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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
2章:富士山ダンジョン編

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2章19節

毎日17:30投稿

溶岩の赤が、遠くで揺れている。


火山灰が、静かに降り続ける中、

三人は岩陰で腰を下ろしていた。


誰も、口を開かない。


ヤヒロは、盾を見つめていた。


表面に残る、溶岩ゴーレムの打痕。

防げはした。

だが――押し返せなかった。


(まだまだ……足りない)


その思考は、

もう何度目か分からないほど、

頭の中を巡っていた。


中層で、人を殺したとき。


恐怖があった。

嫌悪もあった。

戻れなくなる感覚が、確かにあった。


だが今は。


(躊躇してる暇は、ない)


上層は、

防げばいい場所じゃない。


防いだ先で、

叩き潰せなければ、生き残れない。


防ぎきれるとも限らない。

せめて、もっと自分に力があれば。


「……ツダ」


ヤヒロが、口を開いた。


「この辺、冒険者の動線が多いよな」


ツダは、ちらりとこちらを見る。


「……ああ。

火口寄りを避ける連中が、集まりやすい」


「ここまで来るなら、レアドロップも多く持っているんじゃないか?」


その問いに、

一瞬の沈黙が落ちた。


ユイが、視線を上げる。


「……いる」


短い答え。

否定も、咎めもない。


ヤヒロは、頷いた。


「狩ろう」


言葉は、

驚くほど自然に出た。


「モンスターだけじゃ、足りない」


「盾を、もっと強くする」


自分でも、

声が平坦なのが分かった。


ツダは、何も言わない。


ただ、

少しだけ眉を寄せた。


「……分かって言ってるな?」


「分かってる」


即答だった。


「戻れなくなる、とか。そういう話なら」


ヤヒロは、盾を握り締める。


「もう、とっくに戻るつもりはない」


ユイが、小さく息を吐いた。


「……ヤヒロ、無理は、」


「大丈夫だ」


さえぎるようにそう言った瞬間、

自分でも、嘘だと分かった。


だが。


「生き残る」


それだけは、揺らがなかった。


最初の襲撃は、夕暮れ時だった。


三人組。


装備は、レア混じり。


警戒は甘くない。

だが、連携は雑だった。


ヤヒロは、前に出た。


盾を構え、

踏み込む。


衝撃波反転。


ドンッ!


一人が、弾き飛ばされる。


追撃。


硬直が入る。


迷いは、なかった。


殴る。

叩く。

押し潰す。


光の粒が、舞う。


残ったのは、

大量のレアドロップ。


感じたのは虚無。


だが。


「……悪くない」


ヤヒロは、そう思ってしまった。


次も。


その次も。


ヤヒロは、

積極的に前に出た。


盾で、崩す。

硬直させる。

幻痛毒を叩き込む。


殺す。


殺す。


殺して、

装備を、盾に食わせる。


防御値が、上がる。

数値が、伸びる。

スキルが、特性が増える。


「……また、強くなったな」


ツダが、淡々と告げる。


「強くならなきゃ」


その言葉が、

胸に、重く沈む。


ユイは、

何も言わない。


ただ、ヤヒロの背中を、

よく見るようになった。


次の夜。


火山灰の向こうに、

人影が、揺れた。


ヤヒロは、

盾を持ち上げる。


躊躇は、

もう、なかった。


(必要だ)


(生きるために)


(――上に行くために)


それが、

言い訳なのか、覚悟なのか。


もう、区別はつかない。


だが、歩みは止まらない。


ユイとツダは、

そんなヤヒロの背を見ながら、

何も言わず、ただ、ついていった。


強くなることに、異論はない。


だからこそ――

心配するしか、なかった。


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