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嬉野日記date5/10

作者: ハルメク

今日からテスト発表ということなので、各教科の出題範囲が教室内にある掲示板に掲示されておりました。

しかしワタクシの人間的価値は低いようで、出題範囲を見ようとすると横から来たクラスメイトに押し退けられその隙を狙ったのか後ろから来た人の波に遮断されて出題範囲が見れなくなりました。

しかしまあ人が誰もいなくなってから範囲を確認出来たので善哉であります。

・・・はい。こういう口調もとい文体は辞めて、日記調でいこう。

テストではまず数学が嫌だね。

数学なんて学問は昔の上位ギリシャ人とかが奴隷を働かせておいた間に作り出したものだ。奴隷を働かせておいて自分は学問に耽る。なんて不平等か。

それに比べ、国語や古典は良い。プロレタリア文学、純文学、方丈記、などなど数学のような階級的支配の上に成り立ってきたものとは違い、しかもそれ自体が皆人に対して平等である。



平等万歳。願うのは平等のみ。僕はそれだけを望むね。

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嬉野三田彦は筆を置いた。いつものように芋虫体勢でベッドに潜り込んでいる。


「うぅ。あうー。うぉうぉうー」


意味不明のうめき声をあげた。

嬉野のベッドにはマットレスではなく布団を敷く型のものである。敷いた布団に顎をこすりつけ時間の無駄遣いをするのが嬉野は好きだった。その時にあの呪文のようなうめき声を上げるのは常だ。

「安らぐ。とても安らぐ。僕を守ってくれるのはこの布団だけだね」

見えない傷だらけの嬉野三田彦の体を癒してくれるのは、布団だけだった。体にそっと優しく触れてくれ、傷を治してくれる。

率直といえば率直で、嬉野三田彦は布団と本と食料さえあれば他には何もいらないという男である。良い服も香水も騒がしい娯楽もいらないのだった。どちらかというとそれらを忌避するほうである。


「ブランド物なんて、値段が高いだけで特別ではないような気がするね。ただ見せびらかしたいとかそういう顕示欲が強い人が買うんだろうね」


嬉野三田彦は内向的なのでまったく表に自分を出さない。顕示欲の欠片もない。

「香水も、どうなんだろう。男子も最近、そういう香りを匂わしている人もいる。でもそれが集団になってくると悪臭公害の何者でもないような気がする。人間ってある程度の体臭は仕様がないのに。人間って動物であることを隠したいんだろうね。」

若者的なことはしない嬉野三田彦である。

「騒がしいのも嫌いだね。漱石沈流を意味的に正しくしたら漱流沈石かな。そういう暮らしが僕は良いね」


厭世観を持っているのが嬉野三田彦である。

「つまるところ、僕は厭世家で社会不適合者なんだね。QED。でも僕としては望むところなんだね」



それが嬉野三田彦。


「しかし世界とか日本とか社会とかの真意が解らないんだよ」


それが嬉野三田彦の答え。

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