1章15節
前話の別視点を描いてみました。
同じ物語を別視点で描くのは初めてなので、矛盾なくできているかどうか心配です。。。。
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――見つかった。
それが、最初の感想だった。
通路の影。
瓦礫の陰。
音も気配も殺し切った位置。
そこに、彼女はいた。
ここは、彼女の“巣”だ。
人が嫌って通らない、
構造が悪く、宝も少ないエリア。
だから選んだ。
だから、生き延びてきた。
それなのに。
盾の男が、振り返った。
一瞬。
ほんの一瞬。
だが――
確かに、目が合った。
「……」
女は、唇を結ぶ。
ありえない。
隠密は完璧だったはずだ。
足音は消している。
呼吸も抑えている。
視線すら、意識的に外していた。
それでも、気づかれた。
(……何者?)
男は、ソロ。
装備は地味。
盾持ち。
値踏みすれば、
襲撃者たちが群がる理由も分かる。
――弱そうに見える。
だが。
彼は、受けた。
真正面から。
斧の全力を。
次の瞬間、
襲撃者が吹き飛んだ。
「……っ」
女は、思わず息を止めた。
反撃ではない。
回避でもない。
“返した”。
受けた衝撃を、そのまま。
そんなスキル、聞いたことはある。
だが、それを実戦で使いこなしている者は、ほとんどいない。
しかも、盾。
続く動きも、無駄がなかった。
盾で押す。
盾で切る。
盾で制す。
殺意は薄い。
だが、判断が早い。
(……慣れてる)
何度も潜ってきた動き。
死に戻りを前提にした雑さが、ない。
さらに彼は、不可解な行動を始めた。
襲撃者らの荷物を漁ったかと思うと、それらを自分の盾に押し当て始めたのだ。
溶け、吸い込まれていく装備たち。
ほかの武器を吸収する武器。
そんな武器、今まで聞いたこともない。
(新たなレジェンダリー装備?・・・欲しい)
そして――
最後に、こちらを見た。
隠れているはずの自分を。
「……」
女は、身を引いた。
追ってはこない。
声もかけない。
だが、
“見えていた”という事実だけが、残る。
通路の奥へと消えながら、
女は背中の弓に手を添えた。
布に包まれたそれは、
決して表に出してはいけない代物。
政府管理の、微睡の弓。
盗んだ日から、
彼女はダンジョンに住み着いている。
外に出れば、追われる。
ここにいれば、殺される。
だから、影になるしかなかった。
(……盾の男)
名前は、知らない。
だが、忘れない。
自分に気づいた、
初めての冒険者。
しかも、
襲撃者を三人、返り討ちにした盾持ち。
女は、無意識に呟いていた。
「……厄介」
だがその声には、
ほんのわずか――
警戒と同時に、興味が混じっていた。
影は、再び沈黙する。
だが、
盾の男と、
もう一度交わる未来だけは、
なぜか、はっきりと予感できた。




