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DAY43 変電所の悪魔①

気が付くと周囲が影を落とし、

変電所周りの水銀灯が息をし始める。


2階の通路に影とわずかな光を灯す。


水銀灯は太陽光パネルで備蓄された、

非常用電源と繋がっている。


一馬たちは休憩室に場所を移し、

トーマスから状況を確認する。


一馬「どうして入り口を封鎖したんですか?

ギバーまではそこまで遠くも無いし…」


素朴な質問だが違和感を感じた状況。


変電所は厳重なフェンスと壁に囲まれていて、

ゾンビの気配はどこにも無い。


仲間が居なくなったとしても、

ギバーまでの距離感を考えると、

戻らないのは不自然に感じる。


トーマス「んっ?ああ…

人を入れない為だ。

これ以上餌を与えるわけにはいかない。」


トーマスの目に恐怖がにじみ出る。


隼人「餌…、何かが潜んでいる…

そう言いたいの?」


トーマス「ああ、そうだ。」


短く返事をする。

トーマスが変電所を去らない理由はいくつかある。


一つ目は、足の怪我である。

トーマスは靴を脱ぎ足を見せてくる。


一馬「!!!!」

錬次「痛ッそう」

瑠奈「きゃっ」

隼人「んー壊死しかけているね」

誠「ん!うぷっ」


誠は給湯室に走りこむ。

満たしたばかりの胃袋を空にしに行く。


トーマス「靴ごと嚙みちぎられた…

ここに留まって、1ケ月は経つ。

その間ここに来たのはお前たちで3組目だ。」


隼人「3組…で?他の2組は?」


トーマス「喰われたよ!あっさりとな。

だから怪物が寝ている間に入口を固め、

防火扉を閉め出入り出来ないようにした。」


怪物は昼間は活動が少なくほぼ動かない。


しかし夜になると活発に動き出し、

建物の周辺を動き回る。


2組はどちらも夜に入って来たらしい。


その時は2階のルート以外は

解放状態…

怪物も自由気ままに出入りしていた。


一馬「他の2組と面識は?」


トーマス「無い…。」


厚いコンクリートの建物でも、

人の気配に聞こえてくる悲鳴。


覗いた先に見える悲惨な光景に

トーマスは震えるしかなかった。


トーマス「自分の身を守る事がで、

精一杯だったからな。

まさか屋上から侵入なんて、

考えもしなかった。」


トーマスの話だと、

見た目は4足歩行するゾンビ。


人間を貪ると、

見て取れるようにあからさま成長する。


最初に見た時は、

男の小学生ぐらいのゾンビ。


今や錬次ぐらいの大きさで、

更に数も増えているらしい。


一馬(はいはいはいはい。

ここにきて4足歩行ゾンビ登場ですか?

ゾンビゲーム定番キャラぶっこみますか?

えっ?何を考えているか?

ええ…正解!もちろん帰りたいんですけどー。)


イベントフラグが発生した。


まずやるべき事は安定のゾンビ退治に、

電源(変電所)の復旧。


狂乱の血死潮(クリムゾンムーン)から

まだまともに、1日も経っていない。


傷も疲労も癒えないまま、

難易度高めのイベントフラグ。


隼人「とりあえず戦略を立てようか」


一馬「ですね。瑠奈…

用具室にある使えそうなもの探してきて。」


トーマス「おい!何、勝手に…。」


一馬「トーマスッ!!

やらないと進めない!

協力…してくれますよね?」


一馬の思考はもう、

戦いに向けて準備を始めている。


ついさっき知り合った若い男が、

決意をした眼で睨んでくる。


トーマス「わ、わかった。

くたばった奴らの武器は回収してある。

……こっちだ」


トーマスと瑠奈は休憩室を出ていく。


隼人「さてと…

このプレートしか、

工場内の図面が無いね。」


一馬「無いよりましっすね」

隼人「だね。」


誠は黙ったまま、

座り込んでいる。


一馬「錬次…」

錬次「なに?テンちゃん」


一馬「肩は?調子は?暴れられるか?」


錬次「はははッ

テンちゃん相変わらず面白いね。

もちろん全開で行くよ!」


一馬も隼人も笑みを浮かべる。


吸い込まれそうな闇から

不気味な音が聞こえてくる。


**********


図面を広げて工場の作りを把握する。


地下2階・地上2階の

吹き抜け構造で、

作りはとてもシンプルな四角い建物。


シンプルではあるが広く、

大きな構造の建物。


素人が見ても

わからない鉄の箱が、

ぎっしり詰められており、

迷路のようにも思える。


地下1階は囲むように通路があり

中央に向かって交差する通路もある。


小さな事務所や休憩スペースが

地下2階にあり、

倉庫のような大き目の部屋が一つ。


隼人「ガラス張りで

隔離されているのは、

この2階だけだね。」


一馬「直接、地下からは

屋上には行けませんね。」


隼人「丁度、

フェンスの入り口の真反対に

非常用出入口があるみたいだね。

フェンスの外に、

出る必要は無いみたいだけど。」


一馬「誠とトーマスは残します。」

隼人「うん賛成。」


黙っていた誠が近づいてくる。


誠「一馬…ごめん。情けないよ。」


一馬「かぁー情けない顔しないで。

適材適所って言葉があるっしょ?

ここの管理も大事な作戦の1部。

大の中年の泣き顔なんて無理っ!

キモキモキモッ!」


誠「おいっ言い過ぎッ!」


思わず笑いが起きる。

緊張で不安を抱える誠の気持ちを感じる。


錬次「マコちん…

大筆(・・)に乗ったつもりで任せろ!」


隼人「大舟(・・)…ねっ!」


一馬「小難しい言葉使うなよ。

筆に乗って何か書くの?

正月のかくし芸でもするの?」


錬次「おっテンちゃん馬鹿にしてる?

テンちゃんもわからなかったでしょ?

んっ?んっ?」


一馬「おい!聞き捨てならないよ錬次くん(・・・・)

一緒にしてもらっては困る。えーはい。」


2人は睨み合い、

顔を見合わせて、また笑う。


誠の顔からは緊張感が薄らいでいく。


ドォォォ……ォン


地下から大きな反響音が聞こえ、

急に緊張感が走る。


扉がゆっくり開き、

瑠奈とトーマスが入ってくる。


一馬「何ッ」


声を発しようとした瞬間、

瑠奈が口元に指を立て、抑止する。


トーマス「目を覚ましやがった…。」


**********


一馬たちは息を潜めながら、

ガラス越しに地下を覗き込む。


非常灯の光が、

微かに視界を援護してくれる。


黒い影が動くのが確認できる。


1体、2体、3体…

俊敏で不規則な動きを繰り返す。


錬次「なんだありゃ…」


トーマスは咄嗟に

錬次の口元に手を添える。


しかしすでに遅く、

音に反応して、

1体が突然這い上がってくる。


ヤモリのように器用に、

2階のガラスまで這い上がってきて

こちらの様子を(うかが)っている。


目元は潰れており、

見えてはいないようだ。


しかし錬次の声に反応した、

耳のよさは尋常ではない。


鼻はついてはいるが、

嗅覚は死んでいると、

トーマスは観察から推測していた。


隼人は後退するように

ハンドサインをする。


音を足元で嚙み潰すように、

ゆっくりと後退していく。


瑠奈があっけにとられ、

誠が瑠奈に接触する。


衝撃で瑠奈の手元から

ナイフが落ちる。


時間が停まったのような瞬間。


一馬は咄嗟に手を伸ばし、

ナイフを受け止める。


一馬「ッ!!!!!!」


刃の部分を握ってしまい、

熱さと共に痛みが走る。


一馬は2人を睨みつけ、

目で合図する。


トーマスが先に戻り、

瑠奈と誠は休憩室に戻り、

続いて錬次と一馬そして隼人。


扉をゆっくり閉めた。


トーマス「もう大丈夫だ。

この施設は気密性はそこそこ高い。」


隼人「音漏れの心配がない?のかな。」

トーマス「ああ」


瑠奈「一馬ッ大丈夫!?」


一馬「ああッ、誠も気にするな。

というより、気にする所はそこじゃ無い。」


一馬の言葉の意味を、

みんな一瞬で理解をする。


一馬「下手をしたら、狂乱の血死潮(クリムゾンムーン)

何かよりも厄介なゾンビだぞ。」


不吉な未来ほど、

外れて欲しいものだが、

不吉な想像ほど現実的とも言える。


聞こえてくる物音を聞きながら

一馬たちは再び作戦を練り始める。

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