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DAY2 クローゼットからこんにちは

足元を整え、棍棒(こんぼう)を握り直す。

体の震えは寒さのせいか、それとも不安か。


太陽が少し傾くまで歩き続け、

ようやく古びた一軒家を見つけた。


「……腹減った……胃が縮む……」

空腹に耐えながら、期待半分で玄関を押し開ける。


家の中は埃っぽく、腐った木の匂いが鼻を刺した。

床板がきしむたび、胸の鼓動が早くなる。


恐る恐る物色していると――

二階のクローゼットの中から、ガタリと音がした。


「……え?」


次の瞬間、腐敗(ふはい)した顔のゾンビが飛び出してきた。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


反射的にドアを閉めるが、

押し返す力は想像以上。


「や、やばっ、やばぁぁぁ!」


無理やり離れ、廊下へ飛び出す。

慌てて二階の浴室に飛び込み、扉を閉め、

全体重をかけて押さえ込む。

外からドン!ドンッ!と叩かれる音。


「ちょっ……無理無理無理!!」


そこへスマホが震え、通知が現れる。


【SYSTEM】

「サブミッション:ゾンビを一体倒せ」


「ふざけんなぁぁぁぁ!」

(のど)が裏返った。


「えー無理無理……ちょ待て待て……

 ビックリ箱 求愛ダンス怖すぎだろ……

 キモ過ぎだろマジ夢なら醒めろよ……

 阿弥ゾンビ陀仏(あみぞんびだぶつ)……マジで(ほとけ)頼む……!」


お経のように言葉を並べながら、

必死に心を落ち着かせる。


だが、逃げ続けても終わらない。

扉を押さえたまま、自分に言い聞かせる。


「あーもうっ……クソ……

 やるしかねぇのか……!」


棍棒(こんぼう)を強く握り直す。

一気に扉を開き、振り下ろした。


ドゴッ、と鈍い音。

勢いよく振られた棍棒(こんぼう)が頭に当たり

ゾンビは壁にぶつかり、床へと崩れ落ちた。


「……っはぁ……っはぁ……」

しばらく荒い息をつき、

しかし動悸(どうき)が収まらず腰を下ろす。


数分…数十分…

ようやく落ち着き、重い腰をあげた。


家の中を改めて物色する。

食器棚の裏やキッチンの隅、ソファの下まで。

引き出しには古びた紙切れや錆び(さび)た釘。

台所の棚には空っぽの缶が転がるだけ。


「……何もねぇ……」


そう思った矢先、奥の戸棚から

ひとつだけ未開封の缶詰を見つけた。


「……もも缶か。ありがてぇけど

 ……少なっ!マジか。」


さらに廊下の隅で、

大きめのボディバッグも見つける。

今後の探索に使えそうだ。


「よし……まぁ無いよりはマシか。」


窓から外を見ると、陽が沈みかけていた。

夜のゾンビに追いつかれる。

ゲームの世界なら、

夜にゾンビの遭遇(そうぐう)なんて

御免(ごめん)被り(こうむ)たい

想像するだけで、最悪の展開……


心臓の鼓動はまだ収まらない。

だが、手に入れたわずかな戦利品を抱え、

小さく息を吐いた。


――しばらく歩くと。

廃墟の近くに小屋を見つけ、

そこへ転がり込むように入った。


扉を閉め、小屋の荷物を動かし

扉周りに置く。

簡単なバリケードで安心感を作る。

窓枠を適当な板で隠し、

なんとか形だけの防御を整える。


疲労感で視界がボヤける。

身体を引きずりながら、

薄暗い中、背を壁に預けて座り込む。

疲労で体が石みたいに重い。

考えようとしても、頭が空回りして、

言葉が霧に消える。


小屋の囲まれた空間が

安堵感(あんどかん)として、襲いかかる。

「……今日は……もう、無理……」


自分でも聞き取れない声でつぶやき、

意識は闇に沈んでいった。

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