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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
1章:はじまり

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20/55

1章20節

少し短いですが、キリが良いので


毎日17:30投稿

オークを倒し終えたあとも、

ユイは弓を下ろさなかった。


いや、正確には、その向き先をヤヒロへと向けた。


弓身は淡く光り、

まだ完全には消えていない。


ヤヒロが、ぽつりと聞いた。


「さっきの。なんで、あれを最初から使わなかった?」


ユイは、少しだけ間を置く。


視線は、通路の奥。

誰かが来る可能性のある方向。


「……人が、多すぎる」


「見られると、まずい?」


小さく、うなずく。


「……これは、国のもの」


言葉は短い。

だが、十分だった。


ヤヒロは理解する。


(政府管理指定……)


(しかも、弓)


ダンジョン内で唯一、

射程という概念を壊す武器。


それを、

個人が持ち歩いている。


「そりゃ……、使えないな」


「……うん」


モンスタートレインの最中、

あれを一射でも使えば――


誰かが気づく。

誰かが覚える。

誰かが、報告する。


取り締まりは、

ダンジョンの外だけじゃない。


冒険者同士の“噂”は、

公式記録よりも早く広がる。


「じゃあ、なんで俺の前では使った?」


ヤヒロの問いに、

ユイは初めて視線を向けた。


盾を見る。


少し、長めに。


「……その盾」


ヤヒロは、動かない。


「……普通じゃない」


断定。


「……吸う」


「……切る」


「……反す」


一拍。


「……隠してる」


ヤヒロは、苦笑した。


「バレてたか」


「……同じ」


ユイは、そう言った。


「……盗んだ」


ユイは自分を指さした。


「……隠してる」


そして次にヤヒロを指さす。


「……どっちか」


どちらにせよ。


堂々と見せられるものじゃない。


だからこそ。


「……あなたは、言わない」


それは信頼というより、

利害の一致だった。


ヤヒロは、盾を軽く叩く。


「俺も、それを広める気はないよ」


「……知ってる」


短く。


「……だから、使った」


理由は、それだけ。


ユイは弓をしまった。


空間に残っていた殺気も、

完全に霧散した。


しばらく、沈黙。


やがて、

ユイがぼそりと呟く。


「……食べ物、ない」


「は?」


「……保存食。もう、終わり」


ダンジョンに住み着く者の、

現実的な問題。


モンスターは食えない。

水も、限りがある。


「……一度、出る」


「地上に?」


うなずき。


「……補給。それだけ」


ヤヒロは、少し考えたあと――

頷いた。


「じゃあ、一緒に帰ろう」


転移ポータルの先。


地上。


人の目があり、

監視があり、

安全と危険が入り混じる場所。


ユイは、ほんの一瞬だけ迷ってから。


「……うん」


そう答えた。


ダンジョンに住むシーフと、

盾を隠す男。


二人は並んで、

帰還ポータルへ向かった。


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