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DAY44 変電所の悪魔②

建物の存在感が、

夜風を真上に持ち上げ、 

渦を巻き逃げていく。


一馬達は屋上から下を観察する。


水銀灯のおかげで、

建物周辺は明るく視界も悪くない。


トーマスの話を整理すると、

1階の入り口を塞いだ事で、

四足ゾンビは出入りが出来なくなっている。


腹をすかせた悪魔の事を、

トーマスは「スキャヴァー(四足型)」と呼んでいる。


スキャヴァーは音にとても敏感で夜行性。


最初は小さな個体が、

食事を獲る事により、

どんどん成長するゾンビ。


ゾンビの行動原理は感染と食欲。


しかし圧倒的に違うのが、

ゾンビは死んで(・・・)いて成長(・・)しない事。


肉を食べるように嚙みちぎりにくるが、

食事をするような咀嚼や余韻は無い。


一馬(死ぬときの経験測だから、

食べ続けるゾンビを実際に、

見たわけじゃないけど。

うぅぅ怖ッさぶッ…忘れよ…。)


被災用の保存食で空腹を満たし、

あとは皆押し黙っている。


一馬たちは、

物音に意識を向け警戒しながら、

朝方まで体を休める事にした。


遠ざかる意識に揺られながら、

冷たい床に沈んでいく。


**********


一馬「はっ!」


反射的に飛び起きた一馬。

手から体から汗が噴き出る。


瑠奈「一馬?」


隼人「…………大丈夫?」


一馬「…は、はい。

い、今は何時ですか?」


隼人「4時前…だね。

作戦通り4時以降に出発しよう。」


一馬「ええ、準備します。

錬次!錬次?おい起きろ!

おーい錬次、お・は・よ・う…えっ?」


寝ていると思っていた錬次が、

気を失っている。


一馬「おっおい、錬次?錬次?」


錬次の頬を叩くが、反応しない。

身体が高熱で熱く、呼吸も浅い。


錬次がぐったりしている姿は初めて見る。


一馬のうろたえる様子に、緊張が走る。


一馬「ウォーカー熱…」


一馬には苦い経験がある。

狂犬病にも似た感染症。


一馬「誠ッ!抗生物質はまだある?」

誠「う、うん。ま、ま、待って」


誠は慌てながらカバンを漁り始める。


一馬(くそっ!

豪快な奴だから気が付かなかった。

くそっ!しっかりしろ錬次っ!!)


隼人「ね?瑠奈ちゃん。

ウォーカー?熱?…の特徴は?」


瑠奈「うん。狂犬病に近い感染症のひとつ。

傷やゾンビの体液とかで感染するみたい…」


一馬「高熱が出て意識が無くなるんです。

抗生物質でなんとかなりますが24時間が限界です。」


隼人「限界…24時間…今回は諦めようか」

一馬「いえ、作戦は続行します。」


隼人のもっともな提案だったが、

抗生物質を飲ませる事以外できる事は無い。


一馬は、無理やり動かす事より、

室内という環境で、

安静にさせる方が安全だと判断した。


一馬「瑠奈?どう判断する?」

瑠奈「異議なし。これ以上できる事は無いし。」


隼人に視線を合わせ、意思疎通を図る。


隼人「OK!それが今出来る、

合理的判断なんだね。わかった!

ここは誠さんに任せるよ!よろしく誠さん。」


誠「う、うん!錬次くんの事は任せて。」


誠の目に力が灯る。


一馬「よし、準備を始めましょう」


**********


まだ暗く空は暗く、

空気も冷え切った朝に

一馬たちは外に出る。


正面ゲートの真裏にあたる所に

非常用出入口に繋がる扉がある。


ここから外に行けないが、

地下二階に続く道が繋がっている。


一馬「へいへい、

地獄の入り口まで

ご丁寧にどうも(・・・・・・・)ッと。」


裏口のフェンス扉は、簡単開いた。

というより鍵も何もない。


裏口に出た所は、

建物の延長上でコンクリートの壁と通路。


1階天井ぐらいの天井に、

長く続く通路…そして「EXIT」。


隼人「ねぇ一馬くん知ってる。

EXITって投資業界で、

収穫(・・)の意味で使ってるんだよ。」


一馬「んーーーそ、その心は?」


隼人「獲物を回収する為(・・・・・・・・)

捕捉者が獲物を食べる為に

大きく開かれた…入り口てね。」


一馬「てね。てねじねぇし!?

怖い怖い怖い、もーやめてよぉー。

想像力退散!想像力退散ッ!」


この緊張状態の中で一馬は、

調子よくリアクションし、

隼人は声を殺し笑っている。


瑠奈は2人の掛け合いをみて、

半分呆れてはいたが、

安心感も感じていた。


隼人「はーおもしろ。

はは……さっ、入ろうか…。」


三人の視線を交わし、

EXITの扉を開ける。


**********


扉の奥には、

2人分の幅の空間に、

壁際に沿って地下へ続く階段がある。


瑠奈「ここには奴らは、

入ってこれないのかな?」


隼人「多分、出入口に

扉が設けてあるから…。

あの一瞬だったけど

器用に扉を

開けれる感じには見えなかったし。


階段を進み地下1階の出入口。


分厚めの鉄扉が塞ぐ先に、

囲むような通路と、

交差する通路に吹き抜けの空間が広がる。


一馬たちの緊張感が一気に高まる。


気密性の高い建物の構造が、

小さな足音ですら、

綺麗に響かせ奏でようとする。


先頭を歩く隼人が

手で指示をする。


隼人の手が力強く握られる。

「停まれ」のハンドサイン。


隼人が親指(・・)ひとさし指(・・・・・)中指(・・)を、

交差させるハンドサインを出す。


一馬も瑠奈も汗が噴き出してくる。


敵発見(・・・)」のハンドサイン。


前方にはスキャバ―の姿が

1体確認できる。


更に通路下、

電機盤の入った鉄箱の上にも、

スキャヴァーが1体。


瑠奈が弓を構える。


ステルス戦闘において弓は隠密最強。

銃火器は最低でも

140db~160db程度音を出す。


しかし弓は

60dbぐらいしか出さない。

消音器サプレッサー付きのような武器である。


隼人と一馬は共にハンドガンを構える。


ハンドガンには使い捨ての

サプレッサーもどきがつけられている。


クラフトアプリは、

持ち主の知識に沿った道具が製作可能。


簡易スプレッサーを作り、

複数用意してある。


隼人が一馬に、

簡易スプレッサーを指さし、

5回5発分しか使えない事を念押しする。


瑠奈の弓が放たれる。


狙う個体は前方のスキャヴァー。

鋭く空間を走る矢は

スキャヴァー顔に刺さる。


突然の攻撃に

スキャヴァーが混乱し咆哮する。

一馬たちの身が引き締まる。


隼人が追撃に三発弾丸を打ち込む。


スキャヴァーが力なく、

足元に叩きつけられる。


いくらサプレッサーが

ついていたとしてもココが限界。


その衝撃音に合わせ、

小さな物音が重なり、

スキャヴァーが激しく動きだす。


瑠奈は出来る限り

スキャヴァーの動きに合わせて、矢を飛ばす。


一馬さすがだな


安定した体幹に、

しなやかな柔軟性が臨機応変に矢を当てていく。


仕留めそこなったスキャヴァーを

一馬と隼人が追撃する。


肉体が成長するタイプだからなのか、

1発当てただけでは倒せない。


隼人「タフだねぇまいったな」


一馬「どんだけ居るんだよ。

なんか小さいの大きいの

どんどん出てくるんですけどぉー」


隼人「おっ調子でてきた?」


瑠奈「二人とも上ッ!!」


スキャヴァーは頑丈な上に、

動きが機敏で群れになっている。


一馬「あっ!?蜘蛛」

瑠奈「えっ?馬鹿!冗談でもやめてよッ。」


10体ほど倒した所で、

一馬はスキャヴァーの特徴に蜘蛛を重ねる。


ゆっくり歩き進みながら会話を続ける。


一馬「いやいやゾンビゲームでも

蜘蛛出てくるでしょ?」


隼人「確かに、トカゲとかよりは、

個体差と増え方が蜘蛛っぽいね。」


瑠奈「黙ってッ!あー鳥肌。」


落ち着きを取り戻したのもつかの間。


地下2階に下りる

螺旋階段に差し掛かる。


地下2階に近づくたび

異様な光景が広がる。


粘液が硬化したものが、

ありとあらゆる所にある。


その中心には卵のような造形に、

割れて這い出てきたような痕跡。


隼人「確定…だね」

一馬「そうですね…。」

瑠奈「なになになになになになに?」


瑠奈に一馬が憑依する。


一馬「卵だよ…女王がいる。」


不気味に広がる空間の奥には、

腹をすかせた悪魔が潜んでいる。


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