表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/50

DAY6 一宿一飯と長い3日間

薄闇の中で目が覚めた。

納屋の天井に走る(はり)

乾いた木の匂い。毛布の温度。


この世界に招待されて、まだ3日目。

もう何日も寝ていない様な、そんな久しぶりの安堵感(あんどかん)


……生きてる。腹も満ちてる。

昨夜の肉とスープが、まだ

体の中で温かい。


「うまかったな……」

声が小さく漏れる。

安心って、味がするんだな。


しかし満たされた心と胃袋が

夢では無い超現実的な何処かだと、突きつけてくる。


食事と十分な睡眠のおかげで頭の冴えは良い。

さぁ、今のうちに状況整理だ。

感情の波を一度岸に揚げて、

頭の中経験と体験を並べ直す――。


スマホを見る。

黒い画面に自分の顔。

腫れぼったい目。寝癖。いつも通りだ。


通知は静か。新着なし。

アプリを開く。

BESTIARY(モンスター図鑑)の表示は一枚だけ。

ウォーカー(弱)。弱点は頭。

昨日の血痕が棍棒(こんぼう)に残ってる。


スマホのチュートリアルを確認する。

(拠点の作り方…)


ゲームと拠点の作り方は若干?異なる。

クラフト機能はあるが、

そもそも一から建築する前提が無い。


廃屋を拠点にする方法…。


ペグ四本で囲み、家中を掃除。

ゾンビどもを残せば“家”じゃない。


(なるほど、どこでも拠点になるという事か…。)


外周は補強、内側は生活導線。

頭の中でゾンビ共が襲ってきた事を想定する。

これは“お遊び”じゃない。“生存”だ。


地図を開く。歩いた線が白い。

歩いた範囲の周辺がわかるようになっている。

拠点候補の家には旗印(自分用)の目印をつける。


スマホで出来る機能を軽く整理する。

・クラフトはカメラ経由。

・素材を撮って、アプリで組む。

・服や道具は出せる。食料は出ない。

・ゾンビペイ(ゲーム内の通貨)

・保存庫機能もなし。ストレージゼロ。

・本はQRコードを読み込み 。


便利そうな機能ではあるが、渇き(かわき)と空腹だけは補えない。

……だからクラフトサバイバルゲームお得意の

歩く。集める。作る。 の3点セット。


そして昨日のクエストで見つけた“本”。

カバーの裏に小さなQRコードがある。


スマホのカメラをかざすと、データが一瞬で取り込まれ、

頭の中に本の内容が“流れ込む”。


「この辺りはゲームと設定が少し違うが、

本でスキル習得は同じなんだな」


ゲーム内での拾った本はとても重要な役割があった。


読んだ実感より、

知識が急に増える奇妙さ。

内容はすぐに引き出せるが、

理解を深めるには繰り返し確認が必要。

“暗記”と“体得”は別物らしい。


時間表示は正確だ。

日数、時刻、天気、湿度。

夜の22時から4時は“赤い地獄”。

7日目は“狂乱の血死潮(クリムゾンムーン)”。

ゲームで起こってたイベントが

こっちでは当たり前の様に起こる毎週の厄災。


ギバー(供給所)は各地に点在している。


主要は5拠点あり、役割……要するに取り扱う物資も別。

だが地図には他の印も薄く浮く。


ゲームとの違いは、

世界のあちこちに“供給者(ギバー)”が居る。

昨晩の食事をしみじみと思いだす。


やっぱりゲームよりも人の存在があるな…

NPC?…だとは思うけど、ギバー(供給所)内に生活があり、人も居る。

何より会話として成立する。


何より、その人々も生存を賭け、日々戦い続けている。


バリケードに囲まれた間から覗く空を見上げる。

静かに目閉じて、

音や外の気配に耳をのばす。



……静かだ。風が板を撫でるだけ。

遠くで何かが転がる音。小動物か。


胸の奥が何故かくすぐられる。

恐怖心はまだ足下に絡みつく。

小さいが確実に。


しかし昨夜よりも軽く力強い。

飯と、睡眠……温もりで、人は勇敢になる。


いや、リオの豪快だか温かみのある、人柄も背中を押す。


思考を整理する。


今日の方針は短く3つ。

①拠点候補を、探す。

②素材と水の補給を最優先。

③無駄な戦闘はしない。逃げ勝つ。


「よし」

顔と太ももを強く叩き、気合いを入れる。

毛布をたたむ。きしむ床をそっと踏む。

扉の隙間から朝がのぞく。


無料の朝の冷えた空気、強すぎル。

思わず身震いが起きる。寒さなのか…武者震いなのか…。

でも、目は覚めの風には丁度いい。

エネルギー補給と睡眠のおかげで、今日は歩ける。


棍棒(こんぼう)のグリップを握り直す。

スマホを胸ポケットに落とす。

地図の印が、今日を指す。


俺は深く息を吸い、

肺いっぱいに冷たい空気を流す。


(ほほ)を両手で叩く。

もう一度気合を入れ直す。


「よしっ」


そして、静かな納屋をあとにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ