#71. いざ、次の街へ!(エルフのNPCが現れました)
「──結界クエスト?」
学校の課題をしながらヒメとビデオ通話していた私は、聞き慣れぬクエストに首を傾げる。
『サード・ダンジョンをクリアしたから第四拠点に行けるようになったんだけど、その拠点は特定のクエストをクリアしないと入れないんよ〜』
「やっぱりレヴァリオスから難易度上がってきてるよね」
『だね〜』
難易度上昇はサードボス《隻燼龍レヴァリオス》で身に染みている。
ここから先は上級、と言ったところか。
スキルを習得できるようになったからと言って油断はできないな。
「そろそろ武器の強化と防具も新調したいし、ちょうど明日はコユも来れるみたいだから、さっそく明日挑戦しよう」
『うん。よ〜し! ここからはわたしも詳しくないし、気合い入れていくんよ〜!』
「その前に課題を片付けないとね……」
『変わり映えしないデイリークエストって億劫だよね〜』
「ね……」
ゲームやりたい欲をグッと堪えて、二人で目の前の課題に取り組む。
課題をやるのは億劫だけど、ヒメと一緒だからかその日は特に詰まることもなく、無事に課題を終わらせて清々しい土曜日を迎えた。
■■■
夏休みまであと一ヶ月。
この間に第四拠点を解放して、いろいろ準備を整えておきたい。
そう考えているのはどうやら私だけではないようで。
「さあ二人とも! 少し遅れを取ったけど、これでコユ達も最前線プレイヤーの仲間入り。気合い入れて行くわよ!」
旧アルファス城の前で合流したコユは、フンスと鼻息荒くして張り切っているご様子。
「テンション高いねコユ」
「あったりまえよ! 私はずーっとここを突破したかったんだから! ……私って言っちゃったわ」
『私たすかる』
『コユ氏ずっとサードで詰まってたもんね……』
『楽しみにしてたぜ』
まあ、かくいう私も楽しみで、昨日はあまり寝られなかった口だけど。
崩落した城塞都市を突き進み、北門を抜けると隻燼龍に焼かれたと思わしき草原に出る。
この辺は王都アルファスと似ているなー、なんて漠然と思いながら先を進むと──。
「モンスターだ」
「ゴブリンだね〜」
「チェーンソー持ってるけどカナメの知り合い?」
「なわけあるか」
エンカウントしたのは、なんと小型チェーンソーを装備したゴブリン集団。
彼らは意気揚々と森の木を伐採していた。
「《伐採ゴブリン》……カリカーンっぽいな」
どことなく雰囲気が近い気がする。
けど観察するのはそのくらいにして、森を伐採するなんて所業は見過ごせない。
こちらもチェーンソーを構え、ゴブリン目掛けて振り下ろした。
──その瞬間。
レーザー光線のような白い光がゴブリン達を貫いた。
「どわっ危な! なにごと」
危うく自分にも当たりそうになった。
新フィールドに来て早々に死ぬのは勘弁してほしい。
森の奥から足音が聞こえる。
姿を見せたのは、白いローブに身を包んだレーザー光線の術師と思わしき人。いや、人なのだろうか。
色白の肌、金色の髪、青い瞳、顔立ちは美形で……耳が長い。
その姿はファンタジーでよく見る《エルフ》そのものだった。
「おや……その出で立ち、もしやダイバー様ですか」
エルフは目を細め、優しく微笑む。
顔も声も中性的で性別はわからない。
「あなたは……」
「失礼、私はこの先の結界を管理しているアルメネルと申します」
そう言って、アルメネルはお辞儀をした。
お手本にでもしたくなる綺麗な礼だ。
「かの邪龍を討伐されたダイバー様の名は、既に私の耳にも入ってきていまして……つい興奮して名乗り忘れてしまいました」
恥ずかしそうに笑うアルメネルを横目に、ヒメの肩をちょいちょいと突っつき、耳を寄せてもらう。
「結界ってもしかして……結界クエストのかな?」
「多分そうじゃないかな〜。ネームドキャラだし、このNPCは重要人物っぽいんよ」
となれば、先へ進むにはアルメネルからクエストを受けなければならない。
「あの、私達この先にある街に行きたいんですけど、道に迷ってしまって……ご存知ないですか?」
「ふむ……場所はもちろん知っていますが、今は状況がよくありませんね」
困った顔をしたアルメネルは、不意に手のひらからホログラムのような立方体を作り出す。
ただ、一面だけ穴が空いてるような?
「これは現在の結界を小型化したものです。実はモンスターの襲撃がありまして、見ていただくとわかる通り結界に穴が空いてしまったのです」
「結界ってつまり、城壁みたいなものですよね? 壊れちゃったら危ないんじゃ……」
「その通り。ここからモンスターが侵入してきてしまいます。私はすぐにでも結界を修復するため、こうして外に出向いて結界を張り直しているのです」
そう言うと、アルメネルはゴブリンが伐採した木に触れる。
樹木は瞬く間に新しい芽が生え、大きく育った。
「これ以上結界を破壊されないように、出入りできないよう完全閉鎖中です。なのでダイバー様が入国されるのは難しい状況でしょう」
「なるほど……それじゃあさ、その結界が直れば私達も国に入れるようになるかな?」
「それは……修復を手伝っていただけると?」
「うん、任せといてよ」
どーんと胸を叩く。
すると、アルメネルは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「ああ……感謝します! なにぶん、結界の修復ができるものは女王を除いて私一人なもので……猫の手も借りたいと思っていたのです。ぜひ頼みます、ダイバー様」
『クエスト《結界術師アルメネルの依頼》を受諾しました』




