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(15) 宰相は反撃したい

活動報告でお知らせしていましたがカミーユが木曜日にお引越しになります。

週末になるべく作品をアップして行きたいと思っているので。

よろしくお願いいたします。

 宰相であるアルデルタ・シンクレアが一人で舞踏会にやってくると、そこにいる人達の反応は二つに分かれる。一つは近くに来て挨拶する者達、もう一つはむしろ離れてひそひそと話を始める者達である。

 この冬の舞踏会はデビュタントも兼ねているため、穏やかに談笑する人々の間に、緊張した顔の若者があちらこちらに見受けられた。それらの光景を優雅な音楽が全て包み込んでいる。


 宰相としては、一貴族としての出席ではあるが、何か起こらないよう目を配る必要もある。挨拶の輪から上手く逃れると、奥に立つ近衛隊長の所へと向かった。会場全体を見渡していた近衛隊長は、アルデルタを見ると目礼をする。

「今日の舞踏会はどうだね?」

「今のところ問題はありません。普段でしたらデビュタントの令嬢が2、3人具合が悪くなる頃合いなのですが、今回はそれもなく。」

「ほう。」

 アルデルタが眉を上げると近衛隊長が不思議そうな顔をする。

「カミーユ殿のお働きと伺っておりますよ。ドレスに工夫をする事で、息苦しさが軽減されるとか。」

 カミーユが出来たばかりの友人の為に、動き回っていたのは知っていたが、それがこれほど広まっているとは驚きだ。

 足さばきも軽やかに動き回る女性達の姿を目で追って、アルデルタも頷いた。


「確かに、今日はいつもより女性達が生き生きしているように見えるな。ドレスは帝国流が流行りのようだな。」


 女性達は腰のあたりから膨らんでいるドレスを着ている。その膨らみがウエストの細さを強調しているのだ。王妃が流行らせているのだろうな、と宰相は予測している。


「カミーユ殿が舞踏会に出席されたら、別の意味で救護室が一杯になりそうですが。」


 冗談交じりで付け加えられた一言に、アルデルタも苦笑する。市井で今流行しているのは、カミーユの刺繍がされた小物類である。劇場では、カミーユをモデルにした主人公が髪を切って立ち上がるシーンで涙を流す人も多いと聞く。同じような勇気が欲しいと小物を買い求める者が後を絶たないらしい。


「王族の前に姿は出せないからな。来て君の仕事を増やしても悪いだろう。」


「残念です。今のカミーユ殿にはお会いしなくても惹き付けられてしまう魅力に溢れておりますからな。次に何が来るのだろうとつい期待してしまいます。」


「……娘はやらんぞ。」


 近衛隊長との会話を切り上げ、アルデルタは広間の中央へと進んでいった。これから王族の入場だ。宰相としては、先頭で迎える義務があった。


「王妃殿下、ご入場」

 高らかに告げられた声に導かれるよう、全員が頭を下げた。しかし、頭の中は、同じことを考えているだろう。

 王は、どうしたのだ、と。



「皆の者、面をあげよ。」


 その声でアルデルタは顔をあげ、豪奢なドレスに息を呑んだ。

 赤を基調としたドレスには、宝石が散りばめられているのか、キラキラと輝いている。手にした扇子にも飾り毛が多くなんとも豪勢だ。


 あれで一体いくらかかるのか。国家予算の配分を頭の中で計算しながらも、アルデルタは表情を崩さない。


「陛下は、本日体調がすぐれぬゆえ、妾のみが参った。せっかくのデビュタントが取りやめとは縁起が悪い。気にせず舞踏会を続けよとの仰せだ。」


「国王陛下の優しき御心に一同感謝いたします。」


 アルデルタが広間を代表してそういうと、全員が一緒に頭を下げる。その様子を見て、王妃は満足気に頷いた。


「始めよ」


 その一言で、音楽が華やかなものへと変化する。広間の中心には空間が作られた。王妃が王族の椅子に腰を下ろすと、デビュタントの娘や息子を連れた貴族達が挨拶に列をなした。今日は成人する彼らが主役なのだ。アルデルタは彼らを見守り、王妃の側に待機していた。


 やがて列が終わった頃、王妃が席を立つ。


「皆の者に話がある。陛下の体調が治るまでの間、妾が代理としてこの国の取りまとめを行うこととなった。宰相の娘も女ながらにその才に恥じぬ働きをしていると聞く。私も何もしないではいられないだろう。その旨、しかと伝えておく。」


 王妃の言葉に、宰相へとそこにいる全員の視線が向かう。彼がどう答えるかに、この国の方向がかかっている。寒い日ではあるが、礼服の下、背中に汗が伝うのがわかった。


 今まででも国王が倒れ、王妃が代理を務めたことは前例がある。しかし、それは王太子が幼い場合が多い。現在王太子は王弟殿下と一緒に帝国との境界を守る仕事についている。彼を呼び戻せば、帝国皇帝の娘との婚約を迫られるのはわかっている。どちらをとっても、帝国に飲み込まれていく未来しか見えない。


 アルデルタの視線がふと、王妃のドレスの脇を捉えた。見えないように隠してはあるが、カミーユが行う仕掛けと同じものが見えた。どうやら王妃も無視はできなかったようだ。


(それなら、カミーユが作り出したこの希望の中に、未来を託してみるか。)


 アルデルタは、深く響き渡る声で応じた。


「王妃殿下自ら、女性が働くことを奨励してくださるとのこと。誠に嬉しく存じます。であれば、この場にお集まりの皆様に、私からも宣言いたしましょう。我が娘カミーユ、そしてヴェリテ嬢が示した成果を鑑み、我が国はこれより正式に『女性文官』の官職を制定し、その道を広く開放いたします。」


 静まり返る会場に、宰相はわずかに口角を上げて付け加えた。


「王妃殿下。その第一歩を貴女様が踏み出されること、このアルデルタ、心より歓迎いたしますぞ。」


 騒めきの中、忌々し気に自分を睨む王妃の視線を躱すように、アルデルタは丁寧に一礼した。



最近ちょっとコメディー要素が減っております。カミーユが出てこないと真面目になってしまいます。


読んでくださり、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
素敵( ノ^ω^)ノ女性がイキイキ出来る社会ゎ 明るく華やかで(*`艸´)賑やかょね?
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