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DAY16 夜営と静寂

岩陰に風が当たる。

夜はまだ深く、冷たい。


俺たちは崩れた岩壁の裏に、

小さなテントを張った。


誠が地面に金属のペグを打ち込む。

その音が、乾いた空気に吸い込まれた。


この世界のペグはただの杭じゃない。

振動を抑え、熱と匂いを散らす。

“奴ら”に見つかりにくくする装備だ。


静かな場所さえ見つかれば、

一晩の拠点として十分に機能する。

いくつも作って、繋げて生き延びる。


それが、90日以上生きた2人が

辿りついたやり方だ。


誠は手際よく、風下に布を張る。

その仕草に迷いがない。


瑠奈は弓を膝に置き、

周囲を警戒しながら焚き火を見つめている。


火は小さく、静かに揺れていた。

薪のはぜる音だけが、夜の音だった。


誠がジャーキーを袋から出し、

岩に腰を下ろす。


誠「今日はこれで耐え忍んで。

少ないけど……旨いよ。

噛めば空腹も紛れるし

噛むほど塩が良い感じで疲れに効く。」


一馬「へぇビーフジャーキーかぁ、

いいじゃん!最高っ!」


俺もひとつ受け取り、

歯を立てた。


ジャーキー独特の濃いめの味が

より美味く感じ妙に落ち着く。


(……腹に入るだけありがてぇ)


沈黙の中、誠が口を開いた。


誠「…僕…さぁ、昔は調理師だったんだ。」


俺は顔を上げる。

火に照らされた誠の横顔は穏やかだった。


誠「…親父(おやじ)がやってた小さな店を継いでね。

でも、不景気で潰れて

しばらくして親父(おやじ)が死んだ。

今思えば……守る場所が無くなったのが、

一番堪えたかもな。」


彼は淡々と話す。

重さを感じさせない口調で。


誠「それでも料理は好きで、

趣味でキャンプも始めたんだ。

火の扱いとか、今に活きてるよ。」


誠「あははっ思い感じに話してしまったね。

ごめん…。」


瑠奈「ううん。あなたには感謝している…

私一人だとここまで生きていけなかった」


誠「はは」

一馬「…俺もだよ。頼りにしてるよ。」


瑠奈が静かに頷く。

彼女の視線が、焚き火の奥でゆらめいた。


思わず胸が熱くなる…

一馬(…二人とも……強いな)


怖さを笑いで隠す俺と違って、

この人は、恐怖を受け止めたまま前に進む。


夜風がテントを叩いた。


俺は頭の中で明日の

工程を整理する。


午前に旧市街へ。

昼前に病院到着。

夕方までに地下の確保。

夜は――血死潮(クリムゾンムーン)


(間に合わせるしかねぇ)


誠が最後の薪を整え、

火を小さく覆う。


瑠奈が弓を抱え、

俺の隣に背を預ける。


冷たい岩肌。

外の風の音。


どこかで、かすかな(うめ)き声がした。

けれど、近づく気配はない。


ペグが地面を震わせ、

その波を吸収している。


(……本当に、実践で得る知識は頼りになる)


俺は目を閉じた。

暗闇の中に、赤い月の残像が浮かぶ。


静かな夜。

しばらく誰も言葉を発さず、

ただ、岩陰の焚き火見つめた。


出発前の静かな夜


誠がリュックをを開き、

中身を整えはじめる。


そして俺の傍ら(かたわ)には

鉄パイプを軸にした斧。


ギバー出発前に

誠のクラフトアプリで

作成された新武器。


電動ノコギリの刃と

パイプが一体がなっている。

_____


一馬「おぉ、重さも長さもバランス良いな」

手に取ると重みが心地いい。


誠「僕が作れる近接武器では、威力は一番。

僕には重すぎて扱えないけど。」


一馬(これが重いのか?ステータスの関係か?

レベルアップの概念は一緒みたいだし……。)


_____


焚き火の光で金属が赤く染まる。

その横で瑠奈が瓶を並べた。


瑠奈が瓶を並べ終えると、

俺の中の“何か”がうずいた。


一馬「……ふっ、遂に来たな。」


瑠奈「えっ?」


一馬「人類最後の審判兵器――“業火の聖瓶(せびょう)”!」


瑠奈「は?」


一馬「見ろよこのフォルム!

ガラス越しに揺らめく液体の艶!

この布切れ一本で“文明”が蘇るんだぞ!」


誠「いや、それただの灯油だよ」


一馬「ロマンを殺すな誠っ!

この世界で一番アツいのは、

希望でも友情でもねぇ……燃料だッ!!」


瓶を掲げ、焚き火の光を反射させる。

パチン、と火花が弾けた。


一馬「この布に火を灯すその瞬間、

世界が一瞬だけ“ステージ”になるんだ。

紅蓮ノ断罪(ぐれんのだんざい)”発動ッ!」


瑠奈「名前つけんなバカ」


誠「……爆発する前にやめてね?」


一馬「心配すんな、こう見えて俺、

火属性スキルLv.3だからな!」


瑠奈「そんなスキル存在しないわよ!」


焚き火の横で、

二人のツッコミが飛び交う。


俺は瓶をそっと戻して、

咳払いでごまかした。


一馬「……ま、冗談だよ。

中二病の宿痾(しゅくあ)ってやつさ。」


誠「いや、完全に再発してたけど」


瑠奈「バカは治療不可ね」


三人の笑いが小さく広がった。

焚き火の光がゆらめき、

緊張がわずかに溶けていく。


瓶の中は灯油と布切れ。

自作の火炎瓶だ。

火を入れれば、一瞬で炎の壁になる。


瑠奈「投げ損ねたら、こっちが焼けるけどね」


一馬「ゲームでも現実でもリスク高ぇな」


小さな木箱の中には弾丸。

ローザから買い込んだ在庫の半分。

指先で触れると、冷たく命の重さを感じた。


誠が手鍋を逆さにし、

何かを詰め込んでいる。


鍋地雷――火薬と釘の簡易版。

音と衝撃で周囲を止める。

“殺す”より“足止める”ための道具だ。


しかし効果は期待が高い。

ゾンビの機動力を殺せるなら……。


ローザの店で買った新品の斧。

刃は厚く、片側に刻印がある。

振るうたびに鈍い光を放つ。


一馬「誠、それ……高かったろ」


誠「治療代込みってことで」


ローザの笑顔が脳裏をよぎる。


誠はペットボトルを数本並べ、

缶詰とチョコバーを小袋に詰めた。


金属音が、

夜の空気を切り裂く。


荷物を詰め直し、

俺たちは火を小さくした。


誠「今夜はもう休もうよ。

目を閉じるだけでも、

体はだいぶ違うから。」


一馬「ああ…そうだな」

瑠奈「うん…」


風が止まり、

星がゆっくりと動き出す。


静寂の中で呟く。

一馬「……準備完了。あとは進むだけだ。」


誠は壁に寄り添うように

くっつき寝そべる。


瑠奈が膝を抱え目を閉じる。


俺鉄パイプ斧を抱え

岩にもたれかかり目を(つむ)る。


夜明けまで後数時間、

ひと時の団らんと休息を取る。


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