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異世界に行ったら死神になった件。  作者: 紫ヶ丘


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魂の導き


 「ナナ、動きを止めて」



 ルミエールの言葉にナナさんが弓を構えたと思ったら、ギィという錆びた金属音みたいな鳴き声をあげた骨イノシシが倒れた。


 骨盤あたりに矢が突き刺さっているので、俺の目では見えないくらいの早打ちをしたんだろう。



 「さぁ、サンズくん。初戦闘だよ、頑張って!」


 「サンズくん、先ずは落ち着いて。私の矢で絶対に獲物は動かないから。目標をしっかり視認してスキルを唱えるのよ」


 「ほら深呼吸、深呼吸!父さんやヨーゼフさんもいつでも動ける位置にいるからさ、思いっきりやっちゃえよ!」



 皆が場を和ますように声援を送ってくれる。


 これだけ御膳立てしてもらっているのだから、後はオレが勇気を出すだけだ。

 頼むよ、と誘いの大鎌をひと撫でしてから掲げる。



 「いきます!──魂の導き!!」



 オレの言葉に応えるように大鎌の刃から黒い光が放たれた──



 「ご主人、お見事にゃ!」



 ぶーにゃの声に恐る恐る目を開ける。



 「ど、どうなった?……ごめん、オレ目をつむっちゃって」


 「ご覧の通りにゃ」



 ぶーにゃが骨イノシシがいた辺りを指し示す。

 ナナさんの矢の傍にコロンとした石が落ちている。



 「黒い小石?」


 「ああ、これが闇の魔石の欠片だ。欠片を集めると結合して闇の魔石になるんだよ。この大きさだと後四つは必要だな」



 ヨーゼフさんが欠片を拾って渡してくれる。

 オレが初戦闘で腰が抜けかけて動けないのを察してくれたようだ。



 「あ、ありがとうございます」



 欠片はほんのり温かく、中心あたりに小さな光が灯っている。

 何だかすごく異世界っぽい。



 「サンズくん!初勝利おめでとう!君のスキルはドレイン系だったんだね!」



 ルミエール達が惜しみない拍手をしてくれる。

 少し気恥ずかしいけど、こうやって分かりやすく称賛する事で、オレに自信を持たせてくれようとしてるんだと思う。

 


 「ドレイン系?」


 「うん。サンズくんがスキルを発動したら大鎌が光って魔物から何かを吸収したからね。普通なら残る死体も綺麗さっぱりなくなってるし、ドレイン系で間違いないと思うよ」


 「多分あれはゴーレムでいうコアを吸収したんだと思うにゃ。だから存在を維持できなくなって消滅したんだと思うにゃ」


 「……ドレイン系だとしても強すぎないか?まだスキルレベル1なんだよな?」


 「やーね、親方が大鎌にスキル補助の祝福があるって言ってたじゃないの。良いなぁ、私も祝福付きの武器がほしー!」


 「お前、この間買い換えたばっかだろ」


 「もちろんこの子も気に入ってるわよ?でもやっぱり羨ましいんだもの、仕方ないでしょ」



 ヨーゼフさん達の軽口の応酬を聞きながら、スキルについて感じたことをぶーにゃに聞いてみる。



 「……ぶーにゃ、オレ思うんだけど、魂の導きって、もしかしたら誘いの大鎌専用のスキルかもしれない」


 「どうしてそう思うにゃ?」


 「オレみたいな超初心者でもあっさり倒せたのって、初期装備のセット効果だと思うんだ。ほら、ルミエールもセット効果が強いからそのままで良いって親方に言われてたし、もし魂の導きが誘いの大鎌専用スキルだとしたら、スキル補助の祝福が付いてるのも納得できるなって」


 「確かに、言われてみればあり得る話にゃ」


 「あっ!じゃあこれ使ってみる?主にEランク冒険者が使ってる鋼鉄の鎌。俺【商人】だから最初からアイテムボックスに幾つか装備が入ってたんだ。これでもスキルが使えたら専用スキルかどうかが分かるだろ?サンズとはお得な取引をさせてもらったし、プレゼントするよ。……実はさ、【商人】はウィン・ウィンか、俺に有利な取り引きをする程経験値が貯まるんだけど、有利過ぎても駄目なんだ。だから受け取ってもらえたら助かる」



 ハッチは商人だと言うけど武器の扱いには慣れてるんだと思う。

 アイテムボックスから取り出した鎌を持つのがオレよりも上手いから。


 誘いの大鎌は、迫力満点のかなり凶悪な武器だけど、へっぴり腰のオレが持つとコスプレ武器みたいに見えてしまうのでちょっと申し訳ない。



 「そ、そう?それなら遠慮なく使わせてもらうよ。……け、結構重いね?」


 「まぁ武器だからね。でもサンズは鎌術持ちだからそれでも多少軽量化されてるはずだぞ」



 軽量の祝福って意外と侮れない効果なんだな。



 「ご主人、移動中はアイテムボックスに入れておいた方がいいにゃ。森は足場が悪いし武器も重かったら体力を無駄に消費してしまうにゃ」


 「僕もそれがいいと思う。スキルを確認するだけだし、一度見たら思うだけで取り出せるようになったんだよね?フォローは僕達がするから大丈夫だよ」


 「その通り!まだ冒険は始まったばかりなんだから、無駄に体力を使うのは良くないわ。体力を温存しつつ、ペース配分を覚えていきましょ」



 やっぱりこのローブの長さがネックなんだよね。

 オレがまだ成長期だから大きめに作られてるのかな?

 だとしたら裾が余らないくらい背が高くなるってこと?

 俄然やる気が出てきた。



 「オレ、道中もだけど、町に戻ったら本格的にローブの足捌きの練習をします!」


 「それよりベルトをした方が楽じゃねーか?何ならこの辺のツルで編んでやるけど?こんな風に」



 ヨーゼフさんが傍の木に張っていたつる植物をぶちぶちと千切って編み込んでいく。

 どんどん編み上がっていくベルト。

 ヨーゼフさんは器用なんだな。



 「それが親方に服と靴以外は装備が出来ないって言われたんです。だからベルトも駄目なんじゃないかなって」


 「へぇ、やっぱり祝福付きは一癖有るんだな。でもツルで編んだ紐みたいなもんだぞ?これも装備扱いになるのか?ま、一回試してみろよ」



 あっという間に完成したつるベルトは端の処理も完璧で十分商品として売れそうだ。



 「ありがとうございます。さっそく使わせてもら──」


 「おや」


 「まあ」


 「……祝福付きの成長型装備ってヤベーな」


 

 ぐるりとベルトを腰に巻いた瞬間、突然ローブの裾がしゅるんっと縮んだのだ。


 とても歩きやすくなったけど、今の反応、まるで意思を持ってるみたいだった。

 成長型装備ってこういう物なのかな?



 「すみません、別の事で使わせてもらいます」


 「いや、面白いもん見れたし、気にすんな」


 「ご主人、ローブがこれなら多分武器も似たり寄ったりだと思うにゃ。でも一応試してみるにゃ」


 「うん」


 「ねぇサンズくん、アイテムボックスの中に鋼鉄の鎌、ちゃんと入ってる?勝手にポイ捨てされてない?」


 「ハッチからもらった物ですし、流石にそれはないですよ。……あ、はい。ちゃんと入ってますよ」



 ……さっきと並びが変わってる事は伏せておこう。

 駄目だよ?本当に勝手なことは止めてね?と鋼鉄の鎌を次ページに追いやったかもしれない誘いの大鎌に心の中でお願いする。



 「サンズくん。右方向、今度は悪霊タイプの魔物だよ。スキルの準備して」


 「は、はい!いきます!魂のみひぃ~っ!?」



 先程と同様、魔物に向けて鋼鉄の鎌を掲げたオレがスキルを口にした瞬間、まるでイリュージョンのようにしゅるんっとその姿を誘いの大鎌に変えて、刃から黒い光を放ったのだ。


 心臓が止まりそうなくらいの衝撃を受けたオレの手の中で、どうしました?あなた最初から誘いの大鎌を握っていましたよ?とでも言わんばかりにしっくりくる柄の感触に固まってしまう。



 「ご主人、しっかりするにゃ。アイテムボックスに鋼鉄の鎌があるかを確認して欲しいにゃ」


 「え?あ、うん。……あれ、えーと、おかしいな?なくなってる」


 「やっぱりにゃ。その大鎌の仕業にゃ。ご主人が鋼鉄の鎌を掲げた直後、腕輪から飛び出た大鎌が吸収したのにゃ。まさに早業、思わずぶーにゃは感服してしまったにゃ」



 え?

 腕輪から飛び出したの?

 勝手に飛び出すとかありなの?

 


 「……すげーな。魔物だけじゃなく武器も食うのか」


 「何引いてんのよ、魔物を吸収する事で強くなるってことでしょ?一石二鳥じゃないの。私も親方に言って成長型装備を探してもらおうかしら?」


 「はい、闇の魔石の欠片。魂の導きは、サンズくんの推測通り、その大鎌専用スキルだと思った方が良さそうだね。威力は申し分ないし、懸念だったサンズくんが反応出来ない魔物に対しても自動で発動してくれそうだ。頼もしい相棒だね」



 頼もしい相棒。

 そっか。

 そうだよね。

 ビビりなオレを支えてくれる頼もしい相棒だ。



 「ありがとう。うん、かなりびっくりしたけど、オレみたいな平和ボケした超初心者には、このくらい頼もしくないと、とてもじゃないけど戦えないから、この三つが初期装備でありがたいよ」



 一瞬ホラー系にジャンルが変わったのかと思ったけど、剣と魔法のファンタジー異世界なら、これくらいきっと当たり前なんだろう。


 これからもよろしくと柄を撫でる。



 「さぁどんどん進むぞ!日が暮れる前に野営予定地にたどり着きたいからな」


 「はい!」



 その後、先程までのエンカウント率の低さは何だったの?と言わんばかりに、次から次に現れる魔物。


 骨、骨、ガス、骨、ガス、ガス、幽霊、骨、ガス、ゾンビ……。



 「ごめ~ん!多分これ、私の大声で誘き寄せられたヤツだわ」



 後方から申し訳無さそうなユンリーさんの声が聞こえるけど、オレは失神しないようにするだけで精いっぱいだった。


 異世界冒険者生活、オレには刺激が強すぎる!



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