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異世界に行ったら死神になった件。  作者: 紫ヶ丘


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冒険者登録


 冒険者ギルドは入って右手側にテーブルと椅子が設置されていたけど、酒場と併設していないので、呑んだくれた冒険者に絡まれるイベントは起きなかった。


 昼過ぎという時間のせいか、冒険者の数は少なく、六つある受付の四箇所が休止中。

 一つは強面冒険者達が並ぶ化粧の濃い受付嬢の列、もう一つは誰も並んでいないおじさんの列。


 迷うことなくおじさんの受付に進むと、隣の無骨な冒険者に鼻で笑われたけど、厚化粧に誤魔化されている彼らの方をオレは笑いたい。



 「ようこそ、アッチルの町に。ご用件は何でしょう?」



 ここアッチルっていう町なんだ。

 まるで門番みたいな台詞だけど、毎回言うのかな?



 「冒険者登録に来ました」


 「はい。冒険者登録ですね。ではこちらの冒険者登録書に必要事項を記入してください」


 「ご主人、うっかりミスは駄目にゃ」


 「うん、分かってる」



 この世界では名前が重要視されていて、本名を隠すために必ず二つ以上の名前を持っているのだとぶーにゃに教えてもらった。

 例えるなら戦国時代に諱ではなく通称を用いる感じ。


 ルミエールはともかくロックさん一家の名前が安易だと内心思っていたので、こっそり納得した。


 結婚したら名前はどうなるのか聞いたら、珍しくロックさんが答えてくれた。

 夫婦でもお互いの本名を知っているのは半数ほどで、名字も、夫側のものを名乗るか、近所に同姓同名や似た名前の人がいれば、新たに作るそうだ。


 ロックさんは親戚が多いので、ナナさんと一緒に新たなファミリーネームを作ったけれど、ルミエールに同行すると決めた時に捨てたらしい。


 だからロックと呼び捨ててもらって構わないと言われたけど、両親より年上の人を呼び捨てるのは気が咎めるので、引き続きさん付けする事で話がついた。


 サンズ表記の理由が分かって少しスッキリしたけど、何故数ある中でサンズなのかは分からないままだ。



 「あの、一応記入したんですけど、書くとこ三つだけですか?」



 冒険者登録するのに必要なのが冒険者ネームと年齢、性別の三つだけとかザルすぎない?

 イメージ的には職業とかスキルを書かされそうなのに。



 「はい、三箇所であってます。では書類をお預かりしますね。──はい、問題ありません。続いてこちらの水晶に触れていただけますか?」



 名札を確認。

 おじさん改めソウさんが、奥から昔テレビで見たアメジストの置物の水晶バージョンを受付台によいしょと置いた。



 「これ、何ですか?」


 「冒険者登録機です。手を触れると個人情報を読み取り自動で唯一無二の冒険者カードを作成してくれる優れものです。カード情報は名前と冒険者ランク、犯罪歴以外は本人にしか見えない仕様ですのでご安心ください。ギルドによって形が違いますが、作成者の気まぐれですので、性能は同じです」


 「へぇ、便利ですね」



 どうせならとゴツゴツした部分に触ると、ピカッと光って、ぺっとカードが吐き出された。

 床に落ちそうなところをぶーにゃがナイスキャッチ。



 「す、すみません。仕事は確かなんですが、うちの魔道具はやんちゃでして……。たまにこういう事をするんです」


 「いえ、気にしないでください。仕事をこなすだけ立派ですよ」


 「ありがとうございます。では冒険者カードの確認をお願いします」



 ぶーにゃから冒険者カードを受け取り確認する。



 冒険者ランク:F

 名前:サンズ

 ※詳細を表示する場合はダブルクリックしてください。



 ダブルクリック?

 もしかして作成者はオレと同じ世界から来たのかもしれない。

 試しにダブルクリックしたらステータス画面と同じ表示だった。



 「はい、大丈夫です」


 「冒険者ランクはFから始まり、依頼を達成すると自動的にE、D、Cと上がっていきます。駆け出し冒険者保護法により、サンズさんは現在Fランクの依頼しか受けられませんが、パーティー内にCランク以上の方がいましたら、Eランクの依頼まで受けられます」


 「Aランクのロックだ。サンズとパーティーを統合したい」



 おお~ロックさんはAランク冒険者なのか。

 見るからに強そうだもんね。



 「お預かりします。──はい、確認しました。パーティーのリーダーはどなたにしますか?」


 「サンズくんで」


 「え?オレ?」


 「うん。最初に決めたじゃないか。今日からサンズくんがリーダーだって。皆も構わないね?」


 「もちろんにゃ」


 「異議なし」


 「頑張ってね」


 「ファイトー!」


 「パーティーランクがBランクに下がりますがよろしいですか?」


 「問題ない」


 「はい、では手続きを始めます。──パーティーの統合が完了しました。以上で冒険者登録は終わりですが、初回登録者の方にはいくつか注意事項がありますのでもう少しお付き合いください。先ず、この町には東西南北にそれぞれ門があり、東がスライム、南がゴブリン、西がゴーレム、北がアンデッド系の魔物が主に出てきますが、奥に行くほど魔物の種類が増え、強くなります。町近くの低ランク地帯でも稀にはぐれの魔物が出ますので、外に出る際は準備万全でお願いします。最後にこちらがギルドと提携している武器防具屋、宿屋、雑貨屋で、このチラシと冒険者カードを提示すると割り引きサービスが受けられます。サンズさん、冒険者を長く続ける秘訣は命大事にです。お話は以上です。お疲れ様でした」


 「はい。ソウさん、丁寧な説明ありがとうございました。頑張ります」


 「またのご利用をお待ちしています」


 「サンズくん、どんな依頼があるか見に行こう」


 「ご主人、スタートダッシュを決めるためにも依頼は吟味が必要にゃ」


 「うん。別にスタートダッシュする気はないけど──え?」



 皆と依頼が掲示されている壁に向かおうとしたら、隣の受付嬢に依頼書を持ってきた男女コンビの頭上に57と59という緑色の数字が浮かんでいたのだ。


 気になって視線で追うと、二人が受付嬢と話すや否や、その数字がぐにゃりと歪んで、赤色の3に変わってしまった。


 ゾクリと悪寒が走る。

 もしかして、死神の目が発動した?


 だとしたら、あの数字は寿命?

 あの二人は三年後に死ぬってこと? 

 否、三年後じゃなく三日後かもしれない。

 だって意味深に数字が点滅しているんだ。


 オレの声には気づかず、受付嬢と話し込んでいる二人。

 ここで立ち止まるのは目立ちすぎるので、ぶーにゃに頼んで聞き耳を立ててもらった。


 FランクとEランク用の依頼書を見てみるが、さっきの数字が気になって頭に入ってこない。

 皆にはオレの職業が死神だと打ち明けているけど、どうやらこの世界には死神がいないようで、ネクロマンサー系の職業だと思われている。

 まあ当たらずとも遠からずだと思う。


 程なくぶーにゃが戻ってきた。



 「ご主人、あの二人はアンデッド系の魔物がドロップする闇の魔石を納品する依頼を受けていたにゃ」


 「受付嬢から追加で依頼されてたり、怪しい感じの話はなかった?」


 「なかったにゃ。このペースだともうすぐBランクに昇格ですね~って受付嬢が言うと、二人がランクが上がったら次の町に行くって話してたくらいにゃ」


 「うーん」


 「サンズくん、あの二人これから買い出しに行くみたいだよ。外に出るのは明日だと話していた」


 「何か気になる事でもあるのか?アンデッド系の討伐は準備さえ万端ならそこまで難しくないぞ?」


 「ええ、見た感じ納品依頼も初めてではなさそうだし、イチャつける気楽さもあるから問題なさそうだけど」


 「サンズ、気になる事があるなら言っちゃえよ!皆でアイデアを出し合えばいいじゃん!」


 「とりあえず場所を移すにゃ。これ以上居たら目立ってしまうにゃ」



 ぶーにゃの言葉で、先ず当面の宿を決めて、そこで話し合う事になった。

 上手く説明できるかな。



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