DAY4 ギバー店主のゴリマッチョな威圧感
歩き続ける。
足元は重い。前日の疲れが筋肉と骨に残っている。
やがて、視界の奥に――
やけに補強された塀が姿を見せた。
打ち込まれた鉄板と木材。
その上に、色あせながらも大きくはためく旗。
「……おお、やっと“人の手”の跡だ」
胸の奥で、安堵と同時に緊張が走る。
無言で棍棒を握り直す。
近づくと、鉄製の扉に見張りの影。
俺の足音に気づいたのか、じろりと睨まれた。
「……新人か?」
声は低く、荒い。
ゲームとは違いギバーの中に、人の姿や生活感がある。
|(ゲームではギバー内に主人以外のNPCは出てこない。)
ギギィ……と重い音を立てて扉が開く。
その奥に広がるのは、建物とも店ともつかない造り。
バリケードを兼ねた壁。
板張りの床の中央に、カウンター。
中にいたのは、分厚い腕を組んだ大柄の男。
無精髭に鋭い目。
農作業着のような格好。
どこか泥臭く、場違いな威圧感を放っていた。
「おっ……いらっしゃい。見ない顔だな」
声は低く、どこか威圧感を含んでいた。
男の目は、ただの農夫のものじゃなかった。
耕した畑を見守る視線の奥に、
生き残りを査定するような冷たさが潜んでいる。
荒く削れたカウンターの木目には、
数えきれない手の跡や刃物の傷が刻まれている。
ここがただの“店”ではなく、
生存と取引の境界であると、ひしひしと伝わってきた。
俺は唾を飲み込み、口を開く。
「く、食い物あるか? み、水は?」
男は一瞬、黙って俺を睨みつける。
緊張が張りつめ、喉が鳴る。
……そして、ふっと顔を緩めた。
カウンター越しに差し出されたのは、水の入ったボトル。
「ほれ、水だ」
がぶ飲みする俺を見ながら、
男は腕を組み直し、鼻で笑う。
「おい、50だ!払え」
「えっ?」
「えっ?じゃねぇ。水の代金50だ!よこせっ」
「だ、代金……か、金なんてあるわけ…」
ドンッ!
カウンターを強く叩く音が響く。
「はぁ? 金が無いだと?」
ビクッ!!
(ひぁー怖っ怖っゴリマッチョおじさんお怒りモード
殴られるよぉ返答間違えると絶対殴られるよぉぉ)
再び――ドンッ! 男は沈黙する…
音が室内にこだまし、空気が張り詰める。
やれやれと言わんばかりに男は喋り出す。
「はぁぁ……仕方ねぇ」
吐き捨てるように言うと、
男は椅子に深く腰を下ろした。
「頼み事を聞けば、飯も食わせてやる」
「えっ?」
「チッ……物々交換だ。
ギブアンドテイク、ってやつだ」
「最近、配給者が寝泊まりする家が襲われた。
配給品がそのまま置いてある可能性がある」
魅力的な提案だ。
しかし胸の奥がざらりとした不安感が変わる。
この状態で、クエストとか無理がある。
必死で言い訳を探す。
俺は小さく肩をすくめ、軽口でごまかす。
「……いやぁーすいません。
ちょっと追い剥ぎに遭いまして…これがですね…」
「なんだと?」
ギロリと睨む男。 無数の血管が浮き上がる。
「ただ水を飲んでおいて……なめやがって」
「ままっ……待った待った!」
回答ミスった!慌てて手を振る俺。
そのとき、ポケットのスマホが震えた。
画面に浮かぶ新しい通知。
【クエスト:物資を持ち帰れ】
|(……来た。もう完全にゲームのノリじゃねぇか)
俺の腹はまだ鳴っている。
身体は正直だ。空腹は理屈よりも残酷。
差し出された水の冷たさが、
一瞬だけ生を思い出させてくれる。
男の背後には棚が並び、
種袋や工具、乾いた保存食が積まれている。
どれも輝いて見える。
だが――手に入れるには、代償が必要だ。
そしてゲームの定石。
ここで立ち去る選択肢はない。
腹の底で、俺は悟っていた。
「……やるしかねぇか」
俺は深く息を吐き、諦めたように笑った。
「りょ、了解。わかった取ってくる!
飯、約束してくれよ……飯!」
小さな独り言を聞き取ったのか、
ニヤリと口角を上げた。
それがこの世界の“契約”の合図に思えた。
「俺はリオだ。ここでギバーの主人をしてる。
……で? お前は?」




