だった。

仲間の言動、明らかに高レベル帯な旧友の動き。それらも今なら全て許せる。

しかしシナリオ書いた奴だけは絶対に許さない!

そう俺は吐き捨てるとゲーム機のリセットボタンを連打した。


「......なんて前作では散々騒いだなぁ。」

今になって考えてみれば旧友だから仲が険悪でも別におかしくないとか色々自己解決出来るのである。

今現状のバグの嵐に比べれば何百倍もマシだ。

まあそのバグの嵐もログアウト不可という仕様の前にはとても善良だとは思う。

それになんだかんだで、知り合いで「あのシナリオ面白いよなー」とか

「あの落ちは想定外だわ」とか騒ぐのも意外と楽しかったりした。

「で、ゲーマーの思い出シリーズはそろそろ終結?」

マイルの呆れ果てた声の毒矢が見事に俺のクリティカルポイントを貫く。

「え?あ、ああ、冒険者ギルドに泊まr...じゃなかった行こうみたいな話だったな。」

「著作権侵害とかやめてよ?」

何か意味不明な言葉を発するマイルを華麗にスルーしながら俺は武器屋に走り出していた岡村を捕まえ、

冒険者ギルドに向かった。冒険者以外立ち入り禁止と書いてある垂れ幕を

左右に掻き分け……られなかった。どうやら動的オブジェクトとして設定されていないらしい。

では下から潜ろうとしゃがんだ俺の視界に広がったのは“あし”だった。

「人間は考える葦である。」とかいう誰かさんの名言が頭に浮かぶが全く関係はない。

目の前にあるのは“葦”ではなく“脚”だ。これは完全に推測だが恐らくNPCが冒険者ギルドから

出ようとして外に向かって歩いているが垂れ幕が動的オブジェクトじゃないので外に出れず入り口にたまっているみたいなことでは無いだろうか。

まあそんな推論はさておき俺は脚と脚の隙間から冒険者ギルドのテーブルをターゲットに

鷹の急襲を発動、道中の脚を無視して問答無用でテーブルへテレポート、刀を振るう。

俺の攻撃如きでテーブルが壊れるはずも無く俺は難なくギルドの中に入り込むのだった。



更新遅れてすみません。脚を骨折してしまい長時間PCの前に居ることが出来ませんでした。

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