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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
1章:はじまり

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33/65

1章32節

これにて1章完結となります。

2章からも毎日投稿いたします。

なにとぞ、ご期待ください。


毎日17:30投稿

異変は、数値から始まった。


習志野ダンジョン付属ギルド販売所。

日次在庫ログに記録された「売却済み」の項目が、明らかにおかしかった。


レア装備。

販売許可数、ほぼ全消失。


誤差でも、記入ミスでもない。

購入履歴が、綺麗に一本で繋がっている。


購入者名は、津田宗吾。


報告は、現場からギルド統括へ。

そしてギルド統括から、公安部へ。


数時間後、ツダの端末に短い通知が届いた。


――至急、出頭すべし、と。




***




会議室は、無駄に広かった。


長机の向こうに、顔の見えない上官が二人。

壁際には、記録用の無人カメラ。


ツダは椅子に腰を下ろすなり、背もたれに体重を預けた。


「で、なんでしょうか?」


上官の一人が、書類を机に置く。


「習志野ギルド販売所の件だ」


「あぁ」


「レア装備が消えた」


「消えた、は言い過ぎだな。買われた」


空気が一段、冷える。


「……全てを?」


「在庫分は、ですけどね」


「理由を聞かせてもらおうか」


ツダは、少し考える素振りをしてから言った。


「理由?」


「私物化か、横流しか、実験か」


「三択?」


「正直に答えろ」


ツダは、軽く笑った。


「じゃあ三つ目です」


「実験?」


「観測対象が持つ装備の検証ですよ」

「ついでに、“なぜ売れ残ってるか”の理由確認ってとこです」


「ギルド販売所は、お前の実験場じゃない」


「そうですね。でも、倉庫で眠らせてるよりはマシじゃないですか?」


上官が、指で机を叩く。


「許可は取っていないな?」


「事後なら取ってます」


「減俸案件だぞ」


「うわ、それは困ります」


ツダは肩をすくめる。


「でもですよ。俺が買わなきゃ、誰も買わない装備ですよ?」


「……だからといって――」


「発動条件がピーキーなものや、そもそも装備すらできない武器など」


ツダは、淡々と並べた。


「全部、“理由があって使われない”」

「でも、それって実際に試した結果じゃないでしょう?」


沈黙。


「俺は、確認しただけです」


「結果は?」


「これからです」


上官が、額を押さえる。


「始末書を書け」


「三行でいいですか?」


「ダメだ」


「じゃあ五行にしますね」


「……」


「それと」


ツダは、少しだけ声を落とした。


「横流しも転売もしてない。

 記録は、全部残してます」


「……分かっている」


「ならいいです」


椅子を引く音。


「今回は、調査名目として処理する」


「助かります」


「だが次はない」


「次?」


ツダは振り返り、にやっと笑った。


「次は、もう少しバレないようにやります」


「そういう意味じゃない!」


ツダは手を振り、そのまま部屋を出ていった。




***




廊下に出た瞬間、ツダは小さく息を吐いた。


「……ふう」


ポケットから端末を取り出し、メモを一つ削除する。


――盾の吸収挙動:未記載。


報告書は、

書くものより、書かないものの方が重要だ。


ツダは、モノクルを指で弾いた。


「さて……次は、どこまで飲み込むか」


その顔は、

仕事よりも、完全に――遊びのそれだった。




***




なお、この件は――

正式には、問題なく処理された。


販売所の在庫異常は「調査用途の一括購入」。

報告書も、監査ログも、すべて整合している。


ただ一つだけ、誰も気に留めなかった項目がある。


――習志野ダンジョン

――レア装備一括購入

――公安関係者


この三つのキーワードが、

別々のシステムに、別々の形式で記録されたこと。


ギルドの売買ログ。

ダンジョン庁の統計。

公安内部のアクセス履歴。


それらは直接つながらない。

つなげる“理由”も、公式には存在しない。


だが、記録である以上、見られること自体は、防げなかった。


ある分析担当者は、

単なる数字の偏りとして。


ある外部委託の技術者は、

デバッグ用のサンプルとして。


そして、どこかの誰かは「面白いデータだ」と思っただけ。


ツダが削ったのは、報告書の中身だけだ。


報告書の外にある『痕跡』までは、どうしても残っている。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。

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