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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
1章

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16/48

1章16節

毎日17:30投稿

数日後。

ヤヒロは、いつも通り習志野ダンジョンの浅層にいた。


狙いはまだ変えない。

コボルトを中心に、静かに、確実に数を減らす。


盾で受け、

盾で切り、

無駄な音を立てずに終わらせる。


すでに体は、このダンジョンのリズムに馴染んでいた。


残念ながら、あれから特性やスキル持ちのレア装備とは出会えていない。

しかし、時折ドロップするレア装備を盾に食わせることによって、

順調に強化は進んでいた。

また、コモン装備を細々と売っていくことによって、

生計のめども立ち始めたところだった。


そろそろゴブリンのいるさらに奥へ足を運ぼうかと思案しているところだった。


――そのときだ。


少し遠くから、足音が聞こえてきた気がした。


最初は、気のせいかと思った。

だが、次の瞬間には確信に変わる。


「……多い」


足音が、重なっている。

一つや二つじゃない。


コボルト特有の軽い足音に混じって、

もっと荒い、無秩序な音。


ゴブリン。


しかも――

進行方向が、一直線だ。


「……クソ」


背筋が冷える。


モンスタートレイン。

敵を引き連れて、特定の場所に流し込む行為だ。

普通、こんな浅層で発生するようなものではない。

明らかに意図的に行われている。


進行方向は明らかにヤヒロのいる場所だった。


事故じゃない。

これは、狙われている。


脳裏に浮かぶ顔は、三つ。

数日前に、返り討ちにした襲撃者たち。


「あいつら、やりやがったな……」


この数は、さすがに受け切れない。

衝撃波反転にも限度がある。


ヤヒロは即座に走り出した。


逃げる。

通路を選ぶ余裕はない。

とにかく、距離を取る。


だが――

角を曲がった先で、気配がぶつかった。


「っ……!」


人影。


反射的に盾を構えるが、

相手も同時に身構え、距離を取る。


女だ。

ショートカット。

軽装。


――見覚えがある。


数日前、

あの戦いを見ていた影。


「……あんたか」


言葉は短い。

だが、声は落ち着いている。


彼女の視線が、

ヤヒロの背後へと流れた。


次の瞬間、

通路の奥から、獣じみた叫び声が響く。


コボルトの群れ。

その後ろに、ゴブリンの影。


女が、舌打ちした。


「……最悪」


状況を、一瞬で理解した顔だ。


「モンスタートレインだ。俺が狙われている」


「……復讐?」


「たぶんな」


会話は、それだけで十分だった。


利害は一致している。


このままでは、

二人とも飲み込まれる。


「狭い方の通路に誘導して迎え撃つ」


ヤヒロが言う。


女は、一瞬だけ考え、

すぐに頷いた。


二人は、入り組んだダンジョンを走り抜け、狭いが長く一直線が続く通路へと移動した。


「前、抑えて」


女からの短い指示。

だが、迷いはない。


ヤヒロは、盾を構え、立ち止まった。


最前列のコボルトが、飛びかかってくる。


盾で受ける。

衝撃。

まだ返さない。


貴重なクールタイムをここで使うわけにはいかない。


盾の縁が、横に走らせる。


ザリ、と音がして、

コボルトの喉が裂けた。


次、また次へと、盾で受けては切り裂いていく。


背後からは、

女が何かを投げる音がする。


金属音。

悲鳴。


彼女も、戦っている。

音だけで分かる。


「数、減らすぞ!」


ヤヒロが叫ぶ。


返事はない。

だが、動きは合っている。


通路が、死骸で埋まり始める。


だが後ろから、

さらに大きな足音が迫ってくる。


大量のゴブリンたちが、押し寄せてきた。


数が、多い。

想定以上だ。


「……長引くぞ」


ヤヒロは、歯を食いしばる。


ここから先、耐え切れるか。


選択肢は、もう一つしかなかった。


盾を、正面に構える。


戦うしかない。


衝撃波反転を使い、先頭のゴブリンの一撃を返す。

2体を巻き込んで、ゴブリンを吹き飛ばすことに成功した。

しかし、大量のゴブリンを前にしては焼け石に水であった。


ゴブリンの怒号が、通路を満たす。


数が、減らない。

確実に押し込まれている。


ヤヒロは一歩、また一歩と下がりながら盾を振るった。



右からの剣戟を受ける。

左から棍棒を受け流し、首をかき切る。

正面からの突進を押し返す。


だが、限界は近い。

衝撃波反転の再使用までの三十秒が、やけに長く感じる。


背後。

女冒険者の気配は――薄い。


薄すぎる。


さっきまで、確かに後ろにいたはずなのに、

次に気配を感じたときには、位置が変わっている。


「……?」


音がしない。


後ろで戦っているはずなのに、

足音が、消えている。


代わりに聞こえるのは、


――キン

――ガツ


短く、乾いた音。


直後に、

ゴブリンの悲鳴が、一つ遅れて上がる。


「……後ろ、二体減った」


女からの短い報告で、彼女の存在を確認する。


さらにその数瞬後。

左側の壁際から、何かが飛んだ。


小さい刃物。おそらくダガー。


ゴブリンの膝に刺さり、

体勢が崩れたところを、ヤヒロが盾で叩き潰す。


「今の……」


投げた角度が、おかしい。


ヤヒロの盾という遮蔽物越し。

視界が完全には通っていない。


それでも、

「そこにいる」と分かっていなければ、投げられない。


射程感覚が、異常だ。


しかも――

外さない。


ヤヒロは、戦いながら気づく。


彼女は、敵の密度が薄くなるように、場所を狙って攻撃している。


一体倒すと、次の一体が、必ず間に合わない。

そのはずが、彼女の投擲術によって、ギリギリ間に合う程度まで戦えていた。


しかし、それでも群れが、微妙に詰まる。


その直後、

通路のさらに奥で、別の気配がした。



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