表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
1章:はじまり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/49

1章17節

祝550PV!


毎日17:30投稿

人の気配。

モンスターじゃない。


複数の重装備。

一定の距離を保っている。


――見ている。


ヤヒロの背中が、ひやりとする。


「……あいつら?」


女が尋ねる。

短く、低い声で。


「……見物?」


「仕掛け人だろうな」


「……納得」


彼女は、姿を見せないまま言う。


ヤヒロの盾が、

ゴブリンの棍棒を受ける。


衝撃が、腕に走る。


――まだだ。


衝撃波反転のクールタイムは、まだ終わらない。


「……時間、稼ぐ」


女の声が、少しだけ近づいた。


一瞬、

ヤヒロの視界の端に、影が映る。


低く、滑るような動き。


次の瞬間、

通路の天井から、石が落ちた。


――罠。


意図的に外されていたものを、

「今」起動させた。


ゴブリンが一斉に足を取られる。


「そんなの、どこで――」


「……住んでるから」


それだけ。


冗談とも本気とも取れない声。


だが、

ダンジョンの内部を“生活圏”として把握している者の言い方だった。


ヤヒロは、盾を強く握る。


腕が、じんと痺れる。


――そろそろだ。


クールタイムが、終わる。


ゴブリンの一体が、

大きく踏み込む。


棍棒が、振り下ろされる。


ヤヒロは、盾を正面に構えた。


衝撃が――

来る。


その刹那。


女冒険者の視線が、

ヤヒロの盾に、吸い寄せられた。


「……それ」


何かに、気づいた声だった。


ゴブリンの棍棒が、盾に叩きつけられた。


重い。

だが、受け止められる。


その瞬間――

ヤヒロの意識の端で、感覚が切り替わる。


衝撃波反転が、戻る。

盾の内側で、何かが解放された。


次の瞬間、

衝撃は砕けるように反転し、

そのまま、叩きつけてきた方向へと返った。


ドン――ッ!!


空気が爆ぜる。


衝撃波が、

ゴブリンの体をまとめて吹き飛ばした。


今度は、群れの中心に向かうよう向きを調整した一撃だ。


前列が、崩れる。

後列が、巻き込まれる。


吹き飛ばされた個体は、

仲間のゴブリンが持つ錆びた片手斧に突き刺さり、

悲鳴すら上げずに沈黙した。


「……っ」


女冒険者が、初めて言葉を失う。


ヤヒロは、息を吐く暇もなく踏み込んだ。


今だ。


盾を、

“受けるもの”から“叩き切るもの”へ切り替える。


切れ味の乗った縁が、

ゴブリンの首元を裂く。


血が飛ぶ。

だが、止まらない。


前に。

さらに前へ。


衝撃波反転は、一度きり。


だからこそ、

作った隙を、使い切る。


女の投擲が、

後方の個体を確実に潰す。


位置取りが、完璧だ。


逃げ道を、塞がない。

だが、包囲もさせない。


モンスターの列が、

ついに崩壊した。


逃げる個体。

立て直そうとする個体。


ヤヒロは、追わない。


代わりに、女が残っていた罠を発動させる。


数秒後、

悲鳴と破砕音が、奥で連続した。


――終わった。


そう思った瞬間だった。


膝が、笑う。


腕が、重い。


息が、追いつかない。


盾を下ろした瞬間、

全身の疲労が、一気に押し寄せた。


「……はぁ……」


背中を、壁に預ける。


女冒険者も、少し離れた位置で止まっている。


だが、

その視線は、ヤヒロを見ていない。


通路の奥。


さっきまで、足音が止まっていた場所。


――動いた。


今度は、隠そうともしない。


三人分の足音。

人間だ。


「……来た」


女が、短く言う。


かつて、

一度殺された相手。

そして一度やり返した相手。


装備は、以前より整っている。


目が、笑っていない。


「モンスター、全部処理してくれて助かったぜ」


「……律儀だな」


「借りは返す主義でな」


一人が、槍を構える。


別の一人が、回り込む。


完全に、狩る側の動きだ。


女冒険者が、一歩下がる。


援護に入るか、

逃げるか。


判断しかねているのが、

背中越しにも分かる。


ヤヒロは、歯を食いしばる。


反転は、まだ使えない。


逃げ道は、狭い。


体力は、底だ。


――ここで来るか。


襲撃者の一人が、嗤った。


「さっきの派手なの、もう一回やってみろよ」


無理だ。


それは、

本人が一番分かっている。


それでも、

盾から手は離さない。


「……逃げろ」


ヤヒロが、女に言う。


一瞬、

沈黙。


「……あなたも」


新たな逃走劇が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ