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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
1章:はじまり

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24/57

1章24節

1章完結まで毎日2話投稿中


毎日17:30投稿

沈黙を破ったのは、ユイだった。


「……ひとつ、聞いていい?」


声は低く、淡々としている。

だが、その視線は真っ直ぐツダを射抜いていた。


「……なぜ、没収しない」


言葉は短い。

だが、意味は重い。


レジェンダリー装備――しかも政府管理下の武器を盗んだ張本人だ。

本来なら、この場で拘束されていてもおかしくない。


ツダは、一瞬だけ目を瞬かせたあと、肩をすくめた。


「いい質問」


軽い調子だが、答えを誤魔化す気はなさそうだった。


「理由はシンプルだよ」


モノクル越しに、ユイを見る。


「微睡の弓の実践データが、圧倒的に足りない」


ユイの表情が、わずかに強張る。


「研究施設で研究員ザコに撃たせるのと、

 実戦で生き残るために使われるのとじゃ、

 出てくる数字の意味が全然違う」


ツダは指でテーブルを叩いた。


「我々が欲しいのは、『安全な理論値』じゃない」


視線が鋭くなる。


「人が必死になっているその現場で振るわれた結果だ」


だからこそ。


「ダンジョンに住み着けるだけの技術をもつ君に使わせることは――」


少しだけ、言葉を選ぶ。


「……正直、回収するより価値がある」


ユイは、何も言わなかった。

否定もしない。

肯定もしない。


ただ、その目が、ほんの少しだけ冷えた。


「……利用してる」


「お互いさま」


ツダは即答した。


「俺はデータが欲しい。

 君はその弓が欲しい」


「利害は一致してる」


その空気を切ったのは、ヤヒロだった。


「なら、こっちからも条件を出す」


ツダの眉が上がる。


「ほう?」


「そのモノクル」


ヤヒロは、はっきりと言った。


「俺たちのためにも使わせてもらう」


店内の空気が、わずかに揺れた。


「鑑定結果は、隠すな」


「危険な特性やスキルがあれば、事前に共有する」


ヤヒロは、一拍置く。


「……俺たちが、知らないまま使われるのが一番困る」


ツダは、面白そうに口角を上げた。


「いいねえ」


だが、まだ笑っている。


「それだけ?」


ヤヒロは、首を横に振った。


「もうひとつ」


視線を逸らさない。


「俺たちには、絶対に嘘をつくな」


一瞬。

ツダの笑みが、止まった。


ほんの一瞬だけ。

だが、確かに。


「情報を伏せるのはいい」

「言えないことがあるのも、理解する」


ヤヒロは、言葉を選びながら続ける。


「でも、言ったことが嘘だった場合――」


盾の異常性に、ユイの弓に、自分たちの命に。


「その時点で、協力関係は終わりだ」


店内のBGMが、やけに間延びして聞こえた。


ツダは、しばらく黙っていた。


モノクルに触れ、

椅子にもたれ、

そして――。


「参ったな」


大げさにため息をついた。


「ほんと、扱いづらい二人だ」


だが、その声色は、どこか楽しそうだった。


「いいよ」


あっさりと言う。


「嘘はつかない」


「少なくとも、

君たちの命に関わる部分ではね」


片目を閉じる。


「モノクルも、必要なときは使う」

「鑑定結果も、共有する」


そして、指を鳴らした。


「これで、条件は対等だ」


ヤヒロは、息を吐いた。


ユイは、短く言う。


「……約束」


「約束」


ツダは、軽く手を上げた。


こうして。


盾の異常性を抱えた男。

レジェンダリーを盗んだ女。

胡散臭い公安。


歪な三人の、仮初めの協力関係が成立した。



そして、津田は楽しそうに付け足す。


「その代わり、面白いもん見せてよ」


ファミレスの照明は、相変わらず明るい。

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