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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
1章:はじまり

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25/57

1章25節

1章完結まで毎日2話投稿中

前話を未読の方は、前話からご拝読願います。


毎日17:30投稿

三人での初潜入は、思ったよりも静かに始まった。


習志野駐屯地ダンジョン。

浅層を抜け、中層の入口が見え始める頃。


ここから先は、スライムやコボルト、ただのゴブリンではない。

明確な知性と集団戦術を持つ敵――ホブゴブリンの層だ。


「ここまででいいかな」


ツダが立ち止まった。


前に出る気配はない。

後衛位置を保ったまま、壁に背を預け、モノクル越しに周囲を見回している。


「……ここから?」


ヤヒロが盾を構え直す。


「うん。初戦としては、ちょうどいい」


その言い方が、少し引っかかった。


「ちょうどいいって、何が」


「君たちの地力を見せてもらおうかなって」


ツダは軽く笑い、

腰に下げていた槌を、壁に――


ゴン、と一度だけ強く打ち付けた。


鈍く、低い音。


ダンジョンの通路に、嫌な反響が走る。


「なにしてんだ!」


「実験ってとこ」


次の瞬間。


遠くから、

重なり合う足音。


複数。

しかも、明らかに速い。


ユイが、即座に背後へ下がる。


「……来る」


「だね」


ツダは、楽しそうですらあった。


「音に反応する個体が、どれくらい集まるかな」

「ついでに、二人のフォーメーションも見せてね」


「ついででやるな!」


ヤヒロが叫んだ直後――


通路の先から、

赤黒い影が、雪崩れ込んできた。


ホブゴブリン。


一体、二体……いや、五体以上。


粗雑な武器。

だが、動きは明らかに統率されている。


「ったく!俺が前を抑える!」


ヤヒロが一歩踏み出し、盾を構える。


初撃。

正面からの斬撃を受け止める。


衝撃が、腕に走るが、それを衝撃波反転で押し返す。


「……重い!」


これまでのゴブリンとは、比べ物にならない。

ヤヒロは、社畜時代に転移罠で滅多打ちにされたあの時を思い出していた。


しかし、今はあのころとは違う。

自分でも驚くほどに、体はスムーズに動けていた。


横から回り込もうとする個体。

背後を取らせないよう、体を回す。


その瞬間、

別の一体が、低い姿勢で突っ込んできた。


「――っ!」


盾を落とす。

衝撃。


だが、完全には受け切れない。


バランスを崩す。


「ヤヒロ」


後方から、ツダの声。


「三体目、右足に癖があるね」

「踏み込みが浅い。そこなら、押せる」


「今言う!?」


「今だからです」


ユイの矢が、飛ぶ。


――否。


放たれた瞬間、

矢は宙で止まり、


数秒遅れて、

ホブゴブリンの肩へ突き刺さった。


だが、一射では止まらない。


数が多すぎる。


「……多い」


ユイの声が、わずかに焦る。


「そうだねぇ」


ツダは、まだ前に出ない。


槌を構えながら、

完全に見る側だ。


「群れの完成度は、平均以上」

「この層では当たりだね」


「当たりって言うな!」


ヤヒロは歯を食いしばる。


盾を振る。

弾く。

押し返す。


ヤヒロ自身には、切りかかるまでの余裕はなかった。


そして、囲まれ始めている。


衝撃波反転は、まだ使えない。

クールタイムは戻っていない。


苦しい。


それでも――


「……ユイ、右奥」


ヤヒロが声を投げる。


ユイは、迷わず撃った。


止まり、

溜まり、

そして――貫く。


一体、崩れる。


だが、すぐ次が来る。


「いいねぇ」


ツダが、ようやく一歩前に出た。


槌を振る。


派手さはない。

ただ、確実に関節を潰す打撃。


「でも」


一体を牽制しただけで、すぐ下がる。


「まだ足りない」


観測者の目。


試す側の態度。


この男は、

本気で助けに来ていない。


ヤヒロは理解した。


――見られている。


盾の動き。

ユイの射線。

自分たちが、どこで崩れるのか。


ホブゴブリンの咆哮が、通路を満たす。


苦戦。


間違いなく、苦戦だ。


だが。


ここで折れなければ、俺たちはまだまだ強くなれる。

そんな、妙な確信がヤヒロの中にあった。


その時だった。


通路の奥から。

ホブゴブリンたちが湧き出てきたさらに向こう。


地鳴りのような足音が、ひとつ混じった。


ズン。

ズン。


明らかに、違う。


ホブゴブリンの群れが、

その音を境に、ざわつく。


道を空けるように、左右へと散った。


「……?」


ヤヒロは、盾越しに奥を睨む。


暗がりの中から、

ゆっくりと姿を現したのは――


異様に大きな影だった。



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