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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
1章

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14/46

1章14節

毎日17:30投稿

習志野駐屯地ダンジョン。

何度目かの侵入だった。


もう、転移門をくぐるときに息を呑むことはない。

足運びも、盾の構えも、自然に体が動く。


壁際には、倒れたコボルトの死骸がいくつか転がっていた。

数は、覚えていない。

いちいち数える段階は、とうに過ぎている。


首元が裂け、

胴が抉られ、

どれも致命傷だ。


「……悪くない」


ヤヒロは、盾の縁を軽く指で弾いた。


刃はない。

だが、振り抜いたときの感触は、確実に“切っている”。


切れ味上昇。

数字だけの補正ではない。


「使い捨てる盾」という守りだけではない武器の使い方そのものが、

いつの間にか、体に馴染んでいた。


そのとき――

背後から、足音。


三人分。

隠す気のない、慣れた足取り。


「……いたぞ」


振り返ると、そこにいたのは、見覚えのある顔だった。


ソロで潜り始めた頃。

一度、命を奪われた相手。


装備は、前より少し良くなっている。

動きも、洗練されている。


だが、視線は変わらない。


「また一人か」


「盾だけって、相変わらずだな」


「今度も、逃げるなよ」


三人はニヤついた顔で、武器を抜きながらゆっくりと近づいてくる。


逃げ道はある。

だが、ヤヒロは動かなかった。


逃げ続ける時期は、もう終わっている。


「……来い」


ヤヒロは短く、そう告げる。


最初に動いたのは、斧使いだった。


大振り。

殺意を隠さない一撃。


ヤヒロは、盾を正面に構えた。


衝撃。


腕に、重さが走る。


――耐えた。


「【スキル:衝撃波反転】!」


瞬間、盾の奥で、何かが反転する。

打ち込まれた力が、裏返る。


斧使いの体が、

自分の攻撃を受けたかのように吹き飛んだ。


「……は?」


男は壁に叩きつけられ、

そのまま動かなくなる。


残る二人が、明らかに動揺した。


「今の……」


「スキルか」


ヤヒロは、間合いを詰める。


クールタイムは三十秒。

次を使えるまで待ってくれる相手ではないだろう。

だが、十分だ。


二人目に対し、盾を横薙ぎ。


ザリ、と嫌な音。


刃のないはずの縁が、

鉄鎧に守られていない関節を裂く。


相手は、悲鳴を上げて崩れ落ちた。


最後に、両手剣の男が、無理やり距離を詰めてくる。


だが、動きが雑だ。恐怖が、混じっている。

これまで、反撃をしてこない初心者ばかりを狙っていたのだろう。

手痛い反撃を食らった動揺が、こちらにもありありと伝わってくる。


盾で受け、

押し返し、

そのまま――叩き潰す。


三人目が、倒れた。


誰も、もう立ち上がらない。


ヤヒロは、盾を下ろし、気絶する三人を縛り上げた。

自分から手を下すことには、あまり気が進まなかった。

ほかの冒険者か、モンスターにでもやられてしまえばいい。


ただし、彼らからレア装備をいただいておくことも忘れない。

今まで自分たちが散々やってきたことだ。

逆に自分たちがやられたからといって、文句を言える立場ではないだろう。


彼らの装備はダンジョンの制約上剥ぎ取ることはできなかったが、

バックパックからは大量のレア装備をいただくことができた。


「またこれで強くなれる」


だが、量が問題だった。

これをそのまま持ち運んでいては、また別の冒険者らに狙われることになるだろう。


幸い、ここはほかの冒険者が立ち寄らない、ダンジョンの入り組んだ先だ。

ヤヒロは、その場で「使い捨てる盾」にレア装備を食わせることにした。


キン。

キン。

キン。

・・・・・・


「使い捨てる盾」の強化を終えたヤヒロは息を整え、周囲を見渡す。


――視線。


通路の奥、影の中。


女の冒険者が、一人立っていた。


軽装だが、粗末ではない。

武器も構えていない。


逃げる様子もない。


ただ――

今の戦いを、最初から最後まで見ていた目。


視線が、交わる。


一瞬。


女は何も言わず、

音も立てずに、闇の向こうへ消えた。


「……見られたか」


面倒だ、と思う。


だが同時に、

胸の奥が、わずかにざわついた。


この盾の戦い方は、もう隠せる段階じゃない。

実際、戦ったこの三人には手の内がばれてしまっている。


その内、この盾の秘密もばれてしまうことだろう。

その時はその時だ。


そうなってもいいように、今はできるだけ早く強くなることが最優先だろう。

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