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DAY36 ゆずれない脳筋と脳筋の戦い

脚はどんどん前に出る。

体力にはまだまだ余力がある。


錬次はスレッジハンマーを振り回し、

夜の路地を勢いのまま進んでいた。


瓦礫を踏み、

割れたアスファルトを蹴り、

身体の重さをハンマーに乗せる!


錬次「っしゃ……!」


声が漏れる。


吹き飛ぶゾンビ…

悪くない感触。


倉庫までこのまま流れる。

そのままの勢いで流れる動き。


考えるより、

先に身体が動いている。


だが――


一つ、角を曲がったところで、

足が、自然と止まる


錬次「……ん?」


街灯の位置に、

建物の並び…。


見覚えが、薄い。


錬次は数歩進み、

また立ち止まる。


錬次「……あれ?」


倉庫……は?

確か、この辺りのはずだ。


だが、倉庫らしきものが、

どれかわからない。


特技は難しい事は、

ささっと忘れてしまう事。


首を回し周りを見渡す。


右。

左。


どちらも、

それっぽい。


そして、どちらも違う気がする。


錬次「……やっちまったな」


額を指で叩く。


錬次(…勢いで走りすぎた。)


これだけは

自覚はある。


錬次「……」


一歩、引き返そうとして

突然左側からゾンビが襲ってくる。


ハンマーをひと振り…


錬次「こっちだな!」

左に向かい錬次の足が再び動き出す。


次々と襲い掛かるゾンビを

なぎ倒し、進んでいく。


ドンっ!

ガシャンッ!


遠く…ずっと向こう。


ドン。

ガシャンッ!


低く、やけに腹に響く音。


錬次「……?」


その場に止まり、

目を凝らす。


ドン。

ドン。


大きな影が

ゾンビらしき何かを蹴散らす。


風が、変わる。

埃が、舞う。


錬次「……なんだ?」


錬次は、音のなる方へ、

警戒しながら進んでいく。


まだ、見えない。


ただ、

音だけが、近づいている。


ドン……ドン……。


その間に、

甲高い音が混じる。


――潰れる音。


骨が折れる。

何かが、壁にぶつかる。


錬次「……は?」


路地の奥。

街灯の切れ目。


最初に見えたのは、

倒れるゾンビだった。


次に、

叩き潰される、もう一体。


太めの配管パイプが、

雑魚ゾンビごと振り抜かれる。


ようやく、全体が見える。


でかい。


錬次より、明らかに大きい。


張り出した肩幅に

太くどっしりとした胴体。


走っている。

速くはないが…。


だが――

止まらない。


雑魚ゾンビが前に出るが、

邪魔だと言わんばかりに殴り飛ばされる。


踏み潰す。

叩き潰す。


錬次「……おいおいおいおいおいおい」


声が漏れる。

思わず、一馬が憑依する。


一歩ごとに、

地面が揺れる勢いがある。


その勢いが、

圧として伝わってくる。


錬次は、

無意識にハンマーを下ろし、

両手で握り直す。


視線が、巨体ゾンビに集中する。


錬次「……いい度胸だな!おい」


巨体ゾンビが、

配管パイプを振り上げる。


空気が、鳴る。


錬次は、

歯を見せて笑った。


錬次「……遊んでやるよっ!」


________


______


____


肺がたくさんの酸素を求める。


心臓が大きく早く動きながら

肩が上下に動く。


一馬は裏路地を抜けながら、

壁に肩を擦りつけるように走っていた。


木造の家屋が途切れ、

コンクリートの建物が増える。


視界の先が変わる。

足音が、硬く反響を持ち始める。


ゾンビの追撃をなぎ倒す。


一馬「……クソしつこい」


短く吐き捨てる。


ここを抜ければ、

大通りに繋がる通りだ。


頭の中で、

地図を高速で重ねていく。


――合流地点。

――倉庫。

――非常階段。


隼人たちが向かった方向。

錬次は、その少し後ろ。


……のはずだった。


通りの先が、開ける(ひらける)


街灯が消えた大通り。


赤い月の光だけが、

アスファルトを鈍く照らしている。


一馬は足を止めかけて――

視界の端で、動きを捉えた。


一馬「……え?」


人影が…走っている。


大通りを横切るように、

倉庫とは、

完全に反対方向に


一馬「……錬次?

おいおいおいおいおいおい」


距離があり少しわかりずらいが…

あの体格に、あの走り方。


間違えようがない。


一馬「おーい!!……錬次っ!」


声は、届かない。


錬次は勢いのまま、

路地へ消えていく。


一馬の思考が、

一気に冷える。


一瞬で理解する。


一馬「……あの馬鹿っ!」


考える暇はない。


一馬は大通りを横断し、

錬次が消えた路地の方へ走り出す。


追いつけないほどじゃない。


だが、ゾンビ共が邪魔で

引き離されてしまう。


視界の先に

錬次を確認する。


しかし距離がまだある。


走りながら、

ゾンビをかわす。


錬次に声が届きそうな

距離に近づいた瞬間。


重々しい衝撃音。

――金属が、空を切る音。


嫌な予感が、

背中を這い上がる。


一馬「……ホント、マジ勘弁っ!」


一馬は歯を食いしばり、

速度を上げる。


路地を抜け、

視界が開けた瞬間――


目の前に見える光景…


一馬(錬次が、後退している?)


いや、

後退させられている。


前方に、錬次よりも大きな影。


一馬(うわぁデッカぁー!?何食べたらそんなに大きくなるん?えっプロテイン飲んでる?「当たり前やろ!1日6回!」って飲みすぎやろぉッ!乳製品過多ッ!)


視界の先で巨体ゾンビの

太い配管パイプが、

振り抜かれる。


錬次がスレッジハンマーで

応戦する。


重い金属の鈍い音。


配管パイプと

スレッジハンマーが衝突する。


「――ッ!」


スレッジハンマーが弾かれて

錬次の身体ごと吹き飛ぶ。


壁に叩きつけられ、

崩れ落ちる。


一馬の足が、

止まりかける。


その一瞬で、

異変に気づく。


錬次の右腕が、力なく

不自然に下がっている


ぶら下がっている。


力が、入っていない。


一馬(…折れた?

いや外れているだけか?)


錬次「……クソッ!」


一馬の思考が一気にクリアになる。


脳筋のパワータイプ。

錬次が、劣勢。


選択肢は一つ。


一馬は走り込む。


一馬「錬次ぃぃぃぃ!!下がれぇーっ!」


声を張り、

同時に、斧に持ち替える。


距離を詰める。

間合いに入る。


配管パイプが、

こちらを向く。


だが、構わない。


配管パイプが唸りを上げる。


一馬は正面から踏み込み、

すれすれでかわし

胴体側面に斧を入れる。


硬い感触が斧から伝わってくる。


巨体ゾンビが配管パイプで反撃してくる。


斧でいなす、火花が散る。


金属同士の衝突音が、

路地に反響する。


一馬(…重いッ!)


腕に、衝撃が走り、ビリビリとしびれる。


圧倒的な怪力。


だが、止まるつもりは無い。


一馬「下がってろ、錬次ッ!!」


一馬の声に、

錬次が一瞬だけ歯を食いしばる。


右肩が、だらりと下がっている。

だが目は、まだ死んでいない。


錬次は後退しながら、

壁際へ走る。


錬次「悪ぃ……ちょっとだけ…

まってて……」


配管パイプが再び振り下ろされる。


一馬は半身でかわし、

距離を詰め、そして距離を取る。


ドンッ。


鈍い音。


錬次が、

壁に肩から体当たりする。


1回…2回。


錬次「………ッ!!」


錬次は短い呻き声を発する。


三度目で、

鈍い感触が、音に変わる。


ゴキンッ!!


湿った、鈍い

収まるような音。


錬次は肩を回し、

一度、強く息を吐く。


錬次「ぶふぅぅぅ……()ッ…戻った」


その足元で、

スレッジハンマーの柄が転がっている。


途中で、折れている。


錬次は一瞬だけそれを見ると、

迷いなく蹴り飛ばす。


錬次「邪魔だな、これ」


その瞬間、

「取れ!」と一馬が叫ぶ。


巨体をかわしながら

一馬が、何かを投げる。


小さく、鈍く光る金属。

錬次が反射的に手を伸ばす。


カシャン。


メリケンサック。


錬次の表情が、

一気に変わる。


(こぶし)にメリケンサックを通し、

(こぶし)(こぶし)を叩きつける。



錬次「……うぉしゃッ!気合入ったぜ!」


配管パイプが、再び振られる。


今度は――

錬次が前に出る。


一馬が、横に抜ける。


一瞬の交差。


斧が、視界を塞ぐ。


その裏から、

錬次の拳が叩き込まれる。


重い拳が

巨体ゾンビの体勢を崩す。


一馬「まだだ!」


一馬が叫ぶ。


二人の距離が、

自然と詰まる。


視線が合う。

言葉はない。


だが、

動きは噛み合い始めている。


錬次が踏み込み、殴る。

一馬が巨体ゾンビをコントロールする。


一馬が引けば、

錬次が前に出る。


呼吸が、重なる。


――いける。


そう確信した瞬間、

巨体ゾンビが、再び配管パイプを構え直す。


路地の空気が、張り詰める。


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