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DAY11 夜明け後の静寂と報酬確認

呻き声(うめきごえ)は途絶え、

ようやく得た静寂の中で 俺は荒い息を整えた。


「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」


緊張感の解放と共に、一段と息が上がる。


床には折り重なったウォーカーの死体、

黒く滲む血痕。


腕がまだ震えている。


「……これで20体。クリアだ。

クエスト完了って感じ?」


ついつい実況口調が出る。

元ゲーム実況者の職業病。


だが口先だけで、

心臓はまだ飛び跳ねていた。


いつの間にかクリア報酬が目の前にある。


戦利品を漁る。


・缶詰が3つ

・包帯

・布

・錆びかけの替えパイプ。

・電子部品

・予備の乾電池。


期待していたほどの“旨味”は多くない。


「報酬、しょぼっ……

いや、でも生き残っただけで大勝利だよな」


レベルは上がる。


狂気の血死潮(クリムゾンムーン)

経験値としてはおいしい(・・・・)らしい。


手にした缶詰を軽く握り、

ふと我に返る。


3度も死に戻りしてわかった事は、

|死ぬ事を前提で作られていない《・・・・・・・・・・・・・・》。


スマホの画面をもう一度確認する。


-ビギナー卒業おめでとう-


これからアナタは100日間生き残りをかけ

この世界を生きて下さい。


生き残りをかけ条件があります。


・死なないで生き延びる

・5つのギバーを繋ぐ(ルートの開拓)

最恐の討伐(・・・・・)


狂乱の血死潮(クリムゾンムーン)ルール

・PM10:00~AM4:00

・特殊ミッションあり

・討伐達成でクリア


死なないで……か。


100日の間にギバー同士のルートを開拓…

そして…最恐?の討伐…



とりあえず拠点を移動をしていかないと

正直、達成出来ない条件。



どちらにしても

拠点としてもう一度使うには限界がある。


壁は裂け、バリケードは軋む。


夜が明けたとはいえ、

次のクリムゾンムーンまでに

より安定した場所を確保しなければまずい。


地図を取り出す。


距離と移動経路を思い浮かべる。



合理的に、効率的に。

腹を括るのは早いが、準備は欠かせない。


「よし、ギバーと別拠点に移動だ。

ここは荷物整理だけ」


荷物を背負い直し、家の中をざっと見回す。


使える物は全部持っていく。

廃材は固定、食糧は最小限を残す。


目指すのは、以前リポイス前に素通りした廃墟だ。


あのときは効率化のため寄らなかった。

だが今度は違う。


死に戻りで得た“知識”を

物資回収に使う。


無駄のない動きで、

拾える物は全部拾うつもりだ。


----


廃墟に着く……静かだ。


瓦礫の山と割れた窓。

ゾンビの気配は無い。


前回の配置を頭に描き、

足跡を辿るように奥へ進む。


「あれ……?」


棚にあるはずの缶詰がない。


妙に埃が払われた(・・・・)テーブル。


工具箱に入っていたはずの

小型ナイフも見当たらない。


水のボトルも一つも無い


アイテムがランダムな可能性は捨てきれないが。


誰かに先に漁られたのか。

だが、前回来た時とは雰囲気(・・・)が違う。


リポイスで時間が巻き戻るはずなら、

誰も来ていないはずだ。


奇妙な違和感が胸に広がる。


「誰かが…来てる……?」


耳を澄ます。風の音だけ。

だが違和感は消えない。


背筋がぞくりとする。


そのとき。


背後から気配。

振り返る前に、鋭い痛みが肩をかすめた。



背後の薄暗がりで「ヒュッ」という小さな音。


いや、何かが床を抉るような、

細い刃の刺入音だった。



()っ…ぎゃぁぁ!?なに、今の!?

ウォーカーじゃねぇの!?」


ナイフだ!?

ナイフの冷たい光が目前に迫る。


状況を理解するより早く、

腕が勝手に動いた。


鉄パイプを振り回し、ガンッと金属音が響く。


だが押される。


見た目は小柄なはずなのに、

ナイフを握る手は異様に力強い。


パイプの軌道を押し返され、刃先(はさき)が喉元に迫る。


「うわああっ! ちょ、待って待って待って!

なにこれ!? 人間!?

スクリプトにねぇ動きなんだけど!?」


視界がブレる。

肩を掴まれ、壁に押しつけられる。


刃が首筋すれすれに走り、

冷たい汗が噴き出した。


「や、やべぇ! 刺さる刺さる刺さるッ!」


必死で足を動かす。

膝蹴りを繰り出すが、空振り。

逆に足を払われ、床に押し倒された。


「ぐぅぅぅっ! 死ぬ死ぬ死ぬ!

こんなのゾンビよりタチ悪いだろぉぉ!」


(おお)いかぶさられ、

刃が胸元に突き立てられる。


パイプで受け止めるが、

あと数センチで刺さる距離。


冷や汗が噴き出る。


そのとき、相手の足元が滑った。

倒れた木片を踏み、相手の体勢がわずかに崩れる。


「今だぁぁぁ!」


反射で押し返す――が、

パイプはうまく当たらず。


汗で滑りパイプから手が外れる。


勢いで相手の胸元に手が伸びる。

…ポヨンッ!?


「んっ??」


「んん?……っ!? や、やわっ……

え、えぇぇぇぇぇ!?」


(おっ、女!?)


一瞬の静止。

相手の鋭い目が見開かれ、頬が真っ赤に染まる。


「おまえ! どこ触ってんのよっ!!」


直後、ナイフが床に突き刺さる音。

形勢逆転も戦術も関係ない。

ただの偶然。


一馬「ちょ、ちょっとまっ待て! 今のは事故!

俺、そういうスキル覚えてねぇから!」


女「こっ、殺す!!」


必死の弁明を叫ぶ俺と女の叫び声!


「ストォォーップ!!」


そこによく響く声が殺伐とした空気を切り裂く。


男「やっやめろ……やめろ。ストップ!落ち着いて!ね」


影から現れたのは一人の男だった。

両手を広げて間に入り、温厚な表情で二人を制する。



「ここで人間同士が争ったら、本当に終わりだ」



その一言に、張り詰めていた空気が一気に緩む。



女は唇を噛み、

ナイフを握り直しながら一歩退いた。


俺は肩で息をしつつ、

床に転がったパイプを拾い上げる。



「……はぁ、マジで心臓止まるかと思った……」



戦闘は、その男の静止によって幕を閉じた。


女はため息をつき、

再び俺を鋭く見返す。


天馬「名前は?」


女「聞きたいのはそっちよ」


女は非難混じりに返す。


一馬(くっ!いきなり襲ってきてなんて態度っ!)


深呼吸して俺は息を呑み、口を開いた。


「一馬……天海一馬だ」


名乗ると女が眉を吊り上げ、

男は小さく頷く。



女「私は瑠奈。ハンドルネームは

LunaPatch(ルナ・ピーチ)。」


瑠奈「彼は誠、ハンドルネームは

|Maverick_JPマーベリック・ジェーピー


瑠奈は素っ気なく紹介。

誠は笑顔で手を上げる。


は?ハンドルネーム?


(どくんッ!)

鼓動が飛び跳ねる。


瑠奈の気性の凶暴性に

誠は申し訳無さそうに笑いながら小さく会釈した。


それよりも新たに生まれた疑問と

だが確かな事が一つある。


ここには、NPCではない“他人”がいた。

そしてハンドルネーム…プレイヤー…。


それは助けになるのかは、

脅威になるのかはまだ分からない。


しかしワンオペでは無い事に希望が出てくる。


胸の奥で、その可能性だけが

重く膨らんでいた。

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