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DAY15:抗生と再会/病院への道

目を開けた瞬間、

胸の奥にずっしりとした鈍痛があった。


天井のひび割れをぼんやり見つめ、

呼吸を整える。


どうやら、まだ生きてる。

いや……殺されては、いないらしい。


視線を横にやると、

例の白衣ドレスマッチョ


――ローザがパイプ椅子に足を組んで

こちらを観察している。


ローザ「お目覚めね。

あのまま数時間寝かせておいたけど、

熱はもう下がったわ。」


一馬「……首は……まだちょっと痛ぇけどな」


ローザ「いうよねぇ」


ローザは顎をしゃくって笑い、

分厚い指でカルテのような紙切れをめくる。


ローザ「ゾンビの爪にやられた時点で、

感染リスクは相当高いのよ。

この世界じゃ、狂犬病や

インフルエンザよりタチが悪い。

“ウォーカー熱”――そう呼ばれてる。

進行すれば脳が焼けて、

24時間以内に“あっち側”になるわ。」


一馬「……サラッとホラー言うなよ」


ローザ「幸い、引っかかれただけで

深くなかった。

免疫が落ちる前に抗生物質を打ったの。

免疫が落ちてくると

感染しやすくもなるわ…。

効かなきゃ、もう首を絞めて

安楽死させてたけどね♡」


一馬「ヒィィィ……」


背筋が2つの意味で凍る。


ローザの笑みに光の無い瞳…

その笑顔は、冗談の温度じゃなかった。


ローザはおかま口調のまま、

器用に注射器を片付ける。


ローザ「身体が熱っぽいのは副作用。

今日は安静にしなさい。

いいわね。返事っ!!」


一馬「ウスッ」

ローザ「もう一度っ!!」

一馬「アイサー!!」


そのやりとりに

ベッドの横で、小さく笑う瑠奈がいた。


目が合うと瑠奈はゆるんだ表情を整た。


ナイフを研いでいた手が止まり、

こちらをじっと見つめている。


瑠奈の……目の周りが、少し赤い。


一馬「……泣いた?」


瑠奈「はぁ!? 泣くわけないでしょ!

あんたが勝手に倒れるから、寝不足なだけ!」


顔をそむけ、

髪をかき上げる仕草がどこかぎこちない。


一馬「へぇ、寝不足ねぇ。

その割に、目が真っ赤じゃん」


瑠奈「……殴るわよ」


その声の裏に、

わずかな安堵が滲んでいた。


瑠奈の感情が少し見えたことへの安心感。


一馬(へぇー…案外、優しい良い奴じゃん)


一馬「(小声)おっとギャップ萌えの魔法ですか……」


!!!瑠奈が睨みつける。


瑠奈「なによ?」

一馬「いえいえははっ。いいえ…。」


誠が奥からやってきて、

手に紙コップを二つ持ってきた。


誠「おはよう、一馬。

よかった、熱が下がって。

ここは何度かお世話になってる拠点なんだ。

ローザさんはこう見えて、

“ギバー”の中でも医療を一手に引き受けてる人だよ」


ローザ「あら?どうぉ?見えてるのかしら?

誠ちゃんには(・・)??」


誠「いえいえいえ、し、失礼しまーす。」


一馬「(小声)こう見えてね……」


誠は苦笑し、

ローザは腰に手を当ててウインク

(という名の顔面圧)を飛ばしてくる。


ローザ「当然よ。

この身体で注射一本ブレないんだから。

伊達に上腕三頭筋や二頭あるわけじゃないの♡」


一馬「それもう既に脚じゃねぇか!」


瑠奈「げ……元気になったみたいね」


一馬「いや首まだ痛いからな!?

医療暴力の後遺症残ってんのよ!」


誠が咳払いし、

地図を広げた。


誠「それより、一馬が倒れる間に

“依頼”の件……

ローザさんから正式に受けた。

病院に残された医療器具と抗生物質の補充だ。

郊外の旧市街にある“セントマーク病院”。

ただ……タイミング的に

たぶん、そこが次の

狂乱の血死潮(クリムゾンムーン)の発生域になる」


部屋の空気が、一瞬にして重くなった。


ローザ「そう、アタシの患者たちも何人か、

あっちのルートで消息を絶った。

あんたたちが行くなら、覚悟しときなさい。

今回は……“嵐の前”よ」


その声は、普段のふざけた調子ではなかった。

化粧の奥の目だけが、妙に真っ直ぐだった。


(…付けまつ毛とアイライナーが凄っ)


一馬は喉の奥を鳴らし、

ベッドの端に手をついた。


まだ力は入りきらない。

だが、心はもう動いていた。


一馬「……上等じゃねぇか。

次は、死んでも戻んねぇようにしてやるよ」


瑠奈「……死なないでよ、ほんとに」


小さく、だが確かに聞こえた。


一馬「おう。

ま、死んで問題ない……」


瑠奈「馬鹿なの?死ぬって(小声)言うな…」


一馬「えっ?」


バシン、と枕が飛んできた。


一馬「おい!けが人の扱い酷くないですかぁ?」


おちょくるように仕掛ける。


ムキになる瑠奈が嚙みついてこようとした

その直後、ローザの太い声が響く。


ローザ「喧嘩するなら外でやんな!

消毒液がもったいないでしょ!」


一馬・瑠奈「はい……」


ローザ「もう、(しわ)の跡がついちゃう」


一馬((しわ)以前に腕なんとかしろぉ)

っと心の中でツッコミを入れる。


顔で訴える一馬を見て誠が笑みを浮かべる。


誠「ははは……ほら、

これでいつもの三人に戻ったね」


その言葉に、

空気がわずかにほぐれた。


ローザは大きく息を吐き、

身だしなみを整え白衣誇りを払う。


ローザ「準備ができたら行きなさい。

セントマークの地下室には

まだ薬が残ってるはず。

でも“奴ら”も群れてる。」


ローザ「あっ!一馬は明日朝までは居てね。

2人は閉店までは居ても大丈夫だから。」


一馬「2人共拠点は??」


誠「あっ!うん大丈夫。

ココにはよく立ち寄っているから

確保できているよ」


外では、鈍く雲が流れていた。

遠くで雷のような音が響く。


今日でもう既に3日が過ぎていた。


刻一刻と――血死潮(クリムゾンムーン)の夜が、近づいている。


片道でも半日以上はかかる距離…

出発から計算して血死潮(クリムゾンムーン)は3日後…か。


一馬「とりあえず作戦を考えよう。

瑠奈と誠は持ち物とルートの再確認…

あとお前たちのクラフトアプリで

作れる武器を見せてくれ。

使える武器の整理をしておきたい。

…あと、ローザ販売リストってある?」


ローザが微笑む。


ローザ「OK!後で持ってくるわ♡」


誠「それじゃあ僕から…」


誠はベットに広げた地図を

指でなぞっていた。


その指の動きは迷いがなく、

記憶に焼き付いたように正確だった。


誠「……この先、二本目の通りを抜けると

旧市街の幹線道路に出る。

セントマーク病院までは直線でおよそ3キロ。

ただし、途中の交差点――ここ」


指先が地図の一点を軽く叩く。


誠「この廃バスが倒れてるあたり、

ウォーカーが溜まりやすい。

二日前に通った時も、

声と臭いがかなり強かった。

だから大通りは避けて、

裏路地の抜け道を使おう。

こっちは建物が密集してて見通しは悪いけど、

音の反響が少なくて、索敵されにくい」


一馬「お前……地図、頭に入ってんのか?」


誠は少し照れくさそうに笑った。


誠「一度見た場所は、だいたい覚えてるんだ。

こう見えて方向感覚だけは良くてね。

でも――地図が完璧でも、

“あいつら”が動かない保証はない。

昼間に動く個体も最近は増えてるし、

この辺りは特に“音”で集まるタイプが多い。」


静かに言葉を区切る誠の声には、

勇ましさよりも現実を知る重みがあった。


瑠奈が頷きながら、弓を点検する。


瑠奈「了解。

正面突破は避けて、静かに抜ける。」


誠「うん。……戦わなくて済むなら、その方がいい。」


その言葉に、一馬は少し驚いた。


戦いを誇るわけでも、

逃げを恥じるわけでもない。


ただ「生き延びる」という一点に集中している。


――だからこそ、この男は信頼できる。


誠は地図を折り畳み、

慎重に胸ポケットへ差し込んだ。


誠「じゃあ、明日はこのルートで行こう。

帰り道もちゃんと残しておかないとね。

一馬は問題ない?瑠奈ちゃんは?」


俺たちは視線を交わし、

静かに頷いた。


今回は孤独な戦いで無いせいか

不思議と迷いはない。


何より数に対しては、数でしか対応が出来ない。

少数精鋭…計画が必要だ。


100日の生存を懸け、

俺たちは“病院への道”へと踏み出した。


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