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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
1章

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1章6節

祝100PV

閲覧だけでもしてくださった皆さんに感謝です!


毎日17:30投稿

それから一年が過ぎた。


表向き、何も変わっていない。

相変わらず、会社のローテに従い、

相変わらず「使い捨ての盾」を装備して前線に立ち、

相変わらず、死に戻りを繰り返していた。


「使い捨てる盾」を業務で使うわけにはいかなかった。


ホブゴブリンの群れを受け止め、

明らかに格上の攻撃に耐え、

あり得ない粘りを見せたあの日以降、

ヤヒロははっきり理解していた。


――これは、隠さなければならない。


会社は成果を評価しない。

異常を排除する。


もしこの盾の性能が露見すれば、

「調査」の名目で没収されるか、

最悪、報告義務違反として懲戒の憂き目にあう。


それだけは、避けなければならなかった。


だからヤヒロは、これまで通りに振る舞った。


浅層で死に、

中層で死に、

ときには雑魚相手に押し切られて死ぬ。


盾は壊れ、

体は削れ、

評価は「可もなく不可もなく」のまま。


――いつもの、使い潰される駒。


それでいい。

ヤヒロには「使い捨てる盾」という心の支えがあるのだから。


裏では、別のことが進んでいた。


給料日。

振り込まれる、決して多くはない金額。


その大半は、社宅と最低限の生活費で消える。

残ったわずかな金を、ヤヒロは迷いなく購買所に向けた。


目的は一つ。


コモン装備。


刃こぼれした短剣。

重心の狂ったメイス。

耐久値の低い盾や鉄球。


誰も見向きもしない棚の商品を、

まとめて、淡々と購入する。


購買所の職員は何も言わない。

どうせ前線要員の消耗品だと思っているのだろう。


そして夜。


社宅の自室で、

ヤヒロは静かに「使い捨てる盾」を取り出す。


一つ、また一つと、

コモン装備を盾に当てる。


キン。

キン。

キン。


音は変わらない。

だが、盾は確実に変わっていった。


厚み。

重さ。

触れたときの、反発の質。


数値では測れない何かが、

確実に積み重なっていく。


一年。


表では、何百回も死んだ。

裏では、数え切れないほどの武器を“食わせた”。


しかし、ある夜のことだった。


いつものように、

ヤヒロは社宅の自室で「使い捨てる盾」を床に置き、

購買所で買ってきたコモン装備を手に取っていた。


刃こぼれした短剣。


盾に当てる。


――ギン。


いつもと同じ音が鳴らなかった。

正確には、いつものあの軽い金属音ではなかった。

もっと重く、腹に響くような思い金属音。


短剣は、折れた。

砕け、床に転がった。


「……ん?」


何かが変わった気がした。


もう一度、別の武器を取る。

歪んだメイス。


盾に当てる。


今度は、メイスが盾にぶつかるだけの鈍い音がした。

盾は、何も変わらない。


メイスも、壊れない。


「……」


ほかの鉄球や盾も試す。

結果は同じだった。


吸収されない。

消えない。

盾は、沈黙している。


ヤヒロは、しばらくその場に立ち尽くした。


一年間、

毎日のように続けてきた作業。


キン、という音。

武器が消え、盾が重くなる感触。


それが――

止まった。


「……上限、か」


ぽつりと呟く。


理由はわからない。

だが直感的に理解できた。


この盾は、

もう“コモン程度の素材”では満足しない。


床に散らばった破片を見下ろしながら、

ヤヒロは静かに息を吐いた。


「……なら」


次に必要なのは、

もっと“価値のあるもの”だ。


その答えは、

最初から決まっていた。

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