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死に戻りが許されるダンジョンでは、バトルロワイアルが日常です。  作者: 昼ライス
1章

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12/42

1章12節

毎日17:30投稿

帰還後、ヤヒロは真っ直ぐギルドへ向かった。


鑑定窓口。

料金は一件、千円。


安くはない。

だが、確実だ。


鑑定方法は単純だ。


専用の鑑定アイテムを装備に触れさせるだけ。

数秒後、

カウンター脇の端末から、

レシートのような紙が排出される。


そこに、結果が印字される。


内容は、

鑑定を依頼した本人しか見ない。


紙を渡すことも、

見せることも、

捨てることも自由。

情報は、金で秘匿できる。


ヤヒロは、長剣を差し出した。


数秒。


カシャ、と乾いた音。


吐き出された紙を、すぐに手に取る。


そこには、簡潔な文字列。


―――――

装備名:長剣

等級:レア

特性:切れ味上昇(小)

スキル:なし

―――――


「……当たりだ」


小さく、息を吐く。


派手ではない。

だが、確実な強化。


他の二本も鑑定したが、

特性もスキルもなし。


問題ない。

本命は、この一本だ。


ヤヒロは、紙を折り、ポケットにしまった。

誰にも、見せない。



その夜、帰宅後。

ヤヒロは、すぐに盾を取り出した。


「使い捨てる盾」。


もう、見慣れたはずの無骨な外見。


だが、

今ではそれが、異様に頼もしく見える。


長剣を、盾に当てる。


キン。


いつもより、少しだけ、音が澄んでいた。


剣は、溶けるように消える。


刃も、柄も、何一つ残らない。


盾は、何も語らない。


だが触れた感触が、わずかに――鋭い。


気のせいかもしれない。

だが、ヤヒロは確信していた。


「……乗ったな」


その夜は、早く布団に入った。


珍しく、

夢を見なかった。




翌日。


ヤヒロは、盾を抱えて再びギルドを訪れた。


鑑定料、千円。


盾を差し出す。


数秒。


レシートが、排出される。


ヤヒロは、

一呼吸置いてから、それを取った。


―――――

装備名:使い捨てる盾

等級:レア(変質)

特性:切れ味上昇(小)

スキル:なし

―――――


「……」


思わず、笑いそうになるのを堪えた。


確かに、書いてある。


切れ味上昇。


盾に。


武器の特性が、

間違いなく、継承されている。


しかも、等級がレア装備へと更新されている。


紙を畳み、ポケットへ。


誰も、何も知らない。


ギルドを出ると、外はいつも通りの朝だった。


だが、ヤヒロにとっては違う。


――これで、証明された。


この盾は、

特性も、選り好みせず喰らい、その身に宿す。


あとは、どれだけ集められるか。

どこまで、隠し通せるか。


「たくさん食わせてやるからな」


ヤヒロは、盾を抱え直し、静かにダンジョンへと歩き出した。






ヤヒロは、浅層でもう一段だけ奥へ進んでいた。

これまでなら、避けていたエリアだ。


理由は一つ。


――コボルトが出る。


小柄だが、動きが早い。

スライムのように受け潰すだけでは済まず、

サラリーマン時代では、盾役として時間を稼ぐ相手だった。


通路の先。


乾いた足音。


甲高い鳴き声。


現れたのは、二体のコボルト。

錆びた短剣と、粗末な槍を持っている。


「……来たか」


ヤヒロは、盾を構えた。


だが、

これまでのように“受ける構え”ではない。


盾を、わずかに傾ける。


刃を構えるように。


自分でも、無意識にそうしていることに気づき、

一瞬、戸惑った。


――切れるのか?


問いは、次の瞬間に消えた。


一体目が飛び込んでくる。


短剣を振り下ろす軌道。


ヤヒロは、踏み込んだ。


盾を、横に振る。


「――ッ」


鈍い音。


だが、いつもの“叩く感触”ではない。


何かが、裂けた。


コボルトの首に、一線の傷が走る。


浅い。だが、確実に――切れている。


コボルトは、そのまま倒れた。


「……切れた」


思わず、呟く。


二体目が、動揺したのが分かった。


距離を取り、槍を構え直す。


これまでなら、ここからが面倒だった。


だが、ヤヒロは、前に出た。


突きを、盾で受ける。


金属音。


そのまま、

受け流すように盾を返す。


刃のないはずの縁が、

槍の柄を削り、

腕を裂いた。


悲鳴。


コボルトが怯んだ、その一瞬。


盾を、振り抜く。


今度は、迷いなく。


胴体に、斜めの一線。


血が噴き、

コボルトはそのまま崩れ落ちた。


静寂。


ヤヒロは、盾を見下ろす。


血が付いている。


だが、

刃こぼれも、欠けもない。


「……これは」


ただの防具じゃない。


殴る盾から、

斬れる盾へ。


戦い方が、変わった。


これまで、

コボルトは“時間を食う敵”だった。


受けて、引いて、逃げるか、倒すかを迷う存在。


それが今は――


「一対一なら、問題ない」


いや。


複数でも、

立ち回り次第で、十分に勝てる。


ヤヒロは、息を整えながら歩き出す。


盾を、自然に構え直す。


もう、迷いはなかった。


この盾は、

受けるだけの道具じゃない。


切って、倒す。


その選択肢が、

確かに、自分の手の中にある。


習志野ダンジョンの空気が、

ほんの少しだけ、軽くなった気がした。


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