番外編『神様の物語改め……』
また番外編です……本編がちっとも進みませんね……今回のお話は会話文のみです。
「たすけてえええええええええええええ」
「ちょ、なによ。どしたの」
「俺んとこの世界がまた魔王に滅ぼされちゃった……」
「またかよ!? お前これで何度目だよ! いい加減にしろよな!」
「だって人間と魔王のパワーバランスってすげぇ難しいんだもん。強すぎると今回みたいに魔王が世界滅ぼしちゃうし、弱すぎると人類の天敵としての役割果たさないし……」
「もう面倒くさいから魔王いなくても上手くいくような世界作っちゃえば?」
「何度か試してみたんだけどさー、やっぱ人類共通の外敵が必要っていう結論に至っちゃうんだよねー。ほら、人間って馬鹿だからさ、天敵いないと同じ人間同士で潰し合うし資源も無駄に壊すしで、勝手に滅んじゃう」
「だからー、その人間のモデルを改良しろっつってんだよ。お前いつのモデル使ってるよ? だいぶ前のだろ? 古すぎるわ」
「えぇー、俺このモデルに愛着沸きすぎてもう他のとか無理」
「なんという我侭。なら地道にパワーバランス取れよ。モノグサすんな」
「そのバランスがあまりにも微妙すぎて難しい。つーか、俺そういう細かい作業無理。ダカラナントカシテ」
「はい出たよ他力本願。我侭言っといて何他人にお任せしてんだてめぇコラ」
「あーあ、もう嫌だ疲れた……」
「こっちの台詞だ」
「前にさー、バランスめんどくせぇぇぇぇぇぇってなって人間を超強化した事があんのよー」
「なんか語りだした」
「そしたらさー、魔王を瞬殺しちゃって人類同士の大戦争起こっちゃってさー」
「そらそうなるだろうよ。生まれたての神でも予想できるわ」
「そんでその失敗をいかして、次は人間のごく一部を超強化したんだけどさー」
「あー……新たな魔王になったんだろ?」
「あったりー……もうなんなのアイツ等……魔王倒してハッピーエンドになんでならないかなー……」
「そらなぁ……無理あるだろ。自分だけ特別ってなるとやっぱ色々おかしくなるんだろ頭の中が」
「やっぱ今のモデルじゃ無理あんのかなー」
「あるだろ」
「即答すんなし」
「いや実際無理ゲーだろ。お前のモデルはもうとっくの昔に廃棄処分されてるタイプだぞ? 未だに使ってるのお前くらいだから」
「え? マジで? 俺だけなのこれ使ってんの」
「お前他の神になんて呼ばれてるか知ってるか? 懐古厨だぞ?」
「なにそれ傷ついた」
「もう諦めて最新モデル使えって。これなんてどうよ? 俺が今使ってるタイプ」
「どんなん? 説明して」
「なにこいつ偉そう……俺が使ってんのは言うなれば『半自立型モデル』?」
「半自立? なにそれ」
「お前が使ってんのは、作ったら後はそのままってタイプだろ? 作って動き出したらもうシステムや新規の設定を受け付けない奴」
「そうそう、それそれ。だから一番最初が肝心なんだよなー。作っちゃったらもう後俺には何もできないし」
「俺のは後付の設定が可能なんだよ。例えば、なんの能力も付与してなかった人間にある日スーパーヒーローの力を設定する事ができるんだ」
「それってつまり……」
「お前が苦心してるパワーバランスも経過を見ながら再設定可能って事だ」
「なにそれ素敵」
「だろ? だけどこれにも欠点があって、お前のは人間を一律に設定するタイプだからある意味楽だろ? 俺のは一人一人を設定しなきゃいけないから仕事の量が半端無い。たまに死にたくなる」
「あー、だけど最近流行の個性とか自分で作れちゃうのかぁ~」
「お前のは人間性とかシステムですでに固定されちゃってるもんなぁ……しかもお前のモデルが廃棄されたのって人間性があまり良くないからっていう理由もあったらしいぞ」
「うんまぁ俺もそれは思う。はっきり言って馬鹿だし残酷だからねアイツ等」
「それでもお前はそれを使い続けんの?」
「愛着があるからな」
「懐古厨おつ」
「殴っていいですか」
「駄目です」
「……」
「俺が使ってるこのタイプは人間性もそこそこだし再設定も可能ってんで、今一番人気のモデルなんだぞ。あー……でもモノグサなお前にはちょっと無理か」
「おいこらふざけんな。俺だって本気出せば」
「下手したら60億以上の人間の設定しないといけないけど?」
「他にいい手はないかね?」
「お前……」
「だってぇ……」
「他にいい手ねぇ……………お前さぁ、60億は無理でも5人とか10人レベルならいけるよな?」
「えー……メンドクセ」
「帰っていいかな?」
「ごめんなさい面倒くさくないです」
「ッたく……でだ、ちょっと考えたんだが、この半自立型モデルの人間を数人どっか適当な世界にストックしておくっていうのはどうだ?」
「ストック?」
「つまりは保険だな。今までのモデルで世界を作る時は、あらかじめ魔王は強めに設定しておく。まぁ若干気持ち程度でな。で、いざその世界の人間では魔王を倒せないとなったら、そのストックしていた人間をその世界に移動させて能力値を再設定する。まぁお話風に言えば『勇者』だな」
「おお勇者!」
「なにこいつイキナリ瞳が輝きだしたキモい……ああ、そうだ。そのストックしておく世界には魔王とか作るなよ」
「え? なんで?」
「魔王なんて作って、そのストックしておいた人間が死んじゃったらどうすんだよ。ストックしておく世界はお前が失敗したって言う魔王のいない世界でいいよ」
「でもそれだとそのうち滅んじゃうけど?」
「別にいいんでない? 自然消滅しちゃっても、また同じような世界を作ってそこにそのストックしておく人間を移せば。世界って言うより箱みたいなもんだな。入れ物入れ物」
「なるほど。消耗品みたいな感じか。確かに箱が変わっても中身が変わってなきゃ問題ないしな」
「そういう事だ。ほら、俺のモデル貸してやるからさっさと作って来い」
「はいはい。世界とか設定は適当でいいよな?」
「人間が死なない程度に適当でいいだろ。別に戦争しようが自然破壊しようが滅びようがどうでもいいんだし。箱として機能すればオッケーだ」
「了解ー」
****** 時は流れて…… ********
「おい、そこの暇神」
「それは私の事かモノグサ神」
「てめぇだろ、俺んとこの世界から最後のストック持って行ったの」
「ああ、最後の木崎家の事か。今も観察してる途中だ。面白いぞ」
「ふざけんなよ! 俺のとこのストックはつい最近2人知人の神に譲ったばっかなんだぞ! 最後の1人くらいは俺用に残しとこうと思ってたのに……」
「暇だったから仕方ない」
「どこをどのように解釈すれば仕方ないと思えるんだよコラ」
「そもそも3人しかストックがなかったのに2人も譲ってしまう方が馬鹿ではないのか?」
「俺のとこの幾つかある世界は今のところバランス取れてて必要がなかったから渡したんだよ」
「なら私にくれてもいいではないか」
「お前のは理由がくだらなすぎてムカつくんだよ!!」
「いいじゃないか。私もブームに乗りたかったんだ。お前も神のくせに人がいいな。いろんな神にそのストックとやらを譲ったり貸したりしているだろう?」
「まぁだいたい譲ってるが……今の木崎家の父は確か貸し出しだったな。まぁあれも最後のストックだったから譲るわけにはいかなかったからなぁ」
「だが確かストックを貸したのに何故かそのストックが世界を滅ぼしたんだろう?」
「あれはなー……ストックをちゃんと返してもらおうとちょっと人格をいじったら何故かあんな事に……なんでだろうな、ちょっと帰るという意志を強くしただけなのに」
「あの事であの世界の神は怒ってたか?」
「いんや。まぁたまにストックが世界を滅ぼすっていう事例があるのは皆知ってる事だし、別に怒ってはいなかったぞ。元々ストックを送らなくても滅んでた世界だし。ただちょっと色々思うところはあったみたいだなー。返してもらいに行ったらなんかポエムみたいな事言われた」
「ポエム?」
「『かつて一つの世界が滅んだ。魔王がいた世界だった。だが滅ぼしたのは勇者だった。世界を滅ぼそうとした魔王を倒した勇者だった。何故勇者は世界を滅ぼしたのか。ウンタラカンタラ』」
「聞いてるこっちが恥ずかしくなるな」
「俺は優しいからちゃんと右から左に華麗にスルーしてあげた」
「だが私に言っている時点で優しいとは言えないと言う」
「お前は優しくないなスルーしろよ」
「ああ、ほら、私が与えた【変態ホイホイ】でまた1人変態を引っ掛けてるぞ。面白いな」
「変なところでスルーすんなし。つーかストック返せ」
「もうちょっとだけ。木崎光が変態にあんな事やそんな事されるのが見たい」
「おいこら変態」
番外編【神様の物語改め……木崎家の物語】完
次こそは本編を……