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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
1章:はじまり

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21/57

1章21節

毎日17:30投稿

転移の光が収束すると、

ヤヒロの視界に見慣れた景色が戻ってきた。


習志野駐屯地ダンジョン直結、

地上側ギルド分所。


コンクリート打ちっぱなしの壁。

転移門を囲うように設置された金属製のガードレール。

そして、その外側――


必ずいる者たち。


ギルド職員こと、自衛隊のダンジョン専門部隊員。


「帰還者二名、確認」


淡々とした声。

番号札が掲げられ、

魔素反応測定器が一斉に向けられる。


魔素。

ダンジョン内部に満ちる、正体不明のエネルギー。


生物、モンスター、装備品。

そして人間でさえ、

ダンジョンに長く関わるほど、体内や装備に魔素を蓄積していく。


その量と質は、

戦闘経験や装備の等級、

さらには――異常な力を持つ装備の有無によって、大きく変動する。


魔素反応測定器は、

それを数値として可視化する装置だ。


高すぎれば、危険視される。

低すぎれば、未熟者と見なされる。


そして何より――

規格外の反応は、即座に“管理対象”として記録される。


ヤヒロは、自然に盾を背負い直した。

ごく普通の動作。

何度も繰り返してきた、会社員時代の癖。


(……落ち着け)


装備品はドロップしない。

登録外の装備を所持していても、

即座に拘束されることはない。


だが――

見られる。


それだけで、危険だ。


視線の端で、

ユイの様子を窺う。


フードを深くかぶり、

弓は持っていない。


いや、

持っていないように見える。


魔素反応測定器が、

彼女の前で一瞬だけ数値を跳ね上げた。


「……?」


担当官が、眉をひそめる。


だが、数値はすぐに落ち着く。

基準値内。


「……誤差か」


そう判断され、

チェックは通過した。


ヤヒロは、内心で息を吐く。


(あれ、弓を出してなくても反応するのか)


(やっぱり、危険物だな)


ギルドカウンター前。


簡易的な仕切りと、

防弾ガラス越しの受付。


「本日の潜入ログ、提出お願いします」


ヤヒロは、

携帯端末を差し出す。


潜入時間。

階層。

討伐数。


意図的に薄くした記録。


レア装備の取得欄は、空白。


嘘ではない。

持ち帰っていないのだから。


「随分、浅いですね」


受付が言う。


「ソロですか?」


「はい」


一瞬だけ、

値踏みするような視線。


だが、盾を見ると、

興味を失ったように目を戻す。


「初心者の方は、あまり無理をなさらず」


「ありがとうございます」


形式的なやりとり。


横ではユイが受付をしている。


ギルド職員が、端末を操作する。


その間も、ユイは周囲を見ていない。

だが、すべてを把握しているように見えた。


監視カメラや隊員の立ち位置、出入口の数など。

まるで、地形を読むように。


「確認完了しました」


「……うん」


必要最低限。


それ以上、何も聞かれない。


――聞かれないように、

振る舞っている。


ギルドを出ると、

外はもう夕方だった。


フェンスの向こう。

一般人立ち入り禁止区域。


監視塔の上で、

誰かがこちらを見ている。


「多いね」


ヤヒロが呟く。


「……増えてる」


ユイも、同意した。


「……弓の反応。最近、消えたから」


ヤヒロは、足を止めた。


「消えた?」


「……追跡用の魔素標識」


淡々と。


「……ずっと、見られてた」


「今は?」


「……たぶん、混乱」


一度、完全に消失した信号。

再出現もしない。


それは、最悪の異常だ。


「……だから、しばらくは地上」


ユイは、そう言った。


「……ダンジョン、もう安全じゃない」


ヤヒロは、フェンス越しにダンジョンの入口を振り返る。


管理。

監視。

安全。


それらはすべて、

表向きの顔だ。


「ああ」


盾を背負い直し、

歩き出す。


「とりあえず飯だな」


ユイは、少しだけ間を置いて。


「……うん」


短く答えた。


だがその背中には、

はっきりとした警戒が残っていた。


地上は、ダンジョンとは違う危険に満ちている。


そして――

鋭く光る目は、確かに二人を追っていた。

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