2章25節
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声が、横から割り込んできた。
ヤヒロは、
即座に盾を向ける。
だが――
ツダが、
その腕を、
軽く下げさせた。
「……人間だ。
しかも、慣れてる」
火山灰の向こうから、四人。
全員が、重装の近接職。
盾持ちが一人。
大剣。
戦斧。
双剣。
動きに、
無駄がない。
視線は、
最初から――
ワイバーンゾンビに固定されている。
「お前らがやらないなら」
大剣の男が、肩越しに、
ちらりとこちらを見る。
「俺たちが、こいつをもらうぜ」
言葉に挑発はない。
敵意も薄い。
ただの宣言。
「横取り、ですか」
ヤヒロが言う。
「違ぇな」
戦斧の男が、鼻で笑う。
「『管理』だ」
「ここじゃ、放置が一番危ねぇ」
その言葉通り。
ワイバーンゾンビが、
咆哮を上げる。
空気が震え、溶岩の滴が雨のように落ちる。
「行くぞ!」
号令一つ。
四人は、一斉に距離を詰めた。
ヤヒロは、思わず目を凝らす。
――速い。
だが、無茶じゃない。
盾役が、真正面。
ワイバーンゾンビの噛みつきを、
“受けない”。
逸らす。
顎が、
地面を噛み砕く。
その瞬間。
大剣が、首の付け根へ。
戦斧が、脚関節へ。
双剣が、翼の骨を。
それぞれ削り取る。
連携が滑らかだ。
誰も深追いしない。
攻撃したら、一歩引く。
引いた瞬間に、
次の誰かが、踏み込む。
「攻撃してるのに、前に出すぎてない」
ヤヒロは、気づく。
自分との違い。
あの盾役は、
「守りながら殴る」のではない。
殴らせない位置に、ただ居続けている。
ワイバーンゾンビが、翼を打ち下ろす。
溶岩の破片が、飛び散る。
だが
「はい、終わり」
双剣が、翼の根元を切断した。
巨体がバランスを崩す。
その一瞬。
大剣が、深々と胸部へ突き刺さる。
戦斧が、追撃。
魔物が、崩れ落ちる。
今度は完全に、光の粒子が立ち上る。
「……早い」
ヤヒロは、思わず呟いた。
「慣れだよ」
盾役の男が、振り返る。
「上層じゃ、強さより判断が命だ」
「倒せるかの判断じゃねぇ」
大剣の男が、肩に武器を担ぐ。
「倒す価値があるか。それだけだ」
ドロップが、地面に落ちる。
輝きが、明らかに違う。
「……」
ヤヒロは、何も言えなかった。
殺さなくても、奪わなくても。
こういう“狩り”が、
存在する。
守りに徹することは、
逃げじゃない。
戦場を長く生きる技術だ。
熟練の冒険者たちは、
その後ろ姿だけを残し、
去っていった。
火山灰が、再び視界を覆う。
ヤヒロは、盾を見下ろす。
――まだ、足りない。
だが、進むべき方向は、少しだけはっきりした。
守るとは、耐えることじゃない。
危険を増やさないこと。
それもまた、盾の役割なのだと。
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