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DAY42 管理棟の生存者と地下に続く沈黙

風が、

変電所の構内を横切った。


ギィ……

という、短く乾いた音。


一馬は反射的に立ち止まる。


音の正体は、

建物脇に立てかけられた

錆びた薄い鉄板だった。


固定具はすでに失われ、

下端だけが地面に触れたまま、

風に押されてわずかに揺れている。


ギ……

カン……


擦れるたび、

金属の薄い悲鳴が空気に残る。


音はとても大きく聞こえる、

しかし実際の所はそこまで大きい音では無い。


一馬は斧を構え直すが、

視界のどこにも動く影はない。


瑠奈が、

一歩だけ横にずれて角度を変える。


誠は、

呼吸を浅くとても緊張している。


隼人は、周辺を

注意深く観察している。


錬次が、

低く息を吐き鼻を鳴らす。


錬次「ふん……これかよ」


その声も、

すぐに空気に溶けた。


ゾンビは、出てこない。


さっきまであった

“来る気配”が、

嘘みたいに消えている。


電気を調節するための配電盤なのか、

いくつもの鉄の大きな箱が綺麗に並んでいる。


フェンスの内側や

鉄箱の影。


どこにも、

動くものはない。


一馬は歩き出す。


音を立てないよう…

慎重に足を置くたび、

地面の感触を確かめる。


湿って冷えた土の温度が

足元から伝わってくるような感覚。


すべてが、

長い時間、

誰にも踏まれていない感触だった。


それが、逆に気持ち悪い。


こんな場所なら、

何かがいてもおかしくない。


それなのに、

何も出てこない。


しかし変電所周辺の

厳重さを考えると、

納得のいく感じもする。


瑠奈が、

小さく首を傾げる。


瑠奈「……静かすぎる」


誠は生唾を飲み込み、

緊張で呼吸が浅くなる。


答えがみえない状況。


進むにつれて、

配線の密度が増えていく。


地上や地面を這うケーブル。

壁に沿って伸びる管。


途中で切れ、

無造作に垂れ下がる束。


それらが、

全部、

どこか一方向へ集まっている。


管理棟だ。


変電所の奥。

敷地の一番深い場所。


大き目な2階建てビル。


大きな窓は少なく、

出入口は正面ひとつだけ。


その扉を見た瞬間、

一馬の足が止まった。


違和感が、

はっきりと形を持つ。


扉は閉まっている。

だが、それだけじゃない。


鉄製の扉の前に、

内側から押さえつけるように

厳重な閉鎖感。


一馬「外から開けられ

…ないように…してある?」


隼人「だね」


机や椅子、

さらにその上から、

金属製のラックが横倒しにされ、

針金とケーブルで縛られている。


”絶対に、開けさせない”


という意思が、

重ね塗りされている。


瑠奈が、

息を止める。


誠が、

落ち着かない様子を見せる。


隼人は、

静かに口を開く。


隼人「……中に、人が居るかも

…生きていれば、ね。」


錬次が、

暇を持て余しながらウロウロする。


錬次「ぶち破る?」


誰も、返事をしなかった。


頭で状況を整理する。


一馬(中にいた人間は、

外に出たくなかった。

外に出たら、

終わると知っていた。)


一馬は、

封鎖された扉に手を伸ばし、

途中で止めた。


一馬(冷たい…)


風にさらされ放置された扉、

冷たさを主張するかのように冷たく感じる。



一馬(……ここ、

灯りを守る場所だったよな)


電気を分ける場所。

街に命を灯す場所。


その心臓部分が、

ここまで暗く閉ざされている。


一馬は、

ゆっくりと息を吐いた。


一度、

皆の顔を見る。


一馬「……とりあえず入ろう。

ただし屋上に上がってから降りる。」


瑠奈「なんでわざわざ?」


隼人「多分、2階には上がれないからだろ?」

一馬「はい、防火扉が

閉まっているのが確認できました。

二階には大きな窓が多いですから、

生活圏としては2階に集中しているかと。」


瑠奈「も、もう少しわかりやすく言ってよ」


隼人「こう言う目的の施設は

だいたい1階は作業場所と直結していて、

2階部分に休憩室とか更衣室があるんだよ。」


一馬「はい、そうですね。

しかも…」


建物の見た目としては

2階建てのような施設ビル。


しかし大きさは、

3階ぐらいの大きさで、

囲むような構造の建物。


そして大きな換気ダクトが

至る所にあるのが見て取れた。


見た目よりも巨大な

地下付き施設。


中に、

何があっても。


その判断が、

正しいかどうかは、

まだ誰にも分からない。


管理棟の前で、

風が止んだ。


錆びた鉄板も、

音を立てなくなった。


まるで、

ここから先は、

別の世界だと言うみたいに。


**********


身軽な瑠奈が、

雨水排水管を伝い屋上に登る。


非常階段は、

2階から屋上にだけあり、

直接は届かない。


見た目よりも、

大きな構造の建物だから仕方がない。


瑠奈は流石の身体操作で、

グイグイ登っていき屋上に到着。


2階非常階段から、

ロープ梯子を垂らし、

誠から登っていく。


2階は想定よりも

高い位置にあり強い風が吹き抜ける。


先に屋上に上がり、

建物の構想を見る。


室外機が整列された屋上に貯水タンク。

防災脱出用のシューター設備。


光が取り込まれるように

小さな窓が並んでいる。


その近くに室内に繋がる、

非常用梯子階段を降りていく。


誠「び、備品倉庫…。」


部屋には小さな空気穴に

無機質なスチールラックに備品が並べられてる。


一馬は備品が綺麗に

整頓されている事に違和感を覚える。

だが、生存者がいるなら

それはそれで説明がつく。


備品室を出ると大き目の通路がある。

ビニル床シートを敷いた床に、

中央の壁はガラス張りになっていて、

中央を見下ろせるようになっている。


吹き抜け式の建物。


隼人「一馬くんの想定の作りだね。」


一馬「ええ、隼人さんお目が高い。

このナイスな頭脳が、

直観的に働いたんです。ええ。」


瑠奈「馬っ鹿じゃないの」

錬次「テンちゃん流石!」

誠「そ、それより誰かいるかな??」


隼人「わからないけど可能性はあるね」


一馬「さ!行こうっ」


周辺を囲うように部屋がいくつかある。

事務部屋を開け様子を見る。


まだ外は明るいが、

部屋の中は薄暗らい。


カビと埃の匂いが鼻を刺す。


休憩室の奥に給湯室が見つかる。


給湯室は事務部屋と違い、

埃が払われ整理整頓されている。


瑠奈「生活の痕跡ね。」

誠「う、うん。

確かに、清潔感があるね。」


一馬「進もう」


最後の部屋は仮眠室。


ガチャ

ガチャ

ガチャ


扉に鍵がかかっている。


錬次「壊すぜッ」

一馬「まてまてまて、瑠奈」


瑠奈「任せて」


瑠奈がピッキング道具を取り出して、

鍵穴に差し込む。


カチャカチャカチャ…

クル

カチン!


錬次「おお、コソ泥じゃん」

瑠奈「うっさい!」


瑠奈がノブに手を掛ける。


その時、一馬には

微かな音が聞こえる。


一馬「瑠奈っ!」

瑠奈「えっ?」


ドォンッ・・・・


瑠奈の方を強く押し、

勢いで一馬も横に飛ぶ。


ショットガンを構える男が現れる。


隼人はすかさず横から回り込み、

後頭部に銃を押し付ける。


男「ま、待て!だ、誰だ?」


隼人「あなたこそ誰?

とりあえずゆっくり銃を置こうか?」


沈黙が続く。


カチッ!

隼人が銃を打ち込む動きをする。


男「わ!わかった!お、置くよっ。」


男は睨みつけながら

銃を床にゆっくりと置く。


隼人は警戒を解かない。


一馬「あんた、名前は?」

男「トーマスだ」


**********


男の名はトーマス。

ギバー店主ジョーカーの弟。


電気技師をしていて

今回電気を復旧する為、

変電所にきたらしい。


一馬(今回の任務に、

弟が絡んでたのかよ!

事前に伝えるのスジじゃない?

電源復旧だけじゃなくて、

救出付きとか、

聞いてないんですけどぉー。)


隼人「それで?

あんたしか居ないような

雰囲気だけど?何人?」


トーマス「ひとり(小声)」

一馬「えっ?」


トーマス「今は、ひとりだよ」


一馬「今はひとりね。はいはい。

今はひとりね。今…は?」


一馬(嫌な予感がするんですけどぉぉぉ。

出来るなら俺の未来予知がハズレますように。)


トーマス「殺された…みんな死んだよ」


一馬(Nooooooooooooooooooooo!)


トーマスは電気を復旧させるため

6人で変電所にやってきた。


厳重な変電所に、

ゾンビの姿は無かったが、

生きている人間の姿も無かった。


楽勝案件だと、

タカを括ったが大間違いだった。


トーマス「地下にある

主変電盤にいる怪物に…」


一馬ですよねぇぇぇ


地下の闇から

うなり声が聞こえてくるようだった。


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